5-3 逆転の一手
★ランキング3週目・結果
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8516,255pt ホワイトホール
8613,625pt オークの根城
8713,600pt 鋼の渓谷
8812,200pt ゴブリン砦
8910,475pt 碧の洞窟
9010,200pt 山岳要塞
919,800pt 紅の墓所
928,550pt レッドタワー
937,900pt 黒の迷宮
947,410pt 湖畔の洞穴
956,100pt 黒煙の戦場
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減収だったのは後半だったので、いきなりポイントが下落することは避けられた。
でも、このまま手をこまねいていれば、到底グリュウのダンジョンを上回ることなんて無理だ。
俺は、ボル班の部屋で云々と唸っていた。
「リアル思考の冒険者は、格安で用心棒がついてくれるとなれば、そっちに流れてしまう――」
生活が懸かっているなら、なおさらだ。
「ストーリー思考の冒険者は、なんとか来てくれるけど……でも、数は少ない」
もっと噂が広まれば――と言いたいけど、正直残り1か月でも無理っぽいのは、なんとなくわかっていた。
だから、新しい手を考えるのはどっち道、必要なことなのだ。
「うーん……」
「ポム!(ボクのダイスは6だね!)」
「ポム。ポム(しかいそのマスは、オイラの占領下。すでに買い占めてあるのさ)」
「ポム。ポム(だったらここでマジックカードオープン。占領されている温泉を無料で買い取らせて貰うよ)」
「ポム!(げっ)」
「……なにやってるのさ」
部屋の角で頭を悩ましていたら、背後でなんかゲームやってるっぽいグリーンとイエロー。
「ポム(魔王君臨っていうボードゲームです)」
「ポム(自分が魔王様になって、魔界を周回して、物件を買い漁るゲームなんだな)」
「……異世界にも、桃鉄とかドカポンみたいなゲームあるんだね」
「ポム?(ももてつ?)」
「ポム?(どかぽん?)」
「ああいや。こっちの話だよ」
彼らを見ていると、小学生のころの自分を思い出す。
クラスメイトに人数合わせで付き合わされて、家でテレビ囲んで桃鉄やったなぁ。
そうそう。当時、裏技があるって言って温泉でエロイベント披露したら英雄扱いで褒められたのが嬉しかったっけ。
ガチャッ。
「おいシロー。眠りの塔いかねーか?」
なにやら上機嫌のスケサンが、部屋へとやってきた。
「……俺は、グリュウに勝つために色々考えてんの! っていうか、ライバルのダンジョンに遊びに行くってどうなってんのさ!」
「まぁそう言うなって。たまには息抜きも必要だろ?」
コイツは先週あんだけ問題起こしておいて、まったく反省がないのか!
問題の半分は俺のせいだけど!
「部屋でダンジョン配信見てたらよー……『ドラゴンでさえ昇天! 近日、新サービス開始予定』ってCMが流れてきてよ。こりゃ1回試したくなるじゃん?」
「はぁ――どこもドラゴン宣伝に使いたくなるもんかね」
このモンスター社会において、ドラゴンはかなり上位の存在。
これで4位の眠りの塔は、冒険者側からも、モンスター側からも両サイドで儲けているワケだ。
「……ちなみにそれってどんなCM?」
「おっ。お前も気になるようだな――ちょっと待ってな」
1回部屋から出たかと思えば、半透明の板の水晶を持ってきた。
板を机の上に据えて、スケサンが手をかざすと――映像が映し出される。
「これは眠りの塔が持ってるチャンネルなんだかよ――」
映像では、石造りの大部屋で崩れ落ちるように倒れている冒険者たち。
ほぼ全員が男性――たまに女の子もいるけど。
そして彼らの上に乗っている、露出度高めな衣装の悪魔――いや、サキュバスたち。
乗っているといっても、特に裸にされているワケじゃないけど。
「ああやって肌を密着させて夢を見せてんだ……もう魔力も精気もスッカラカンになるまでああやって吸われ続けるんだぜ」
「へぇ……この映像って、冒険者側にも見れたりするの?」
「もちろん――って言っても、チャンネルを固定で見られるのはオレらだけだがな。ニンゲン側にはランダムなチャンネルが表示されているはずだ」
「ふーん」
ダンジョン側にとっては、冒険者側に対する貴重なアピールできるタイミング。
冒険者側にとっては、貴重なダンジョンの様子を見られる機会というワケか。
「時間は短いから、希少な宝が置いてある部屋をチラッと見せたり、狂暴だけど素材的に旨味のある魔獣が徘徊している様子を見せたり――まぁ使い方はそれぞれだな」
あまり気にしてなかったけど、このダンジョンのカメラはどこに設置されてんだろ。
「ダンジョン入り口じゃねーのか? たまにニンゲンが、美味そうに料理食ってるの映ってるぜ」
「それはそれで効果はありそうだけど……」
ランダム配信じゃ『エルフ姫が助けを待ってます』的な映像も流しにくいなぁ。
「おっ、このCMだ」
スケサンの言う通り、映像は切り替わり――
金や銀、ギラギラした宝石や上等な素材で出来たガウンを着たドラゴンが、部屋の中央で寝そべっている。
『はぁい。ニンゲンの皆さん見てるー?』
『3丁目の山岳地帯にある眠りの塔では~、こんな凶悪なドラゴンさんでも堕ちちゃうようなコワーイ罠がたっくさん♪』
『この搭の頂上にいらっしゃる、我らがサキュバスクイーン様の持つ“魂のオーブ”があれば~、サキュバスを自由に操れちゃうんだよねぇ?』
『きゃー♪ ニンゲンさんにエッチな命令聞かされちゃうの?』
『でも大丈夫。ワタシたちが、そんなニンゲンさんたちに負けるはずがないもんねー♪』
『ねー』
『じゃあね、臆病なニンゲンさんたち。もし来たら、いっぱい魔力をヌ・い・て、あげるね♪』
まぁ、サキュバスらしいCMだね。
「こっちはニンゲン向けのCMだな。モンスター向けの方だと、そりゃもう裸のサキュバスたちが出演し放題で――」
鼻の下を伸ばした骨のことはいいとして、俺は気になった点があった。
「なぁ、さっき映ってたドラゴン。見おぼえなかった?」
「あ? ……そういえば、そうだったか? お姉さんしか目に入ってなかったぜ」
「モンスター向けっていうCMにも、さっきのドラゴン出演してんの?」
「ああ、そりゃしてるぜ。たぶん同じセットで、別々の映像撮影したんだろ」
ドラゴンは一言も喋ってなかった。
寝ているのだから当然のはずだ――
「分かったスケサン、眠りの塔へ行こう」
「おっ、お前もやっぱオスだよなー。よーし、エルには黙って……」
「その代わり!」
「シュバルとフェルネも連れてく!」
「……は?」
短期間で、冒険者を大量獲得する方法――
これしかない。




