3-3 あとはイレギュラーさえなければ…
改装開始から1日目。
『この先の道、崩落により封鎖中――開通は1週間後です』
ダンジョンへ続く道の何か所に、こういった立て看板を立てておく。
ネットが無い以上、人の口コミでの噂はジワリジワリと広まる。
ダンジョン入り口が閉鎖されている――そんな噂を、冒険者ギルドみたいな場所で情報交換されてしまえば、アウトだ。
次は――
◆ ◆ ◆
4日目。
「ここはマッカンの村だよー」
「なぁ、おっさん」
「なんだい冒険者のお兄さん」
「つい先月来た時は……こんな宿、無かったよな?」
「いやー。なんでも村長に土地貸してくれっていう人が居て……なにが建つかと思えば、宿が建つなんてなぁ」
「ふーん……泊まる場所が増えてくれたら、こっちとしては便利でいいけど」
なんとこの宿。
ギュスター商会に頼んだら建物は2日で出来上がった。凄いし早い。
元々暇を持て余していた老人夫婦に、運営費をいくらか渡して経営して貰ってる。
もちろん夫婦は、モンスターが雇い主なんて夢にも思わないだろうけど。
まずはなにより、冒険者の数を増やさないといけない――
そりゃ増やした冒険者が全員、黒の迷宮へ来るワケじゃないけど。
絶対数が増えなければ、どうしようもない。
ちなみに。
それとなーく、宿で無料配布してる地図に、黒の迷宮の場所を印象付けるように書いてある。
さらに宿では食の提供が無いので、近所の酒場へ行くように誘導する。
俺は冒険者がまた1組、宿へと入って行くのを見届け――次の行動へ移る。
◆ ◆ ◆
6日目。
「へいらっしゃい。お客さん3名様かい?」
「なぁ、おっちゃん」
「なんだい冒険者の旦那」
「つい先月来た時は……こんな酒場、無かったよな?」
「なんでも、ここで酒場をやりたいっていう人が居てねー。空き家を酒場にリニューアルしちまったんだ」
「……まぁ、飯食うとこ困ってたから助かるけどさ」
首を捻りながらも、席へと着いた冒険者たちは、酒と料理を頼む。
「――ッ!? なんだこの酒、めっちゃうめぇぜ!」
「この肉はなんだ――芳醇な香り……香草とスパイスが効いてて、うめぇ!!」
「どうだい、気に入ってくれたかい?」
「ああ。こんなうめぇ酒は王都でもなかなか飲めないぜ……この村の地酒か?」
「……あまり大きな声じゃ言えないんだけどさ――」
周りの客に聞こえないよう、そっと話しかける店主。
「実は――近くのダンジョンの中に、酒好きのドラゴンが住んでるらしくってな。そこから、たまに盗んで来てるんだ」
「マジか。すげーな、おっちゃん」
「なーに。これでも現役時代は、それなりに名の知れた冒険者だったんだぜ?」
「どこなんだ、そのダンジョンは――」
木箱の中に隠れながら、そんなやり取りを見守る俺。
店主は指示通り、酒や料理を気に入った冒険者へ、情報を流して貰う。
2カ月ほどは、この噂を流して貰う手はずになっている――
なんだかんだ、これだけでも1週間はかかってしまった。
もう明日にはダンジョン再オープンだ――
しかし、順風満帆だと思われていた俺の計画には――大きな穴があったのだ。




