5-4 眠りの塔
現在は冒険者も攻略しに来なくなる深夜。
闇夜に隠れるように、1匹のドラゴンが飛んでいる。
ブラックドラゴン・シュバル――その両手(足?)にスケサン、俺とフェルネがしがみついていた。
「――その話は、初耳だ」
「だろうね。ちなみにシュバルは、どのくらい通ってたのさ」
「……50年ほどだ」
人間50年なんて言うとけどさ。
織田信長も、まさか50年も風俗に通っている奴が居るなんて思わないだろうな。
「フェルネー。さっき言ったの大丈夫だった?」
「バッチシです。およそ50年間、全部遡れました」
ちなみに俺はフェルネに抱きかかえて貰っている。
この控えめでも柔らかな感触をいつまでも味わっていたいが、もう目的地は目の前だ。
「あそこが、眠りの塔だ」
険しい山々に囲まれ、その歴史を感じさせるほど古い搭は、悠然と存在した。
もっとピンクの装飾やライトアップで、いかがわしい店みたいな雰囲気だしてるのかと思ってた。
「景観に合わないと、付近のダンジョンから苦情があったそうだ」
「……やってたのね」
「――どうやら、向こうもお出迎えのようだ」
搭の最上部。
そこには下へ降りる階段の他には――3人の、ボンテージファッションなサキュバスだけが立っていた。
シュバルが降り立つと、青髪の、キリッとクールフェイスなサキュバスが1歩前へ出る。
「ようこそいらっしゃいました、シュバルさま」
「当店は、お客様のお帰りを大変お待ちしておりました」
「いや、今日は客としてではないのだ――」
「そうなんですか?」
俺はフェルネに抱えられたまま、手を挙げる。
「……クイーンさんに会いたいんだけど」
◆ ◆ ◆
「きゃーカワイイ!」
「ぐ、ぐぇ……」
通された部屋は、どうやらそのまま店内のようだ。
ここは外の荘厳な雰囲気と違い、壁紙や家具は紫と赤で満たされている。
常にピンク色のライトで照らされ、怪しげな匂いのするお香が焚かれている。
ソファの上では、半裸か全裸か区別できないような恰好で、酒を飲む王冠を被ったオーク。
ふわふわと気持ち良さそうなベッドの上で横たわるマッチョなゴブリンに、添い寝をしている裸のサキュバス。
「ここはVIP専用ルームになっております。彼らも、ダンジョンでは名のあるマスターとなります」
「ねぇねぇ、お名前は?」
「シ、シローと言います……」
俺らは店の一角にある、ドラゴン専用スペースへと案内されていた。
大きなクッションに座るシュバルに、手前にはピカピカした黒革のソファ。
ここにスケサンは大股で座り、出してくれたワインを片手に酒を飲んで――早いなオイ。
フェルネはさすがに立ったまま待機している。
で。
店員である、おっぱいの大きなサキュバスのお姉さんらが6名ほど周りに待機しているのだが……俺を潰しかねないほど抱きしめているのは、同じくボンテージファッションな少女サキュバスだ。
身長はほかのお姉さんたちの半分、お胸はフェルネ以下。10代前半にしか見えない。
「すごいねー。普通のボルならもう潰しちゃってるのに、ちょっと頑丈だね?」
「そ、そう?」
「ねーねー。シュバルちゃん。この子、ウチで貰っていーい?」
「ダメだ――それよりも、シローの話を聞いてやってくれ」
「いや……俺は、クイーンさんとお話がしたくて……」
「わたしだよ?」
「………………えっ?」
「わたしが、この眠りの塔ダンジョンマスター」
無邪気で、とびっきりな笑顔。
「サキュバスクイーン、スリーピィちゃんだよー☆」
ピースしながら決めポーズ。
アメジストのような瞳が、ウィンクをする。
「えええええっ!?」
色気とか、淫らな夢とか――そんなのとは、無縁そうな歳のこの子が!?
「ほ、ほんとに?」
「むー。疑うなら、カード見る?」
そう言ってスリーピィは、カードを手元に出して見せてくれた。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆
種族:サキュバスクイーン(ランク2)
称号:眠りの塔マスター
サキュバスの母
冒険者1万人夢交尾
モンスター1万匹夢交尾
ドラゴン7種夢交尾――など。
名前:スリーピィ
レベル:7210
ライフP:114500
マジックP:?????
☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「……」
カードは偽造できないと聞いた。
つまり、ここに書いてあることは事実だ。
こ、こんな小さな子が――
この異世界には、ロリコンしか居ないのか!?
そんな俺の表情を読み取ったのか、部下のサキュバスが解説してくれた。
「クイーン様はその圧倒的な魔力により、ご自身の肉体年齢だけでなく、肉体の種族も自由に操作できます」
「すごっ」
サキュバスなのに、他種族にも変化可能ってこと?
「交尾したことがある種族なら、誰でも変化できるよー……ほら」
そういってクイーンの身体は、みるみると縮んで――オレンジ色の球体へと変わる。
「ポム! なんてね」
「ホントだ!」
見た目には、いつも一緒に働いている彼らと寸分違わない姿。
さすがサキュバスクイーン。最弱相手でも抱かれたことがあるんだ――
「この時に相手したお客さんはねー。わたしが興奮しすぎて潰しちゃったんだよねぇ」
てへっ、みたいに舌ペロしてるけど。
うっかりお客を殺しちゃうとか怖い。
「すいません。クイーン」
そこへ赤髪のサキュバスがやってきた。
「クイーンを出せと騒いでいるダンジョンマスターのゴーゴン様がいらっしゃってて……」
「テキトーに処理しといて~。それでもうるさくするなら――」
まるで今晩の夕食の相談でもしているような気軽さで、クイーンはこう言い放った。
「処分していいよ♪」
怖い、怖すぎる。
「かしこまりました」
そんな対応はいつものことなのか、部下はさっさと出て行ってしまった。
「それでなんだっけ? あっ、そうそう――今度は大切にするから~……ねぇ、いいでしょ? 毎日、イイコトしてあげるよ~?」
お尻のあたりまで優しく撫でられる――
な、なんか凄いムズムズする。まさかここがボルの性感帯なのか!?
「ク、クイーンさん、今日はお話があるんです」
そんな誘惑に流されてはいけない。
とにかく。本題に入るのだ。
「なぁに?」
「――シュバルの、無断広告使用についてです」




