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悪役令嬢は人狼かしら?  作者: 塩麴とまと
ループ3:悪役令嬢の反撃
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聖女を断罪する日②

形式上の投票を終えて、警備兵がリリィを引きずり出そうとした瞬間、低く威厳のある声が礼拝堂に響き渡った。


「待て!」


全員が振り返ると、そこには国王が立っていた。豪奢なマントを翻し、鋭い眼光で場を見据えるその姿に、生徒たちが息を吞む。

「国王陛下!」

「どうしてここに…!?」

クリスティーネは扇で口元を隠し、内心でほくそ笑む。ゲーム本来の進行ならば、人狼が処刑されてから国王が事態の終焉を告げにくるはずだ。予定外の登場も、嫌いじゃない。


――人狼がまだここに居るのに国王自ら登場なんて、面白いじゃない。


1つ警戒すべきは、国王の後ろに控えた第1王子。クリスティーネは、チラリとリチャードに視線を送った。相変わらずのニコニコ笑顔で、食えない男だ。


「ワシのところに、手紙が2通届いた。」

国王は重々しく、2通の封筒を取り出す。1通にはダミアンの筆跡、もう1通にはエリザベスの署名。


「両者とも同じ訴えだ。人狼の襲撃、身の危険、王子妃の座の強奪。そして、リリィ・シュナイダー男爵令嬢の偽善と、レオナルドの裏切りについてだ。ダミアンはさらに、恐ろしい事実を記していた。」



国王の声は冷たく、礼拝堂に響く。エリザベスが小さく頷く。彼女の手紙は、クリスティーネがリリィの偽善を暴くために仕込んだ一手。ダミアンの告発は、運命の人としてリリィを疑い、命を賭けて残した遺言だ。

――2人とも、私の復讐劇の配役、見事だったわ。


「父上、それは誤解です!」

レオナルドが声を上げるが、国王の眼光に射すくめられる。リリィがハンカチを握りしめ、震える声で叫ぶ。

「陛下、私は無実です! 聖女として…!」


「黙れ、リリィ・シュナイダー――いや、その名すら偽りだ。」

予想外の言葉に、生徒たちの視線が一斉にリリィに集まる。彼女の顔は青ざめた。


だが、国王の次の言葉は揺るがなかった。

「レオナルド、リリィ。お前たち2人を謀反人と認め、尋問の上処刑する!」

礼拝堂が凍りついた。


「さて、ワシが自らこの場に来た理由を教えよう。この学園での人狼の暗躍は、単なるゲームではない。隣国との緊張が高まる中、王位継承を巡る陰謀が我が国の根幹を揺さぶる危機だった。ダミアンの手紙が我が手に届いた時、事態の深刻さを悟った。貴様らを放置すれば、国そのものが崩壊する。だからこそ、ワシは王として、この場で真実を明らかにし、裏切り者を断罪するために来たのだ!」


単なる人狼ゲームからは想像もしていなかった言葉が飛び出し、一同、クリスティーネすらも喋ることすらできなかった。



「そもそも、リリィ・シュナイダーなる令嬢は、シュナイダー男爵家に存在しない!」

国王の言葉に、一同、恐ろしいものでも見るかのように、聖女にして男爵家令嬢リリィ・シュナイダーの方へと振り返る。


「その女は聖女でも無ければ男爵令嬢でもない!考えられることは1つ!王位継承争いでクーデターを目論む、スパイだ!」

国王の言葉が雷のように轟いた。


「リリィが…スパイ?」

「そんな…聖女だと思っていたのに!」

生徒たちの囁きが礼拝堂に響く。リリィは必死に弁明しようとするが、声は震え、言葉にならない。


「冷静になればわかることだ。人狼事件が起こる直前に、貴族学院に転校生だと?明らかにおかしい。しかも、新たに爵位を受けた平民でも、隣国の留学生の貴族でもない。もう調べはついているぞ。リリィ。」


ゲームそのものの「何で貴族学院に転校生としてヒロインが来るの?」という矛盾が、最悪の形で露呈したのである。


「さて、レオナルド、次はお前だ。お前は人狼であるその偽聖女と結託し、王位継承を狙った謀反を起こそうとしているな!」


レオナルドが震える声で弁明する。

「そんな…。きっと俺は陥れられたんです。…リリィに!」

プライドも何もかもかなぐり捨てて、必死に自分を正当化する姿は、あまりにも無様だった。


「黙れ、レオナルド! お前は第2王子として、国の未来を担う者として、王位継承の重みを理解していたはずだ。それにもかかわらず、リリィと結託し、クリスティーネとの婚約を破棄し、側近であるヴィクターとダミアンを暗殺した。お前の行動は、単なる愚行ではない。王位を簒奪し、我が国を隣国の手に売り渡す謀反だ!」


レオナルドの膝がガクガクと震え、彼は床に崩れ落ちそうになる。かつての傲慢な王子らしさは微塵もなく、ただ怯えた少年の姿があった。国王はさらに言葉を重ね、息子への断罪を詳細に突きつけた。


「貴様ら2人は、モーリスの死を皮切りに、人狼として暗躍した。ヴィクターがリリィの正体を暴こうとした時、彼を人狼の牙に委ねた。ダミアンが裏切りを疑い始めた時、彼を口封じのために殺した。リリィにだけ罪をかぶせるつもりか?お前はクリスティーネを陥れ、聖女の名を騙るスパイと手を組んだ。王子の誇りをかなぐり捨てたのは、レオナルド、お前自身だ。その罪は、王族として許されざるもの。貴様は我が息子である前に、国の裏切り者だ!」


レオナルドは顔を覆い、嗚咽を漏らす。

「父上…そんなつもりは…!」


しかし、国王は一瞥もくれず、警備兵に命じる。


「ロクに話もできんようだな。罪人たちを連れていけ!」


警備兵がリリィとレオナルドを捕らえる。リリィは抵抗するが、最後は力尽きたように崩れ落ちた。レオナルドは呆然と立ち尽くし、かつての傲慢な王子らしさは消えてしまっていた。

最後に見た2人の姿は、ゲームのヒロインと王子様とは思えないほど惨めだった。


クリスティーネは扇を閉じ、静かに微笑む。

――リリィ、レオナルド、さようなら。聖女の仮面も、王子の誇りも、私の手で粉々に砕いたわよ。

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