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死にスキルを持って最弱魔物に転生した俺―友達のドラゴンが経営するダンジョンで巣作り担当やってます―  作者: 夢野又座/ゆめのマタグラ
第2話 ダンジョンへ就職しました

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2-6 シュバル、処刑の危機


 ピンポンパンポーン↑

 

『ダンジョンへ侵入した2人組の冒険者は地下3階への階段前より、帰還魔法で離脱しました。お疲れさまでした――』


 そんなアナウンスを聞きながら――

 チリから元の丸っこい身体へ戻った俺は、椅子の上でしょんぼりとしていた。


「はぁ……」


 なにが「この槍カーフ作戦なら、確実に冒険者をヤれる(ドヤァ)」だよ。

 あんな変哲もない冒険者が、あんな必殺剣持ってるとか――

 いや。

 俺が弱すぎるせいで、実はそこまで強くないとか――


「ありうる……」

「ポム!(すごかったねー、あの風でスパスパ切るやつ!)」

「ポム(痛かったねぇ)」

「ポム!(でも、いつもより長めに戦えたよね!)」


 そんな前向きな会話をしているみんな。

 まぁ蘇生用のお金稼ぐのも、なんか急がないといけない理由もないし――

 ボルはボルらしく、ゆったりするのも悪くないかもしれない――


 ◆ ◆ ◆


「それはそれとして、ヘコむよなぁ」


 ダンジョン裏口から外へ出ると、崖の隙間から月が見えた。

 日本で見るのとは違い、まるで空を覆ってしまうかのように大きな月だ。


「――はぁ」


 バッサバサという翼の音――

 

「どうした、シローよ」

「……シュバル?」


 アンニョイな気分に浸っていると……どこからか、飛んで戻って来たシュバルと出くわした。

 

