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死にスキルを持って最弱魔物に転生した俺―友達のドラゴンが経営するダンジョンで巣作り担当やってます―  作者: 夢野又座/ゆめのマタグラ
第1話 最弱、大地に立つ

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1-1 最弱転生

 異世界転生。


 もの凄く胸躍(むねおど)る単語だ。


 まさか俺が死ぬなんてな……。

 給料日で奮発(ふんぱつ)して、生牡蠣(かねつよう)を数十個一気食いしたあとに、全身の穴という穴から体液を垂れ流し、喉に詰まって窒息したとは夢にも思わなかった。

 我ながら最悪な死に方だが、それも異世界転生できるならチャラになる。


 やったぜ。


『特典:ランダムなチートスキルの付与』

 おいおい。さらにお約束の強力なスキルなんて貰えるなんて――ワクワクが止まらなかった。

 人生スタートは赤子なのか、それとも既に人生は始まっていて、ある日いきなり目覚めるとか。

 そういう展開に、胸を(ふく)らませていた――俺の、ワクワクを返してくれ。


 ◆ ◆ ◆


 目が覚めたら、そこは知らない空だった。

 視界に映る天気は悪いし、辺りは黒い葉の木か、ゴツゴツした岩ばかり。

 昼か夜か分からないまま、起き上がる。

 ――なんか、周りのモノが異様に大きい気がする。おいおい、まさか小人に転生かよ――

 

「……なんだこの姿」

 

 自分の手を見れば、ドラ〇もんのような丸い手。

 足も短い――だけど胴体が無い。そんなアホなことがあるか。


「鏡かなんか――あそこだ」


 水音がするので、そこまで走る――

 走って――

 ……遅い。一歩がとんでもなく小さいのだ。


「ぜぇ、ぜぇ……」


 それでもなんとか、川に繋がる池に辿り着いた。

 その川はそれなりに透明度(とうめいど)が高いおかげで、なんとか自分の顔も視認できた。


「……これが、俺?」


 オレンジの丸い顔に、豆のようにつぶらな(ひとみ)

 顔に直接生えた、可愛らしい手と足。

 ありていに言えば、1頭身(とうしん)――


「え、えええええ!?」


 これが、3日前のことだ――


 ◆ ◆ ◆


 俺は三日三晩。

 川を下りながら彷徨ってようやく辿り着いた町へと来ていた。


 異世界ファンタジーって感じの街並みだ。

 ただ、歩いているのはゴブリンやハーピー。ミノタウロスやオーク。

 どこを見ても魔物(モンスター)か魔獣ばかり――


「へい兄さん! この町って、なんて名前だい?」

「ああ? ここはミッテルガルズのサガロだ。なんだお前さん……余所者(よそもの)か?」

「そうなんだ。仕事を探しててね」

「そうか! この魔界一の賢者(かしこきもの)であるオレ様に話を聞くとは、よく分かってるじゃねーか!」

 

 ここは魔界だったのか――通りに魔物しかいないわけだ。

 親切なゴブリンは、『ミッテル派遣会社(はけんがいしゃ)オクルンデス』という、仕事を斡旋してくれるお店まで紹介してくれたのだ。

 さっそく教えて貰った建物に入り、(はる)か高い受付カウンターへとよじ登る。


「――なにか用事?」

「俺は士郎だ。大神下士郎(オガミシタ シロウ)ーー」

「ふーん……シローね」

「――なぁ、お姉さん。教えて欲しいことがあるんだけど」

「なによ」

 

 受付嬢はサキュバスだった。

 革製のボンテージを着て、腹の下にはピンクの紋様(もんよう)が入っている。

 ただ、目の前の彼女は『いやらしい』っていうより『お堅い』という雰囲気だ。

 釣り目の眼光が、会社のお局様(つぼねさま)を思い出させる。


「実は俺は――かくかくしかじかでよ」

「転生者? ふーん……で?」


 塩対応。

 だがしょうがない。

 俺も、見知らぬ人がいきなり変なことを言い出せば、病院を勧めるだろう。


「この世界のこと全然知らなくて……ほらっ。仕事を請ける前に、相手のこと知らなきゃいけないでしょ?」

最弱(ボル)相手に、仕事なんか無いわよ」

「ボル……?」

「はぁ――“カード”って念じて見なさい」

「……カード」


 念じろって言われたのに口に出してしまった。

 目の前には、光に包まれた1枚の紙切れが出てきた。

 ハガキサイズの、白い紙だ。


「それ、ステータスカード。魔族でも魔物でも、みんな持ってる魂のカードよ」

「なになに……」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆

種族:ボル(ランク10)

