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死にスキルを持って最弱魔物に転生した俺―友達のドラゴンが経営するダンジョンで巣作り担当やってます―  作者: 夢野又座/ゆめのマタグラ@コミカライズ企画進行中
第5話 サキュバス・クイーン

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5-2 竜決闘<ドラゴデュエル>


「なんですか、それ!!」


 大広間にエルの怒りの声が響き渡る。

 

 まずことの次第を、俺の口からみんなに伝えた。

 みんなってのは――シュバルとエルとスケサン。それにフェルネ。

 営業中ってこともあって他のメンバーは出払っているが、まずはこの中心メンバーだけで話し合いしとくべきだ。

 

「急に訪問する冒険者が減ったと思えば――そんなことになってたんですね!」

「どうするよボス。オレらもどっかの会社使って、冒険者雇っちゃうか?」

「ギュスター商会は今回、ワシのダンジョンのために全面的にサポートをしてくれている。その恩に背きたくない」

「ありがとうございます、シュバル様」


 フェルネと、エルが深々と礼をする。

 そこでふと、前々から疑問に思っていたことを口にする。


「そういえばエルさんとフェルネって、なんで同じ執事服着てるの?」


 他の悪魔娘さんもそうだけど。

 

「……お前、今ごろ聞くのかよ」

「え?」

「私とフェルネ、他のみんなも……同じギュスター商会の従業員です」

「でもエルさんってシュバルと……その、主従関係なんですよね?」

「それに関してはぁ。わたくしから説明しましょう」


 フェルネがこう説明してくれた。


「会社はなによりも、“誰が”社長をやっているか凄い重要なんです。いくら業績で上回っていても、力の弱い社長では、物理的に潰されて終わりです」


 世知辛いモンスター社会の現実(リアル)

 社長のバトル的な実力は、そのまま会社のパワーに反映される。

 

「我がギュスター商会は割と新興な会社でありまして……さらに社長は、あまり戦いを好む方ではありません」

「ふむふむ」

「なので、ブラックドラゴンであるシュバル様へ恩を売りまくり、ゆくゆくは我が社の広告看板(客よせマスコット)、および後ろ盾になって貰いたいのです」


 本人の目の前で、めっちゃハッキリ言ったな。


「それにはワシも了承している。だからエルを、社員として出向させているのだ」

「基本的な窓口がエルさんになってるのは、そういうワケですねぇ」

「そんなことよりよ~。このままだとポイント増えるどころじゃねーぞ」


 もう今週のポイントは思い切って捨てる方向にシフトせざるを得ない。

 だが、この問題を放置しておけば――再び黒の迷宮は最下層にまで転落してしまう。

 上がり調子で他のみんなもやる気が上がってるのに……。

 

「そうだね……。――なんか、いい案ない?」

「もう面倒くせーから! 直接、相手のダンジョンに乗り込んで暴れてやるってのは?」

「すぐにダンジョン協会に通報されて即終了ですね」


 スケサンの名案は、フェルネに即却下される。

 

「はいはーい。じゃあ逆に、こっちから向こう挑発して攻めて来てもらおう。そんですぐに通報して貰えれば――」

 

 しかし俺の名案には、シュバルが否定してきた。

 

「ムダだ。グリュウは短気なようで、ダテに建設会社の社長はやっていない。それに、ワシと直接やり合うようなマネもしないだろう」

「なんで? やっぱり、実力じゃシュバルに勝てないからって、ビビってるの?」

「……互いに本気でやり合えば、この一帯が焦土の化す。そこまでコトが大きくなれば、たしかに奴も動き難くはなるが――」


 こっちも身動きが取れなくなる、と。

 それにアイツ側が優位を取っているのだ。

 こっちから悪口言ったとして、もう聞く耳なんて持たない――


「恐らくすぐにでも――奴から正式な申し込みをしてくる。ダンジョンの順位で勝負しろとな」


 シュバルの予想は、当たっていた。


 ◆ ◆ ◆


「おうおう。ここが、かの最強と謡われたブラックドラゴン様のダンジョンか?」

「アニキ~。こんなショボいダンジョン、ウチでイノベーションしてあげましょうよ」


 いつものリザードマン2匹を引き連れて、グリュウは裏口から堂々と入って来た。

 人間の姿ではなく、緑のウロコに覆われたドラゴンとして、だ。

 エメラルドグリーンでツヤツヤした光沢。

 頭には立派なツノが生えて、シュバル以上に鋭い目をしている。

 グリュウのドラゴン形態は、例えるなら無骨な大太刀といった感じだ。

 

 これで本性がチンピラじゃなければ、カッコイイ見た目なのになぁ。


「よーシュバル坊や。300年ぶりかー?」

「グリュウ、久しいな」


 そういえばシュバルって尊大な口調だけど、実際はブラックドラゴンでも若手な方なはず。

 なんか理由でもあるのかな。


「前会ったのは……そうそう。竜族懇談会の時に、軽く牙合わせで捻ってやったときだったよなぁ?」

「……」

「あん時は、魔界の森林が荒野になったって族長様に叱られたぜ。お前がこのグリュウ様のブレスを受けきれず、そのまま吹っ飛んだせいでなぁ。ヒャッハハ」


 下品な笑いが鼓膜を刺激する。

 

