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悪役令嬢は人狼かしら?  作者: 塩麴とまと
ループ3:悪役令嬢の反撃
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聖女を断罪する日①

3度目のループで、やっと迎えた6月15日、月曜日。

ついにこのゲームの幕引きの時が来たわ。モーリス、ヴィクター、ダミアン、マチルダ。私の牙と策略で、障害は次々と排除してきた。残るは、リリィ。あの偽聖女を、聖女の仮面ごと地に叩き落とす。悪役令嬢クリスティーネの復讐劇のフィナーレよ!


朝、礼拝堂の裏庭でダミアンの死体が発見された。胸を貫かれた彼の姿に、生徒たちが悲鳴を上げる。その傍らは、彼のノートが落ちていた。


クリスティーネは扇を開き、遠巻きに観察する。


――ねえダミアン、「運命の人」だって、人狼の牙の前では無力だったわね。


人狼裁判で礼拝堂へと引率されていく間、野次馬の生徒たちのひそひそ話が続いていた。


「人狼、やっぱりあの偽聖女かしら?」

「他に誰がいる? モーリス様もヴィクター様も…!」

「怖いわ…仲の良かった殿方を2人も殺すなんて。」

「王子の隣の座が、そんなに欲しかったの?」


――リリィ、聞こえてる? あなたの聖女の仮面、剥がれ落ちてるわよ。


マチルダを切り捨て、自作自演の脅迫状で誤魔化したのに、誰もあなたを信じなくなった。完璧ね。


礼拝堂に生徒たちが集められ、人狼裁判が始まった。議長役の教師が重々しく告げる。


「ダミアン・フォン・グスタフの死を確認。諸君、今日中に人狼を処刑しなければ、来週夜に新たな犠牲者が出る。」


疑心暗鬼の空気が礼拝堂を満たす。私は扇で口元を隠し、静かに微笑む。

――さあ、フィナーレの開幕よ。


「俺は告発する! リリィ、お前が…人狼だ!」


開始早々、レオナルドが立ち上がり、リリィを指差す。彼の目は怒りに燃え、剣の柄に手がかかっている。婚約破棄を突きつけてきた男が、今さら正義感? 遅すぎるわよ、レオナルド。


「よくも…あいつらを! ヴィクターは俺の未来の部下で、ダミアンは大切な友達だったんだぞ!」


レオナルドがリリィの襟元に掴みかかる。彼女はハンカチを握りしめ、震える声で訴える。


「そんな…! 私は無実です! 皆を守るために、祈ってきたのに…!」


無駄だよ、リリィ。あなたの偽の涙、もう誰も信じない。


「友人すら殺したくせに、白々しい!」


エリザベスが吐き捨てる。彼女の声に、生徒たちの罵倒が雪崩のように続く。


「マチルダの裏切り、忘れてないぞ!」

「婚約者を奪った泥棒猫!」

「偽聖女! 人狼のくせに!」


私は扇をゆっくり振る。なんて美しい光景。ゲームのシナリオにもない、「罪人」としてのリリィの転落。乙女ゲーム「恋♡は人狼とともに」のヒロインが、こんな無様な結末を迎えるなんて、転生者として最高の復讐だった。

クリスティーネの最終糾弾

「では、リリィ・シュナイダー男爵令嬢、あなたの罪を暴きますわね。」


私は扇を顔の前に広げ、笑みのこぼれた口元を隠す。礼拝堂が静まり返り、皆の視線が私に集まる。


――さあ、フィナーレの主役は、この私。


「まずは、モーリス様殺害。彼はあなたの身分違いの恋をたしなめたのかしら?転校してきた時、王子を紹介したのは彼だったものね。それに腹を立てたあなたは、人狼としてモーリスを殺した。…随分と冷酷ですわ。」


「次に、あなたはダミアンと結託して、私とエリザベス様の悪評を流した。目的は一つ。レオナルド様の婚約者である私を陥れ、王子の隣の座を奪うため。…金の髪飾り、覚えてるかしら? 私に贈られるはずだったものを、あなたが横流しさせたのよね。レオナルド様から直接聞きましたわ。聖女ぶっても、髪飾りも男も盗むのね。」


生徒たちがざわつく。リリィの顔が真っ青になる。レオナルドの視線が泳ぐ。ふふ、効いてるわね。


「ヴィクター様の殺害は、正義感にあふれる彼が証拠を掴んだら、あなたが処刑されてしまうから?正義感って、時に自分を殺してしまう凶器になるのね。それに、近衛騎士としてひざまずいた時、ヴィクターはあなたたちの味方ではないってハッキリしたものね。」


「さらに、あなたは嘘の証人だったマチルダを、都合が悪くなると人狼に仕立てて処刑。恐ろしい女ですわ。嘘がバレた途端、共犯者を切り捨てるなんて。…そして、真実に気づいたダミアン様を殺害。もしかしたら、彼があなたの恋路の障害だったのかしら? ダミアン様、真剣だったみたいですわよ。エリザベスとの婚約破棄を画策するくらい、ね。」


「それに、噴水に突き落とされたなんて嘘まででっち上げた。おかげで私、婚約破棄されたわ。…ふふ、レオナルド様、覚えてて? あなた、私を疑って突き放したわよね。」


私はレオナルドに視線を投げる。彼は目を伏せ、唇を噛む。後悔しても、もう遅い。


「最後に、脅迫状の自作自演。聖女の仮面で人狼を隠そうとしたけど、もうバレバレよ、リリィ。」


生徒たちが頷き、罵倒が再び飛び交う。


「偽聖女!」

「人狼!」

「処刑しろ!」


リリィはハンカチを握りしめ、表情すら失っていた。いつもなら般若のように睨みつけるのに、今は無表情な抜け殻になっていた。


「偽聖女、リリィ・シュナイダー男爵令嬢を処刑することに賛成する者は、拍手を!」


私の声に、礼拝堂が割れんばかりの拍手で満たされる。満場一致。リリィの聖女の仮面は、粉々に砕かれていた。

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