5-1 戦いは始まっている
天気も良い感じのマッカン村。
この村は、ここらにあるダンジョンを攻略するには、ちょうどいい場所にあるのだ。
近年、数々のダンジョンの発見に伴い、賑わいを見せる村だったが、今日は一段と騒がしかった。
その理由は――
「おうおう、兄ちゃん。どこのダンジョン行くんだ?」
ガラの悪い、ついでに言えば体臭がキツそうな冒険者Aが、若手冒険者のBとCの2人に絡んでいた。
「なんで教えなきゃいけないんだよ」
「おめーらが素人丸出しだからよぉ。ほら、オレのカード見せてやるよ」
頼まれてもないのに冒険者Aは、2人にカードを出して見せた。
アレは人間でも出せるのね。
「すげっ。レベル40だって」
「ここら辺のダンジョンは難しいの多いからよぉ……今なら銀貨5枚で用心棒についてやるよ」
「銀貨5枚!?」
Bが大げさに驚く。
たぶん、『安い』という意味なんだろう。
ボルの給料5日分で高レベル冒険者の力を借りれるなら、まぁ借りた方が楽だろう。
「しかもダンジョンで手に入れた素材や宝は全部お前らにやる」
「破格すぎないか? アンタになんのメリットがあるんだよ」
「冒険者ギルドから、お前らみたいな駆け出しを援護してやると奨励金が出るんだよ」
「……どう思う?」
「いいんじゃない? オレらもまだこっち来たばかりだし」
「よっしゃ。じゃあ行くダンジョンなんだがな――ここなんかどうだ?」
ニヤながらAは、懐から出した地図を見せる。
そして指差した方向は――黒の迷宮とは真反対の方向だった。
◆ ◆ ◆
そして俺は今、さっきのやり取りの一部始終を観察していた。
頭には、通信用の魔力水晶をくくり付けているという、マヌケな姿だけど。
「様子を見に来てみれば……フェルネ! あんなあからさまな冒険者引き、いいの!?」
『仮に姿形を魔法で変化させても、ステータスカードまで偽造はできませんからねー。モンスターであるなら、さっきの彼らも気付いているはずです』
「ってことは……」
『恐らく向こうのダンジョンに雇われたサクラ冒険者でしょうねぇ』
「ぐぬぬ……」
直接的ではないにしろ、似たような誘導はやってるけど……。
でもあそこまで露骨にはやってないぞ!
『しかもどうやら、宿屋や酒場で貰った地図を持ってる人を狙い撃ちにしていようですねぇ』
「向こうは、俺らの作戦を見抜いているワケか」
『……調べたんですけど、やはりあのデネブ組が関わっているようです』
「……ごめん、わかんない」
『あの会社は、表向きはモンスター向けのダンジョン建設会社なんですけど、裏では人間の冒険者ギルドを経営しているんです』
表がモンスター、裏が人間。
まぁモンスター側の立場だと、そうなるよね。
『そこに所属している冒険者を使って、自分たちが建設に関わったダンジョンへ誘導しているんです』
「マッチポンプじゃないか! それってアリなの!?」
『会社とギルドの関係は、表沙汰になってなってないんです。それと大なり小なり、みんな探られるのは痛いんで――』
ここを告発しようものなら、カウンターで自分らの首を絞めるってか。
『標的に決めたダンジョンの営業を妨害して、人気が無くなったところを無理に奪い、ほかのモンスターへ高値で販売するなんてのも有名で……でも、あまり強く非難もできないんですよねぇ』
「誰がそんなあくどい商売を――」
『社長がその……グリュウさんです』
アイツかよ!
『ドラゴンを敵に回したくない会社も多いです。ヘタに突っつけば、物理的に会社が倒産しちゃいます』
「ぐぬぬ……」
こう企業系ドラマみたいに『不正行為の証拠は掴んだ。公にされたくなければ、この案件から手を引け!』なんて、現実には上手くいかないワケか。
やろうものなら、代わりに本人が『お前らごと吹き飛ばしてくれるわ、ガハハ』なんて言いながら更地にされちゃう。
「……一応聞くけど、これを魔界の一番強くて偉い人に匿名で告発とかは……?」
「人間界での出来事にまで魔王様は出張りませんよ。それに、ドラゴンたちを敵に回したくないのは魔王様も同じです。だってドラゴンたちって、魔王様より強いんですもの」
マジかよ。
最近のファンタジーじゃ、ドラゴンなんてステーキにされて食べられてるイメージあるのに。
そうでなくとも、魔王なんかが従えてそうなものなのに。
「もちろん、あのグリュウ個人が魔王様より強いワケではありません。でも、後ろにいる碧竜一族のことを考えたら――」
ドラゴンって同じ種族での身内意識が強いってことか。
どっち道、行政とかじゃなくてこっちでなんとかするしかないってのは……よく分かった。
「1回帰って作戦会議だなぁ」
次回から水曜、金曜の夜更新になります。




