4-2 冒険者側:ダンジョン攻略記録・後
意気込んでチャレンジした伝説の武器探しだが、彼らは謎解きに苦戦を強いられた。
時には、ダンジョン内部で安全なスペースを見つけ、休憩をとる。
既に1日以上経過してしまったが――いくつもの謎を解き明かした彼らは、ついにブラックドラゴンを打ち倒せる武器を手に入れていた。
カインの背には、二股の槍が背負われている――柄には『ロンギヌス』と銘が刻まれている。
ローゼはヨイチの弓、セシルはエクスカリバーという剣を手に入れていた。
「これが伝説の武器か――聞いたこともない武器だな」
「そりゃまぁ、伝説だからじゃない?」
「しかし本物なのは間違いないようだ――闘気や魔力を纏わせて技を打つと、実力以上の威力がでる」
「これがあれば――」
冒険者3名は、堅牢な扉が佇んでいた。
エルフ姫より貰った地図には、ここから先の情報が書かれてなかった――つまりはこの先に、ボスであるブラックドラゴンがいるのだと、皆が理解していた。
「……いくぞ」
「ああ」
「うん……」
男2人で重い鋼鉄の扉を開き――部屋の内部へと、入っていく。
薄暗い中、冒険者たちが中央まで進む。
ボッ、ボッ――と青白い炎が灯されていく。
『何用だ、貴様ら――』
まるで地獄の底から響いてくるような、威圧感。
漏れ出す瘴気に、冒険者たちは思わず身震いをする。
影が、起き上がる――
「お前が、このダンジョンのボスだな」
『いかにも――我はブラックドラゴン、シュバルだ』
黒い巨体から放たれる邪悪な魔力は、冒険者たちに死を覚悟させるほどの重圧だった。
「くっ――なんて力」
「シュバルと言ったな! なぜ、あのエルフ姫をこんな牢獄へ閉じ込めた!」
『我が呪われし姫君に会ったか――くくくっ』
「なにが可笑しい!」
『哀れよ――今までもお前らのように、あの姫の甘言に惑わされ……そして滅びた。見よ』
ボッと新たな炎が灯る。
そこには、既に朽ちてしまった人骨がいくつも横たわっていた。
「ひっ!?」
『かつての勇者の姿よ――』
「……だが、俺たちは違う!」
『伝説の武器か――面白い。では、我を楽しませてみよ!』
黒竜は立ち上がり、その大きな口から黒炎が垣間見える。
「ブレスだ! 散れ!!」
『カァッ!!』
ついにダンジョンボスとの死闘が、始まった。
前衛である2人が、黒竜の注意を引く。
その間に、ローゼが魔力の矢で攻撃していく――
『小癪な』
「やった。やっぱりダメージは通るみたい!」
『フンッ!』
しかし黒竜がその翼を羽ばたかせると、ローゼの華奢な身体が部屋の端まで吹き飛んだ。
「きゃあ!?」
「ローゼ!」
『死ぬが良い――』
再び黒炎のブレス。
「はぁあああ!!」
しかし、その炎は――光の太刀筋により、切り裂かれる。
「喰らいやがれ!!」
カインが飛び上がり、黒竜の肩へ深々と槍を突き刺した。
『グアアアア!?』
「トドメだ、セシル!」
「北斗一刀流――セイントソード!!」
光り輝くエクスカリバーによって、黒竜の硬いウロコごと肉体を断ち切った。
『おのれ――ルオオオ!!』
「なんだ……くッ!?」
「がッ!?」
黒竜が吠えると、バチバチとした黒い稲妻が迸る。
その衝撃のせいで、2人は武器を落としてしまう。
『――この武器は、貴様らには過ぎたものだ』
ロンギヌスは黒竜の肩に刺さったまま。
エクスカリバーと、ヨイチの弓は宙に浮くと――黒竜の下へと引き寄せられた。
「お、のれ……」
「逃げる、気か――」
『ククク――追いかけてくるのなら、いつでも歓迎するぞ――』
ボコッと黒竜の足元が崩れ――瓦礫に飲まれるように、奈落へと落ちていった。
「待ちやがれ……」
『さらばだ、若き勇者どもよ!』
大穴は底がまるで見えず、既に黒竜の姿も見えなくなっていた。
「……大丈夫か、みんな」
「なんとか……」
「イテテ――あれっ、武器は!?」
「奴に奪われて……」
「そっか――」
「戦利品は、この数枚のウロコだけか」
「黒竜。実物を見たのも初めてだったな……」
「1回出直そう……死ななかっただけ、儲けものだしな」
「でも魔力もあまり――ねぇ、あの光ってるのって」
部屋の片隅に、うすぼんやりと光る魔法陣――
傍には、こう書かれている。
『臆病者は、ここから逃げ出すといい――』
「……言ってくれるな」
「我慢しろセシル。今の俺たちじゃ……武器も奪われたしな」
「そうね。1回戻って、このダンジョンのことをギルドにも報告しなくちゃ……」
「……分かった。カイン、ローゼ――」
3人の冒険者は、送還魔法陣へと足を踏み入れ――ダンジョンを脱出するのだった。
◆ ◆ ◆
しかし後日――
知人冒険者パーティーの報告を聞いたカインたちは耳を疑った。
あれだけ探索し、マッピングした内容と、実際のダンジョンの形が違っていたのだと。
彼らが持ち帰った地図と、自分たちの地図を見比べる。
「たしかに。全然違うね」
ここはあのマッカン村より、定期馬車で数日いった場所にある街道沿いの町、ディッシュ。
そこには冒険者ギルドの支部がある。
カインらは、先日あのダンジョンでの出来事と、詳細な地図をギルドへ提出したのだ。
しかし、最初の3つに別れた通路――
カインらは真ん中へ進んだが、そこは行き止まりになっており、強い魔物が待ち構えていたのだという。
まるで、最初から誰かが来るのを待っていたように――
「……幻惑や方向感覚を鈍らせる魔法、ではないとしたら……」
「実際にダンジョンの構造が変わってる――ということになるな」
カインは眉間にシワが寄る。
他2人も沈黙する――
こんなダンジョンは、聞いたことが無い。
「はっ! 面白いじゃないか」
「セシル……」
「俺らは、これまでもなんとかやってこれたじゃねーか……このダンジョンだって」
「えぇ。きっと攻略できる――」
「そうだな――王都周辺のダンジョンは、人も多いゆえに調査も進んでいる。僕らが一旗揚げるには、ちょうどいいダンジョンかもしれない」
「エルフ姫との約束もあるし――」
「よし! 準備をしたら、もう1回あのダンジョンへ行くぞ!」
「あっ。そしたらまた、あの料理食べられるかもね~」
若い冒険者たちが、決意も新たに立ち上がるのであった――




