エンディングは舞踏会にて
6月末、貴族学院の舞踏会は豪華な輝きに満ちていた。
乙女ゲーム「恋♡は人狼とともに」のトゥルーエンド、華やかなフィナーレの舞台。クリスタルのシャンデリアが光を反射し、大理石の床に楽団のワルツが響いていた。貴族たちのドレスとタキシードが花のように揺れ、星々のように夜を彩っていた。
悪役令嬢クリスティーネ・フォン・ランカスターとして、この舞踏会は私の勝利の祝祭だった。
「クリスティーネ様、ご婚約おめでとうございます。」
エリザベス・フォン・アイゼンハワーが、扇を振って微笑む。彼女のドレスはエメラルドグリーン、侯爵令嬢らしい気品に満ちている。親友で悪役令嬢コンビの片割れ、彼女もこのゲームを生き延びたのだ。
「あら、エリザベスこそ。モーリスの弟さんからの求婚、受けたのでしょう?」
私は目を細め、彼女の隣に立つ青年をチラリと見る。モーリス・ブランカの弟、次期当主としてブランカ家を継ぐ若者だ。ダミアンを失ったエリザベスに、モーリスの死を悼むブランカ家が新たな縁を申し込んだ。
エリザベスが頬を染め、扇で口元を隠す。
「ふふ、クリスティーネ様には敵いませんわ。でも、ブランカ家の申し出、悪くありませんのよ。」
彼女の笑顔に、未来への希望が垣間見える。彼女も新たなゲームを始めたのだ。
「モーリス。あなたの死、絶対無駄にしないわ。」
――私が言ったあの言葉、こんな形で実現されるなんてね。
「さて、僕たちも踊らない?魅力的な君を見せつけたいんだ。」
リチャードは彼女をダンスフロアの真ん中へといざなって行った。
クリスティーネのドレスは、最初に断罪されたあの時と同じ。金糸の刺繍の入った、豪華な深紅のドレスだった。腰には黒いリボン。黒いレースの手袋まで身に着けている。
深紅のドレスが、ワルツのステップを踊るたびに、柔らかく揺れた。
リチャードのタキシードは漆黒、胸元の金色の飾りが王子らしい威厳を放つ。
私たちのステップは完璧に息を合わせ、まるでおとぎ話の挿絵のよう。貴族たちの視線が集まり、ため息が漏れる
「まあ、クリスティーネ様。なんてお美しい。」
どこからか、ため息が聞こえた。
美しい王子様と踊る、美しい令嬢。
まさに、おとぎ話の挿絵のようだった。
というのは、あくまで外から見た姿。
悪役令嬢クリスティーネが、孤独な戦いの末に得たもの。
それは、たった1人の共犯者だった。
――リリィを潰し、ゲームを制した私が、第1王子とどんなゲームを始めるのかしら?
こうして、悪役令嬢クリスティーネの復讐劇は、華麗に幕を下ろした。
いや、新たな幕を開けたのだった。
私にとっては長かったですが、何とか完成まで書ききれました。
読んでくださった皆様のおかげです。
お読みくださり、ありがとうございました。




