3-4 大罪&死刑
村から戻ってきた俺を待ち受けていたのは、
「ストライキ!?」
「ポム!(スケサン先輩をリーダーとして、ダンジョン内ほとんどのモンスターがボスへ抗議してます!)」
なんとスト運動の知らせだった。
急いでシュバルの部屋へ行くと――ゴブリンやオーク、スライムたちが手持ち看板を持って騒いでいた。
看板には『断固抗議!』『エルちゃんを担当に戻せ!』『勤務中のお酒を認めろ!』など――
(いや、酒はダメだろ……ってそんな場合じゃない!)
この間の宴会よりも、ある意味で大盛り上がりだ。
まさか、エルにここまでファンが存在していたとは……。
「ボス! エルちゃん泣いてましたよ、どういうことですか!」
「なんかいつもより元気ないから話聞いたら、営巣担当降ろされたって言うじゃないですか!」
「ワイらは不満なんか無かった――いきなり1週間休みってなにするかと思えば、改装って。エルの嬢ちゃんが可哀そうだろ!」
『そうだそうだー!』
これにはシュバルも困り顔だ。
「エルも納得して後任に譲ったんだ――そう言うな」
彼女としては、正直に所属モンスターへ配属転換の報告をしただけなのだろう。
そこに俺を貶めるような意図は――無いと信じたい。
「最近は業務が終わったら、すぐに部屋に引きこもるの見たぜ……きっと、ボスに裏切られて泣いてるんだぜ……」
「可哀そうに……」
しかし彼女の業務が大変なのは、誰の目にも明らかだった――
そんな頑張っている彼女を、密かに応援しているモンスターは多かったようだ。
そのせいで、こんな抗議騒動へと発展してしまったのだ。
「大体、誰が後任を――」
「俺です!!」
全力の大声に、みんなは一斉にこちらへ振り返る。
(うぅ……凄い睨んでくる――)
でも……こっちも忙しさにかまけて、あまり詳しい説明をしなかった俺が悪いんだ。
モンスターたちは、俺の駒じゃない――
納得して貰うしかない。
俺はシュバルの前までやってくると、短い手を挙げた。
「お。俺がシュバル……ボスに頼んで、エルさんから営巣担当を代えて貰いました!」
コイツがエルちゃんを泣かせたザコモンスターか――そんな怨念の籠った視線が、突き刺さる。
もうなんか、今にも俺に襲い掛かって来そうな勢いだ。
これ、ここで理由を説明したとして――納得してくれる雰囲気じゃないな……
「おいおい待てよ、みんな」
そんな殺伐とした空気の中、1人の――骨が前へと出てきた。
額に『エル命』と書かれたハチマキを巻いて、手持ち看板を持っている。
いや、手持ち看板っていうか……ライブでよく見る推しうちわみたいに、ゴテゴテとブロマイドとか、バラの造化を貼りつけてる。
1人だけ異様にテンションの違う装い――このスト運動のリーダー、スケサンだ。
「ここでコイツをぶっ殺して、魔力炉に投げ込むのは簡単だがよ――それじゃあボスにも面目が立たないだろ?」
かなり物騒なことを言われたが、それでもかなり理性的な会話が期待できそうだ。
「ありがとうございます、スケサン先輩」
「だけどなぁ、これで今生の別れになるかもしれねぇ――」
「理由を聞いて下さい――それで納得できなかったら、煮るなり焼くなりしてください」
「ふっ、分かった、聞くだけ聞いてやろうじゃねーか」
そう言うと、スケサンは丸椅子に座り、腕組みをして構える。
後ろの連中も、ひとまず襲い掛かってくる様子はない――助かった。
「……エルさんの考えた1本道ダンジョンは、致命的な欠陥を抱えてるんです――」
俺は必死に説明した。
作ったボードやマップを使い、できるだけ分かりやすく、丁寧に。
このままでは、ランキングはさらに下落していく。
そのために、ダンジョンに何が必要なのかを提示する。
冒険者にとって、探索するロマンはどれだけ大切か――
来訪する冒険者の数を増すために、リピート率を上げるために、今日までやってきた作戦の内容。
改装が終わったダンジョンが、どのような姿になるかを。
熱く必死に語った――
「……以上が、俺が進めてきたダンジョン計画です」
シュバル本人に口止めされているので、去勢の話や期限が2か月後に迫っている話は伏せている。
あくまで、より良いダンジョンを目指すため――
みんなで、ランキング1位を取るため――
俺がシュバルの許可の下、独断で進めていることにした。
「なるほどな。よく分かった。……お前も、大変だったんだな」
「スケサン先輩……」
分かってくれた。
最初は、骨密度のスカスカな軽い先輩だと思って、ゴメンな――
「よーしお前ら! ――殺れ」
スケサンは、無慈悲にも号令を出した。
『オオオオオオ!!!』
最高潮に盛り上がるモンスターたち。
「ちょっと待っったぁあああ!?」
「なんだよ。約束通り、話は聞いたじゃねーか」
そういうのってさぁ……聞いて納得してくれたんなら、認めてくれる流れじゃん?
「お前が、どんな素晴らしい考えを持っていようとも。エルちゃんを泣かせた罪は――」
『大 罪!!』
「よってお前は――」
『死 刑!!』
俺は、覚悟を決めた。
「――優しくしてね?」
『死ねぇえええ!!』