称号:魔界最弱モンスター

 

名前:大神下 士郎(オガミシタ シロウ)

レベル:1

ライフP:3

マジックP:0


ちから:1

がんじょう:1

すばやさ:1

たいりょく:1

まりょく:0

けいけんち:1

☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆


「……これは、たしかに最弱だ……」


 しかし俺は、重要なことを思い出す。

 

「それよりもチートスキルだ。なんか凄いスキル持っているはず……」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆

魔法:なし

スキル:死ぬとレベルアップ

説明:死んだ時のみレベルアップできます。

通常の方法ではレベルアップできないのでご注意を。

また魔法やスキルの獲得もレベルアップ時にしかできません。

☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆


「なに、これ」

「アンデットスキルね。自動蘇生(オートレイズ)のあるアンデットが持ってる分には強いけど……アンタ、ボルだもんね」

「……死んだら蘇生したりする?」

「しない。蘇生魔法(レイズデッド)は強力な呪文だし、悪魔教会でやってくれるけど――1回蘇生(そせい)するたびに、小さな家が買えるわよ」

「……」


 使えねぇ。

 なにがチートスキルだ。

 こんな命1つしかない生き物に、なんでそんなハズレスキルを付与した。

 どっかの神様のバカ!


「気が済んだら、帰って欲しいんだけど」

「そこをなんとか! お金が無いと、飯すら満足に食べられなくて……」

「――ここの文字読める? 転生者さん」


 受付には、大きな文字で記された立て看板が置かれていた。

 異世界の文字だ。

 それでも不思議と、読むことができた。


『最低レベル10から仕事を斡旋(あっせん)しています。なお、ボルお断り』


「…………はい」

「早くどっか行かないと、魔法で駆除するわよ?」


 そう言われ、俺はトボトボと歩き――この建物を後にした。


「まだだ……これだけ大きい町だ。どっかに俺を雇ってくれるところが――」

 

 なかった。

 暗雲(あんうん)とした気持ちで、町の広場で落ち込んでいると――


「さっきのボルじゃねーか!」


 顔を見上げれば、顔はブサイクだが、色々と親切に教えてくれたゴブリンが居た。


「さっきのゴブリンの……」

「オレ様はゴブト! これでも、この町じゃ名の知れた商人よ」


 さっきと肩書違うじゃねーか。

 だけど今は、そんなことはどうでもいい――

 

「俺は大――いや、シローだ」


 俺の浮かない顔を見て、すべてを察したのだろう。


「その様子じゃ、ぜんぜんダメだったっぽいな」

「ああ……」

「ボルのクセにハキハキ喋れるから、意外と仕事見つかるかもって思ったんだがなー」

「普通のボルは喋れないのか?」

「変な言い方するな。お前もボルなのによ――」

「……」


 さっきのサキュバスに冷ややかな目で見られたことが脳裏に浮かぶ。

 正直に話しても、信じて貰えないだろう。


「行くとこ無いなら、ウチに来るか!」

「……いいのか?」


 正直。こっちの魔物の仕事なんて見当もつかない。

 しかも1頭身で手足が短い、そんな最弱モンスターにできることはあるのだろうか。


「ちょうど足りないから、仕入れに行こうと思ってたところだしな」

「……お願いします」


 このままだと野垂(のた)れ死にか、他の魔獣にでも襲われて終わるだけだ。

 例えブラックな環境でも――食と住だけでも確保したい。


「よし。じゃー行くか!」


 その邪悪にしか見えない笑顔も、今の俺には――(まぶ)しく見えた。

2月3日まで、毎日更新しています!

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