「今日の初出動、なかなかの活躍だったと聞いているぞ」

「――全然足止めにもならず、必殺剣でスパスパやられたけど」

「ボルたちだけで止める必要は無い――それに、どれだけの実力を有しているのかを確認するのも、重要な仕事だぞ」

「一撃でやられてなにか参考になったかな」

「……人間共は、全員が全員。剣術スキルを持っているとは限らないからな……それが知れただけでも、充分だ」

「そっか――」


 励ましてくれているのか、それともただ正直に言ってるだけなのかは分からないが――

 そうやって、やったことを評価して貰えるのは素直に嬉しい。


「ありがとう、シュバル!」

「ああ――」


 そういえば、こんな時間にシュバルはどこへ行ってたんだろうか。


「……シローよ。少しだけ話を聞いて貰っても良いか」

「なんだよ、改まって」

「この話はエルとギュスター商会――アシスタントの悪魔族の者だな。それと、古い馴染みであるスケサンくらいしか知らない話だ――他言無用で頼む」

「……分かった」


 つまり、このダンジョンのほとんどの魔物は知らないこと、俺に話してくれるのだ。

 なんだか本当に友達っぽくて――嬉しい。


「このダンジョンを造った、目的についてだ」

「目的――?」


 このダンジョンの知名度を上げて冒険者を多く来訪させたい――とか。

 財宝で人間たちを多く呼び寄せたい――とか。

 それらは、なんの為にやるのか。

 全く知らないで、俺も就職したんだよな。


「……我がブラックドラゴンの一族は、すべての世界で現存するだけで……およそ30と少しくらいだ」

「少なッ!?」

「……かつて我が一族は、人間たちの国を多く焼き払い、様々な財宝を手中に収め――最強と最恐の名を欲しいままにしていた」


 ここからの話は長いので要約するとだ――


 黒竜一族は、甘く見積もっていた。

 人間の、強敵に対抗する術を見つけ出す発想力、実現するための技術力と知識を――

 時代と共に、次々に対ドラゴン魔法、武器、防具、兵器が生み出され――かつて栄華を誇った黒竜一族は、人間の世界から退散することとなる。


 しかし、積年の恨みを抱く人間がそれを許すわけもなく。

 人間はミッテルガルズ、さらに魔界まで黒竜を追いかけてきた――


 黒竜はその肉体もまた、対ドラゴン装備の素材として優秀だった。

 それで全滅寸前まで狩られたのが、もう500年以上前の話だと言う。


「長命ゆえに、繁殖の機会も百年の月日で待たねばならん――そして、ワシもその時期が近づいて来たのだ」

「……結婚するってこと? でも30くらいしか居ないんじゃ、ほとんど顔見知りなんじゃないの?」

「――我らは、その固有能力によって――種が違うドラゴンとも“子を成せる”のだ。」

「それは凄いね」

「よって一族の長はまず種の存続を第一と考え――複数の竜貴族の下へ、使者を出した――」

「シュバルの婚活ってことか……というか、それとダンジョンはなにか関係あるの?」

「大いにあるのだ」


 シュバルは、その黒い指を3本立てた。


「ドラゴンのメスはオスの武力、財力、営巣力――それらを自分より上回っていると判断しなければ、屈服しないのだ」

「屈服?」

「子を成す準備と言えばいいか……その状態を我々は屈服と呼んでいる」


 なんかエッチだな。


「逆に屈服状態でないメスと、いくら交尾したとしても子は出来ない――」

「まさか、ダンジョンもその審査対象なの?」

「そうだ。まずメスは、オスの作ったダンジョンへと赴き、人間と同じように攻略する――ここで気に入らなければ、その時点で破談となる」

「人柄とかも見ない内に破談すんの!?」


 人間で言えば、新築の一軒家を内見しただけで婚約が決まるようなものだ。

 だが、ドラゴンに人間の普通は通用しない。

 

「メスは我が強いからな――少しでも気に入らなければ、ダンジョンごと破壊するだろうな」

「えぇ……」

「次に財力――どれだけの財宝を蓄えているか、冒険者から得た魔力石の量など……どんな配下を従えているかも見られる」


 ここまで来ると婚活というより、税務署の監査みたいだな。


「最後に武力――実力で相手のメスを上回なければならない」

「それは……シュバルなら余裕なんじゃないの?」


 最強のブラックドラゴンだし。


「ふっ。買いかぶってくれるのは嬉しいが――ドラゴンとは、元来メスの方が強い種族だ」

「マジで」

「竜魔力は特に感情の影響が多くでる――メスは感情的になりやすく、これが相性抜群でな……親父とお袋がケンカしたときには、お袋のブレスで島がまるごと吹き飛んだ」


 スケールが違い過ぎる――

 まさかドラゴンがそんな、かかあ天下な種族だったとは。

 

「それでダンジョン大きくしないといけないのかぁ」

「それもある」

()?」


 まだなにか理由があるのか。

 

「――次はワシの出番だと決まったのがもう20年前でな……」

「うん」

「特に営巣に関しては、ギュスター商会の力を借りているとはいえ――自信が無くてな」

「ほぉ」

「構想を練りつつ、この20年ほど手を付けずにいたら……姉上に、逆鱗を落とされてな……」


 顔面を覆って地面に伏してしまったシュバル。

 その様子に、まだ会ったこともないお姉さんの――激怒した顔がありありと浮かんだ。

 

「あちゃあ……」

「半年以内に、まともなダンジョンに仕上げないと――」

「仕上げないと?」

「オスとしての資格なし……婚約の儀は破棄となり、ワシはオスとして処刑される」

「処刑!?」

「ああ――生殖器を、切り落とすと言われた」

「つまり去勢!?」


 なんてことだ。

 あと半年の間に――半年?


「ねぇシュバル。残り、あとどんくらいなの?」

「その話が4か月前……つまりは、残り2か月だ」


 オーノー。

 先月オープンしたばかりのこのダンジョンを、あと2か月で仕上げないといけない!?


「条件は2つ。1つ。アッサムダンジョンランキングで、1度でもいいから1位を取ること――」


 それがどのくらいの難易度かは分からないけど――絶対大変だと思う。

 

「もう1つは――姉上が仮想婚約者として、このダンジョンを攻略しにやってくる……つまり、姉上を満足させることだ」

「……」


 まさかこのダンジョンに、シュバルの男性としての尊厳がかかっていたとは――


「――ところで、今って何位?」

「およそ100位といったところだ――このアッサム地方では、約120ほどのダンジョンがあるはずだ」

「ほとんど最下位じゃん!」

「……だからこうして、悩んでいるのだ」


 こんな弱気なシュバルは、初めて見る。

 あの鎧騎士と戦った時も、エルに問い詰められても余裕だったのに――


 俺を雇ったのも、こういった状況を打破してくれると期待してのことだったのかもしれない。

 そう思うと――申し訳ないという思いと同時に、胸の奥が熱くなってきた。

 いや胸はどこにあるか分かんないけど。


「分かったよシュバル――俺も、全力で手伝うよ!」

「シロー……」

「俺はシュバルに、色々助けて貰った――こっちの世界でボッチだった俺と、一緒に居てくれた……」


 ドンと胸を叩く。

 

「だから恩返しをさせてくれ!」

「……助かる。シロー」


 こうして俺は就職初日にして――

 ボル班長、そして営巣担当の手伝いという仕事を得たのだった。

 前途多難すぎるぞ……。

 

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