3-5 熱い友情を確かめ合う
大騒ぎの広間に、執事服の女性が駆け込んできた。
渦中のダークエルフ――エルだ。
「ちょっと、これはなんの騒ぎですか!?」
さらにシュバルが叫ぶ。
「――お前ら! そこまでにしておけ!」
オレンジ色の玉がボコボコに膨れ上がったところで――
なんとかシュバルが止めてくれた。
……いや、もうちょっと早く止めて?
「お前らがエルを大切に想う気持ちは分かるが、シローの計画はワシが許可したものだ――責任の一旦は、ワシにもある」
「シュバル様。それにみんなも――なんでシローが私刑にあってるんですか」
「俺が説明するぜ、エルちゃん」
率先して前に出たスケサンが、どんな経緯でこうなったかを説明する。
「はぁ――」
少しだけ頭に手を添えていたエルだったが、すぐに向き直った。
「みなさん、聞いて下さい」
みんなは俺を殴る手を止める。
広間には、再び森のような静寂が戻ってきた――
「たしかに営巣担当を外されてショックは受けて……その、ちょっと泣いちゃったのは本当ですけど……」
エルは少し恥ずかしそうに、でもどこか晴れやかな表情で笑う。
「それはシュバル様に裏切られたからとか、新人のシローに仕事取られたからじゃなくて……」
指を絡ませ、自分の考えを整理ながら喋っているようだ。
「わたくしが1番ボスのことも。ダンジョンのことも理解してると――勝手に思い込んでました」
――みんなも、真剣なまなざしで見守っている。
「でも、分かったの。ダンジョンの運営は、決してひとりよがりなモノではダメだって――新人の意見も、みんなの意見も取り入れて……より良いダンジョン作りを、やっていければなって」
エルは、みんな1匹1匹の顔を見ていた。
「だから最近ずっと部屋で、ダンジョンについて勉強してたの――心配かけて、ごめんなさい!」
彼女は、深く深く頭を下げた。
その誠意が伝わったのか、スケサンは涙をこらえながら(出るのか?)
「そうか――エルちゃん、分かったよ。みんなも、分かったよな!」
スケサンはその看板を天へと掲げながら、宣言する。
「これからは、所属モンスターが一致団結して、凄いダンジョン作ってやろうじゃねーか!」
『おおおお!!』
うん――それね。
さっき俺もね、言ったんだけどね――
誰も聞いちゃいねーな――がくっ。
3回目の死亡、確定――
◆ ◆ ◆
「いてて……」
「ほらっ。治癒魔法かけますんで、動かないで下さい」
みんな暴れて、叫んだらスッキリしたのか――持ち場へと戻っていった。
現在、広間にはシュバルとスケサン。
そして、蘇生された俺を治療してくれているエルのみだった。
「すまなかったシロー……」
「ホント、もうちょっと早めに止めて欲しかったよ」
でも撫でられながら掛けてくれる治癒魔法、これ凄い気持ちがイイ。
エルの手のひらもスベスベで、こりゃいいや。
「そうではないのだ」
「うん?」
「ククク――まっ! 俺様の作戦通りってやつだな!」
スケサンが、踏ん反りながら大笑いしている。
「――はぁ?」
「実はな――」
突然の営巣担当交代。
それが、突然やってきた新人ボルになった。
エルは解任され、毎晩部屋で枕を濡らしている。
――という噂がモンスターの間で流れてたのを知ったスケサンは、一芝居うったのだ。
このまま不満を抱えたままダンジョンを再オープンすれば、いずれは軋みとなって仲間割れが起きてしまう。
そうなる前にシュバルを抱き込んで、みんなで俺をボコらせたのだ。
「普通にお前の計画喋ったって、だーれも聞きゃしねーが……まぁこうすりゃみんなも動きやすいだろ」
「お、おま――」
「ワシがボスとして叱りつけることは簡単だが、それではダメなのだ」
その首を地面へと付けるシュバル。
「――すまなかった、シローよ」
ドラゴンにとって、最弱モンスターへ頭を下げるのがどれほどの行為……説明されなくても分かる。
一方で、目の前の悪びれもせずにいる骨はというと。
「アンタも謝りなさい。スケサン」
「まぁ、すまんかったな! ――お前の計画も悪くなさそうだし、付き合ってやるよ」
吸って、吐いて――もう1回繰り返して――
俺は大人だ。
ここで再び争ってはいけない。
精一杯のニコやかな笑顔を作り、右手を差し出した。
「――分かった。これからよろしくな――骨スカスカ先輩♪」
「ああ。よろしくな、このエルちゃんの胸揉みやがったスケベ球体♪」
ニコッと笑いながら、その気持ち悪い笑顔な先輩の顔をブン殴り――
向こうからの拳もまた、俺の顔面にクリーンヒットするのであった。
「上等だこの骨野郎! ボコにしてやるぞ!!」
「てめぇなんかに負けるかよ、最弱野郎!!」
エルが再び仲裁に入るまで、俺らは熱い友情を確かめ合ったのだった――
――でもまぁ、不思議と悪くない。
さて、明日から本番だ。
◆おまけ
☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆
種族:ボル(ランク10)
称号:ブラックドラゴンの盟友
ドラゴン営巣担当
名前:シロー
レベル:4
ライフP:18
マジックP:12
ちから:11
がんじょう:15
すばやさ:7
たいりょく:12
まりょく:4
けいけんち:5
魔法:なし
スキル:死ぬとレベルアップ
スキル:隠密LV1
スキル:徒手空拳LV1
説明:武器を持たない戦闘において
ちから、すばやさにプラス補正
☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆




