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死にスキルを持って最弱魔物に転生した俺―友達のドラゴンが経営するダンジョンで巣作り担当やってます―  作者: 夢野又座/ゆめのマタグラ
第3話 巣作りと熱い友情物語

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3-1 巣作り担当になりました


 ボル班の朝は早い――

 ハードトレーニングで有名な某軍曹のメロディに乗せながら、ジョギングする柔らかなオレンジの玉が5匹。


「冒ー険者~たちぃを、呼び込むぞ~」

『ポム~ポム~(冒ー険者~たちぃを、呼び込むぞ~)』

「がーんばって~からだを、鍛えるぞ~」

『ポム~ポム~(がーんばって~からだを、鍛えるぞ~)』


 できることは少しずつ。

 これから忙しくなる――基本である体力が無ければ、ダンジョンをより良くするなんて夢のまた夢。

 なので、まずは体力作りをスタートする。

 ――俺の体力は、やっぱり死なないと上がらないんだろうか。


「あーさごはんは、なぁにかな~」

『ポム~ポム~(おーいしいものだと、うれしいな~)』

 

 ◆ ◆ ◆


 ここはシュバルの部屋、兼ボス部屋。

 背後には宝箱が積まれ、その前で柔らかそうなクッションに包まれるようにシュバルは座っている。

 

「――というわけで、シローを営巣部門の……なんであった?」

「巣作りコーディネーター……こういうのは肩書が大事だからね」

「そう。それだ」

「はぁ」


 気のない返事をするエル。

 ここには、エルの部下である背後に控える悪魔娘たちが2人だけだ。


「……シローが営巣担当の手伝いもする……というのは分かりましたが」


 キッとした表情になる。


「つまり、わたくしの考えたダンジョン構造に……ご不満があると」

「…………平たく言えば、まぁ……そうなるな」


 言い難いのは分かるけど、そこは上司としてビシッと言って欲しかった。


「エルさんが考えてたんだね――この、()()()ダンジョン」


 そうなのだ。

 このダンジョンは地上1階に入り口があり、中は地下3階まである。

 

 まず入り口から右に曲がって真っ直ぐ。

 しばらく進んだら折り返すようにまた真っ直ぐ。

 これを繰り返し、行き当たれば地下への階段があり――以下繰り返し。


 たまに広い部屋があり、そこで中ボスモンスターと戦って勝てないと、先に進めないようになっている。

 さらに、お宝は地下3階にまとめて置いてあり――しかも、冒険者が帰還魔法使えない封印まで施してある仕様だ。


「えぇ。いかに冒険者に長く滞在させるかを考え、さらに疲弊させ……最後は討ち取るという完璧な構造です」

「お宝が地下3階なのは?」

「すぐに財宝が持ち帰れるような、安いダンジョンではないからです。帰還魔法封印も同じ理由です――難易度が高いほど、冒険者はやる気を出すでしょう」


 その考えに一理はある。

 あるが――


「……ちなみに聞くけど、冒険者のリピート数って把握してるの?」

「………………今のところ、ゼロです。ですが!」

「エルさん――それは、ダンジョンが新しいからじゃないんだ」


 昨日、夜なべして作ったボードに、まず既存のダンジョンマップが描かれた羊皮紙を貼る。

 ポム班のみんなが裏で支えてくれている。


「ダンジョンとは――ロマン、そしてリアルだ」

「はい?」

「どんな魔物がいるんだろうか、どんなお宝があるんだろうか――そんなワクワクした気持ちを胸に、冒険者たちはやってくる」


 ゲームもそうだ。

 どこにどんなお宝があるか――攻略ウィキでも見れば、すぐにどこにあるか分かる。

 分かるが――あえて、何も見ず。あらゆる通路は総当たりで調べる。

 一見すれば、不効率。

 無視も出来る――が、そこに未知のお宝があるかもしれないのに、どうして無視できようか――


(まぁ、性格もあるんだろうけど)


「激戦を制し、苦労して探索した末に、お宝をだけでも持って帰る――そのお宝は、冒険者にとってなににも代えられない心のトロフィーになるんだ」

「……よく分かりません」


 総務に人事、発注に管理。

 広報。配属モンスター同士のいざこざだって彼女に話が回ってくる。

 そういったあらゆる雑務を一手に引き受けて、さらに営巣まで担当している――

 明らかにキャパオーバーだ。

 

 部下が4人いるが、最終的な決定権はエルにある。

 なので、毎回彼女らがエルに指示を仰ぐ形になる――

 これも不効率だけど、そっちは彼女の仕事のやり方なので、俺は口を出さない。

 

「ロマン……シローが言う、ワクワク感はそんなに大事なのですか」

「大事だよ――それは、リピート数を見れば一目瞭然だと思う」

「それは……」

「昨日の冒険者は、なんで途中で帰ったと思う?」


 連戦が続いて疲弊したから――

 最初から奥まで行くつもりはなかった――

 3階へ潜れば最後、帰るのが困難になるから――


「これがもうひとつ重要な要素……それがリアルだ」

「リアル?」

「リスクとリターンが噛み合ってないんだ――この1本道ダンジョンは」


 何も得るモノが無いのに、ひたすらモンスターと戦わされる。

 しかも、そのモンスターは素材もお金も落とさない――経験値くらいは貰えるけど、それだけじゃあ弱い。

 これでは、冒険者満足度が低いのも納得だ。

 

「さっきロマンが大事って言っといてアレなんだけど……人間って生活しているよね」

「生き物ですからね」

「そう。生きてる以上、食事も休憩も必要――そのためにお金も稼がないといけない」


 なにこいつ当たり前のことを言ってるんだ――そんな顔をされる。


「なにも、みんながロマンを追い求めてダンジョンに来るワケじゃないんだ――生活のために仕方が無く、冒険者をやっている人も居るはずだ」

「つまり――」

「1本道ダンジョンは、運営からすれば、効率良く稼げるかもしれないけど。冒険者からすれば、つまらないの一言だよ」


 ハッキリと告げた。

 

「成功体験を生まないダンジョンは――ただの箱ものだよ」


 俺が喋っている間にも、エルの目つきが鋭くなったり、身体がプルプル震えたりと――色んな反応が垣間見れた。


「攻略が楽しくないダンジョンは、リピートなんてして貰えない……ランキング上位なんて夢のまた夢だよ」

 

 チラッと……俯いている彼女の方を見た。

 怒り狂うか、あるいは喚くかと思えば――

 

「――分かりました。そんなにシローが言うのなら、好きにすればいいです」


 まるで少女のように目じりに涙を溜め、声を震わせ――

 

「失礼します――」


 お辞儀したときには、床に水滴がいくつか落ちる――


「エルよ――すまないな」

「……いえ」

 

 そのまま彼女は部屋を出て行った。

 部下の人たちは、困惑した表情で顔を見合わせている。


「……悪いことしちゃったなぁ」

「お前の言うことに一理あると、エルも分かったのだ――だから、潔く退いたのだ」

「はぁ……女の子泣かしちゃった……」


 めちゃくちゃ罪悪感が凄い。

 エルにしてみれば、ポッと出の、主人の友人を名乗る輩に仕事を取られたのだ。

 長くシュバルのために頑張ってきたのに――


「もう、頑張るしかないね」


 再びダンジョンマップを見る。


「――改装費用って、大丈夫?」

「ワシの持っている財宝はまだ余裕がある――それに、このダンジョンを購入するのに換金した余りもな」


 そんな会話をしていると、ドアをノックする音――

 エルが戻ってきた、わけではないらしい。


「失礼しまーす!」


 入って来たのは――知らない悪魔娘だった。

 こんなピンク髪の快活そうな少女が居れば、すぐにでも気付くのに。

 

「初めましてダンジョンマスターシュバル様。それと、営巣担当のシロー様」


 うやうやしくお辞儀をして、ニコっと人懐っこく笑う少女。

 口から見える八重歯が可愛らしいが――


「ダンジョン販売から改装、トラップの設置工事まで一手に引き受ける、ギュスター商会ダンジョン部門の担当。フェルネと申します!」

「……エルを通してやり取りをしていた担当だな」

「はい! エルさんから、ダンジョンの大幅なリニューアル工事が必要となったと聞いて――魔界から、超特急召喚魔法で飛んできました!」


 思わず顔を見合わせる俺とシュバル。

 まだ彼女が出て行って10分くらいしか経っていない――


「ダンジョン新造したはいいけど、思ったより人気がでないから改装したいってお客様も多いんですよね~」

(まぁ、多いだろうな)

「事前に、新築3カ月以内なら改装費を大幅値下げ特約にもご加入しているので、すぐにご対応が可能です!」


 有能すぎる。

 自分の仕事が、必ずしも実を結ぶワケでは無いことを――彼女は知っていたのだ。

 でもまぁ、それをシュバルじゃなくて……新参者のボルに言われたのがショックだったんだろうな。


「じゃあ――」


 俺は用意していた、新しい方を紙を――ボードへと貼り付けるのであった。

 さて……吉と出るか、凶と出るか――

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