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死にスキルを持って最弱魔物に転生した俺―友達のドラゴンが経営するダンジョンで巣作り担当やってます―  作者: 夢野又座/ゆめのマタグラ
第1話 最弱、大地に立つ

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1-3 ブラックドラゴン


「あわ、あわわ……」


 黒曜石(こくようせき)のような、触る者を切り裂きそうなウロコ。

 戦車(せんしゃ)すら易々(やすやす)粉砕(ふんさい)しそうな巨躯(きょく)に、鋭いツメ。

 背中のコウモリのような翼。

 眼光は――睨めつけられただけで、おしっこがチビりそうだ。


 というかチビった。

 

 目の間に現れたのは――黒いドラゴン。

 ゾウですら丸かじりできそうな巨大な口で、言葉を発している。


「……匂うと思えば。お前か、ここで魚を焼いていたのは」

「しょ、しょうです……わたしがやりました」


 見た目が怖いだけじゃない。

 その圧倒的な種族差による、重圧感(プレッシャー)


 知識や理屈じゃない――本能だ。

 この化物には、なにをどうしても勝つことも、逃げることすら不可能と(さと)る。

 なので俺は――しょんべん()らすくらいしか出来なかった。

 

「ほお……ボルが、焼き魚とな」


 顔を目の前まで近づけられる。

 鼻息は、鉄錆(てつさび)の臭いが混じる――

 よく見れば前足のツメにも、赤黒い血のような跡。

 まるでさっきまで、何か獲物を殺して、食べていたような――


「た、たべないでください……なんでもします……だから、命だけは……」


 命乞いだ。

 この場で俺ができることは、これしかない。


「なんだそれは」

 

 そう思い、土下座(どげざ)をしているつもりなのだが――膝がないせいで、まるで五体投地(ごたいとうち)

 いや、一体投地(いったいとうち)の状態だ。


「――ふん……その焼き魚。それを譲るなら、見逃してやってもいいぞ」

「えぇ!? いや、そりゃもう全部差し上げます……」


 焼けた魚をすべて、ドラゴンの前に捧げた。

 食べ難いと思い串は抜き、葉を皿代わりにしてその上へ乗せた。


「どうぞどうぞ」

「変なボルだな」


 一口だ。

 5匹ほどあった焼き魚は、すべてドラゴンの口へ入り、飲み込まれた。


「ジュエルフィッシュは警戒心(けいかいしん)が特に強い――それを、よくもここまで釣ったものだな」

「えっ!?」


 あんな簡易的な釣り竿で、大したエサも使ってないのに――

 しかしよく見れば――ドラゴンのウロコ。その一部に切り傷のようなものが見えた。

 血の匂いも、どうやらこのドラゴン全体から漂っているようだ。


最弱(さいじゃく)故に、その気配が希薄(きはく)だったせいか――ボルが釣りをするなど、魚は思いもしなかっただろうな」

「な、なるほど」

「お前のおかげで、多少は魔力も戻った――礼を言おう」

「い、いいえとんでもないです! の、残りの魚も焼きましょうか……?」

「いや……残りはお前が食べるといい……」


 ドラゴンは横になってしまった。

 やはり傷が原因なのか――かなりしんどそうだ。


「だ、大丈夫ですか……?」

「やはりお前は変だな。わざわざ他者を気遣うなんて、魔物らしくもない」

「魔物らしい行動って?」

「そうだな。ワシなら……千載一遇(せんざいいちぐう)のチャンスだと、寝込みを襲っているところだ」


 怖すぎるな、魔物の世界は。

 しかし、弱肉強食が根底にあるのは――なんとなく理解できた。

 強い者でも、弱みを見せればすぐに食い殺されてしまう。

 

「その、実は……俺は、転生者(いせかいじん)なんです」


 ここのまでの経緯を話す。

 

「ぐっははっ――食べ物が当たり死んで……それで最弱モンスターに転生とは! ワシも長いこと生きてはいるが、お前のような者は初めてよ」

「ですよねぇ……こんなマヌケな奴、他に居ないよなぁ」

「――だがまぁ、魔物らしくないことには合点がいった」

「はぁ……これから俺、どうしたらいいんだろ」


 なんとか目の前のドラゴンに食べられずに済んだが、それこそ弱肉強食。

 気まぐれで、その大きな口でパクッ――といかれる可能性は、大いにある。


「ふむ……貴様。名は?」

「シローです」

「我はブラックドラゴン、シュバルだ――シローよ。お前に仕事をやろう」


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