「さすがグリュウのアニキ!」

「ブラックドラゴンなんか目じゃないですね!」

「――要件はなんだ。まさか、思い出話をしに来たワケではあるまい」

「……そこのザコどもから聞いてるだろうけどよぉ」


 ギロッと睨まれたので、思わずシュバルの陰に隠れてしまう。

 うぅ――やっぱり怖い。

 

「ちょっとお前のダンジョン――巣作りを、軽く邪魔してやることにした」

「それでお前も3丁目にダンジョンを設けたワケか」

「お? 知ってんのなら話ははえーな。そうだ。互いにダンジョンの主……正々堂々と、ランキングの順位で勝負だ」


 なぁにが『正々堂々』だよ。

 あんだけ妨害しておいて、いけしゃあしゃあと……。


「賭けるモノはなんだ。――お前の目的は、そちらが本命だろう」

「ほぉ。バレてたか」

 

 なるほど。

 きっかけとして俺らをダシに使ったけど、グリュウもシュバルの持つ財宝でも欲しかったのか。


「前にお前が欲しがっていた“愚者の聖杯”か。それとも”ウロボロスの尻尾肉”か」

「はんっ。とぼけるんじゃねーよ」

 

 そうやってグリュウが前足で指した相手は――


「このグリュウ様が欲しいのは――ソイツだ」

 

 エルだった。

 しかしエル本人は、特に驚くこともなく涼しい顔をしている。

 今まさに、賭けの商品にされそうだというのに――カケラもシュバルの勝利を疑ってもいない、余裕からくるものだろう。

 

「……ほぉ」

「古代エルフ王国の忘れ形見。レイヴン=エルメイア王女……今はダークエルフに成れ果ててるが、その価値はどんな財宝よりも高けぇ」


 ここにシュバルは異論を挟む。

 

「だがエルは、血の契約を交わした我が(しもべ)だ。それはまかり通らん」

「んなもん、竜魔法(ドラゴスペル)でも使って上書きすりゃいいだろ――。まっ、一晩中ベッドの上で泣き叫んでいる間に終わるぜ」


 コイツ!

 エルにナニする気だ!


「そんなことはさせんッ!」

「――いい覇気(ハキ)だ。じゃあ決まりだな」

「……ワシが勝ったら、どうする気だ」

「ギャハハッ! アニキ。こんな弱虫が本気で勝てると思ってんですかねぇ!」

「そうだなぁ――万が一にも無いが、互いに賭けるもんないと勝負は成立しねーもんなぁ」


 頬の形が、ニヤッと不気味に動く。


「お前が勝ったなら……100年ほど、ウチの若い衆を使い放題でどうだ」

「「ア、アニキ!?」」


 それは聞いてなかったのか、思わずグリュウへ不安そうな顔を向ける2匹。

 常に余裕なエルとは大違いだ。

 

「慌てんな。それともお前らは、オレ様の勝利を疑うのか?」

「い、いえそういうワケでは……」


 そう主人に言われ、渋々と引き下がる2匹。

 だが、シュバルはさらなる異論を挟む。

 

「ふん――エルの価値は、その程度で足ると思っているのか?」

「ガッハハッ! 言うねぇ。だったら追加だ。このグリュウ様と、我がデネブ組もついでにお前の配下に入ってやる!」

「ちょっアニキ! それ、組長にダマって決めたら……」

「チッ。うるせぇ!」


 グリュウはイラついたようにリザードマンを1匹摘み上げると、たちまち大きな口へと放りこんだ。


「アニキ、待ッ――!」


 モグモグと、念入りに咀嚼(そしゃく)し――飲み込んだ。

 マジかよコイツ……自分を慕ってくれる部下を、喰いやがった!


「おい」

「は、はい! 俺は、なにも見てません! アニキ万歳!」

「――んじゃまぁ、期限は2週間後のランキング結果でな」

「了承した――エル、契約書を持ってこい」

「かしこまりました」


 契約書――というには、あまりにもデカい紙を、2頭の竜の間に敷いた。

 それには、2つの空白がある。


「我がブラックドラゴン・シュバルの名において――」

 

 シュバルの声が、ダンジョン全体に響き渡る。

 

「竜決闘を受けることを、ここに誓う」


「ヒャッハハ! グリーンドラゴン・グリュウ様の名において――」

 

 グリュウは不敵に笑いながら応じる。

 

「竜決闘を挑むことを誓おうじゃねーか!」


 右側にシュバルの足を、左側にグリュウの足を乗せる。

 すると――そこには、焼き着いたような足跡が残る。


「これで竜決闘(ドラゴデュエル)は、正式に受理されました」

「よーし! じゃあエルメイア。2週間後までに、他の奴らに別れの挨拶を済ませておくこったな! ガッハハッ」

「アニキ~。待って、乗せてくださいよ~」

 

 グリュウはそのままダンジョンの外へと飛び立ち、残されたリザードマンは徒歩へ帰宅したのであった。


「マジで、どうしよ……」

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