第3話 役に立たなきゃ④
「暴れ猪の討伐、お疲れ様でした。こちらが、今回のクエスト報酬です」
木製のカウンター越しに袋を受け取る。今までにない重みだ。袋の口から、きらりと光る金貨が覗いている。
「おお! これだけあったら、宿にも泊まれるな!」
バッシュが浮かれて声を弾ませた。ミィナも嬉しそうに頬を緩ませている。
「ああ。今夜はゆっくり休んで、朝になったら関所に向かおう」
ギルドを後にしようとした、そのときだった。
「ふむ、なかなか見所のある冒険者だ。あの猪を倒すとはな」
振り向くと、口ひげを生やした中年の男が、カウンターの奥からのそりと姿を現した。
「なんだこのおっさん……?」
バッシュが率直な感想を口走る。
相手がNPCだからまだいいけど、そういうのあんまり言わない方がいいぞ、バッシュ。
「私はギルド長。君たちになら、あの言い伝えを教えてもいいだろう」
芝居がかった口調で、ギルド長が語りだした。なにやらイベントが始まったようだ。
「この世界には『神の祭壇』と呼ばれる場所がある。それがどこにあるのか、誰が建てたのかはわからん」
一瞬、その場が静まり返った。
「なんでも、レベル99に達した者がその祭壇に辿り着くと、神が降臨するんだとか。そして、神に認められた者だけが、天上の世界へと導かれる……」
ギルド長は肩をすくめて言葉を続ける。
「信じるか信じないかは、君たち次第だが……目指してみる価値はあるだろう」
言い終わると、ギルド長はさっさとカウンターの奥へ引っ込んでいった。
「天上の世界って、あの窓口みたいなところだよな」
バッシュの何気ない呟きに、ミィナが黙って頷いた。
その一言で、俺はピンと来た。
「……そういうこと、か」
無意識に言葉が漏れる。
「カツさん……?」
ミィナが不安げに顔をのぞき込んだ。
やっぱり、ここは作られた世界なんだ。
あの、神とやらによって。
そして、ここから出たければ、さっきの条件をクリアしろということだ。この世界を抜け出した後、どうなるのかはわからないが。
ただひとつ、言えることは――
「これが、神に直接会えるチャンスなんだ……!」
バッシュとミィナは、きょとんとした顔でカツを見つめた。
神に会えたからと言って、俺が元に戻れる保証はない。けど、ミスをうやむやにした挙句、口車に乗せられてこの世界に放り込まれたんだ。文句のひとつやふたつ、俺にだって言う権利はある。というか、言ってやらなきゃ気が済まない。
「俺はその、神の祭壇ってのを目指す」
誰に向けるでもなく、決意表明のように呟いた。
「……そっか。うん、いいと思うぜ。カツがそう決めたんなら、オレも協力する」
「はい。私も……お手伝いしたいです」
控えめながら、バッシュとミィナは賛成の意を示した。
「ありがとな、二人とも。大変かもしれないけど……よろしく頼む」
俺は二人に頭を下げた。私情に付き合わせるのは申し訳ないが、今はなりふり構ってられない。とにかく、俺は神に会って文句をぶつける。
――このとき、俺は自分のことで頭がいっぱいで、二人の物憂げな様子になんの違和感も持たなかった。
▼〈バッシュ〉が 仲間に 加わった!




