4-5 モンスターたちの変化
◆ランキング3週目
ある日のことだ。
俺がダンジョン本部から移動していると――
通路の向こうから、若いオーク(♂・シシオ)が歩いてきたので挨拶をする。
「おはよ――」
「おはようございます! シローさん!」
「え。あっ、おはよう……」
めっちゃ元気に挨拶を返されてしまった。
さらに他のモンスターと遭遇しても、
「シロー、この間はポーションどうもな!」
「おいシロー。持って行くのはこの素材であってるのか?」
気前良く挨拶をしてくれたり、進んで相談しに来てくれたり。
つい先々週までとは、態度が180度変化してるのだ。
なんか、逆に居心地が悪いな――
その日の夜。
なんとなくシュバルにそのことを相談すると――
「はっはっはっ。それは、皆がお前を認めたからだろう」
「でも順位は4位しか上がってないし……俺、けっこう上から目線で指示とかしてるし……」
「……それでも結果が出たのだ。少しは喜んでもいいんだぞ」
日本でのサラリーマン生活も、学生時代のアルバイトも。
結果や成果なんて出して当然。
ミスすればゴキブリ以下のごとく叱られたものだ。
そのせいで――人生においても、誰からか褒められたあまり経験が無いのだ。
「でも、これからだよ」
俺はシュバルの隣に座り、彼の身体に寄りかかる。
「そりゃあ、今はみんな褒めてくれるけど……まだ全然目標には遠い。これからもっと厳しい指示とか出しちゃうだろうし……」
「それは先にワシから指示を出そう。なにも、お前ひとりで抱え込む必要は無い……」
「シュバル……」
「すべてお前に任せているが、ダメだった時はワシの責任にすればいい。あのエルを姫にするアイデアとか、面白いではないか」
「そう? なんか執事服ばっか着てるから、他のカワイイ服着て貰いたくなるんだよねぇ」
「しかし、エルフ姫か……」
「なに? やっぱ、ありがちだったかな」
「ふむ。大昔、人間界にあったエルフの国。そこでエルは姫だったのだ――」
「えっ」
なにそれ初耳。
でもそういえば――エルに姫役を頼んだ時に、なんか渋い顔してたな……。
「かつて我がブラックドラゴンの一派が国を襲い、そこで戦利品としてエルフたちを数名持ち帰ったのだ――」
「ええっ!?」
そんな年齢指定のあるゲームみたいなことやってたんだ。
「エルフは長命で、ドラゴンの世話係として従わせることも多かったのだ」
「ということは……」
邪悪なドラゴンに囚われた、哀れなエルフ姫――
その魂と肉体は穢され、闇に堕ちた。
「あの設定は、まさにエル自身のことだ。生粋のダークエルフではなく、ワシと主従の契約を交わしたせいで変貌したのだ」
「そんなことが……」
「もう数百年は昔の話だ。お前が気に病む必要はない」
「……なんでそんな話をしてくれたの?」
「さてな……」
隣から見上げた黒竜の顔は――どこか寂しげな表情に見えた。
◆ランキング3週目・結果
「93位です。DPも7400で、良い感じで伸びてますねぇ」
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85 15,700pt ホワイトホール
86 14,655pt オークの根城
87 13,610pt ゴブリン砦
88 12,565pt 鋼の渓谷
89 11,520pt 紅の墓所
90 10,475pt 大山の洞窟
91 9,430pt 山岳要塞
92 8,385pt レッドタワー
93 7,400pt 黒の迷宮←New
94 7,340pt 湖畔の洞穴
95 6,295pt 黒煙の戦場
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しかし、だ。
やはり上昇は緩やか。
冒険者も少しずつ増えている。
初週のリピーター冒険者たちもダンジョンにやって来たし、他も少しずつ訪問数が増えている。
まだまだ目標には遠い。
「よーしお前ら! 今日は飲みに行こうぜ!」
『おー!』
スケサンが他のメンバーに声をかけていく。
俺はとてもじゃないけど、そんな気分じゃない――
いや、そもそも誘われないか。
「なにブツクサ言ってんだよ。お前も来るんだよ、シロー」
俺のツルツルした頭に、無遠慮な骨の手が乗る。
「ええ、俺も!?」
「主役が欠席なんて、そんな締まらねー話はねーよなぁ?」
「行きましょうシローさん!」
「ポム(あとのことはエルさんとやっておきますので……班長は行って来てください)」
「……ちょっとだけだよ?」
ちょっとだけなら、息抜きになるかなーー




