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悪役令嬢は人狼かしら?  作者: 塩麴とまと
ループ3:悪役令嬢の反撃
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プロポーズ

礼拝堂は静寂に包まれていた。リリィとレオナルドが警備兵に連行され、偽聖女の仮面と王子の傲慢が粉々に砕けた瞬間。エリザベスが私のそばに寄り、囁く。


「クリスティーネ様…終わりましたね。」

「ええ、素晴らしい舞台でしたね。」


私は扇で微笑み、内心でゲームを振り返る。モーリス、ヴィクター、ダミアン、マチルダ。人狼の牙と策略で排除し、リリィの偽善を暴いたこのゲーム。完璧な勝利だ。


しかし、ふと思う。この世界は、乙女ゲーム「恋♡は人狼とともに」のシナリオを超えた。国王の介入、レオナルドの謀反疑惑、全ての罪を負った偽聖女。そんなものは、本来ゲームのどこにも存在しない。


――私の選択が、この結末を生んだのね。転生者としては、とっても面白かったわ。


「クリスティーネ様、これからどうするんですの?」

ジョセフィーヌが不安げに尋ねる。

その瞬間、背後から低く魅力的な声が響いた。


「クリスティーネ、僕と結婚しない?」


振り返ると、第一王子リチャードが立っていた。金色の髪が陽光に輝き、鉄壁の微笑みが私を射抜く。1週目水曜の教室での偵察以来、彼の目は私を試すように光っていた。私は扇を握りしめ、動揺を隠す。


「リチャード様、突然ですわね。…エリザベス様だって適任ですことよ。ダミアン亡き今、彼女はフリーですもの。王位継承争いには、もううんざりですわ。」


「うーん。エリザベスでは、ちょっと荷が重すぎるかな。」


この王子、ちょっとプロポーズを断った程度では、鉄壁の笑顔を崩さないらしい。

「君がいいんだ。あの立ち回りを華麗に決めていた、君がね。」


――第1王子、ただの求婚じゃないわね。甘い言葉を吐いているけど、本当は何を企んでるの?


リチャードが私を応接室に連れていった。カーテンを閉め、彼は囁く。

「ここなら2人きりだ。聞かれる心配もない。」


ニコニコしたまま、彼の目が鋭くなる。


「人狼は、君だね。クリスティーネ。」


冷や汗が背筋を伝う。悪役令嬢の私が、こんな動揺するなんて!


「ま…まさか、リチャード様、冗談でしょう?」


クリスティーネは扇で口元を隠すが、心臓が跳ねる。彼はどうやって…!?


「推理だよ。君の動きが完璧すぎたんだ。モーリスの死も、ヴィクターの死も、ダミアンの最期も。…犠牲者の選択が、まるでリリィを追い詰めるための計画みたいだった。金の髪飾りの一件も、君がリリィを糾弾したことで、彼女の計画が暴かれたろう?…普通の令嬢が、そんな大胆な策を次々と繰り出せると思う?」


リチャードの声は穏やかだが、目は私を逃さない。1週目から私を観察してたのね。掲示板の謎の手紙も、妙にタイミングの良い登場も、彼の暗躍だったと確信する。


「リチャード様…鋭い推理ですわ。でも、証拠は?」

私は微笑み返すが、内心で焦る。転生者の知識を活かしても、彼の洞察力は予想外だった。


「証拠はなくても、君の目が物語ってる。リリィを憎む炎。知的で、それでいて優しい。魅力的だよ、クリスティーネ。」

彼が一歩近づき、私の手を取る。恋愛ゲームの王子らしい仕草だ。


――でも、このロマンス、罠かしら?


「それでも、君に感謝をしているんだ。あの偽聖女は確かに、人狼に乗じて王子妃になり上がろうとした。あんなクーデターを華麗に止めた君の手腕を、僕は高く買ってる。」


彼が微笑む。全て分かった上で、リリィの信頼を崩す火種を裏で蒔いてたなんて!


「で、君はこれからどうする? 人狼は毎週人を喰らうだろ? 次はエリザベス? ジョセフィーヌ?」


リチャードの言葉に、私はハッとする。復讐に夢中で、ゲームの先を考えていなかった。人狼の呪いのせいで、襲撃は終わらない…。


彼は小瓶を取り出した。


「開発中の特効薬だ。人狼の発作を抑える。…ねえ、クリスティーネ、僕と結婚しない?君にとっても悪い話じゃないだろう?婚約者が、第2王子から第1王子に変わるだけのことさ。 僕には君が必要なんだ。」


彼の声は甘く、耳元で囁くその姿は、まるで悪魔の誘い。しかし、彼の目は本気だ。それは「運命の人」に恋した男の顔だった。


私の策略に魅せられ、私の心を見透かした男。


――この提案、嫌いじゃないわ。


「リチャード様、あなた、恐ろしい方ですわね。…でも、そのプロポーズ、謹んでお受け致します。」


クリスティーネは扇を閉じ、彼の手を取った。リチャードの微笑みが深まる。


「いい選択だ、クリスティーネ。君と僕なら、この王国を面白くできる。」


私は内心で笑う。人狼の物語は、新たな舞台へと旅立つ瞬間だった。


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