レオナルドの復縁申し込み
6月10日、水曜日。
昼休み、喧騒を避けて図書館で予習をしていると、レオナルドが現れた。珍しく1人で、気まずそうな表情だ。
「クリスティーネ…話がある。」
彼の声は低く、いつもより弱気。
――あら、ほんの2日前に婚約破棄を突きつけた男の態度じゃないわね。
「何ですの? レオナルド様、聖女様と親睦を深めるお時間では?」
クリスティーネの皮肉に、彼は目を伏せる。
「昨日…髪飾りの件、悪かった。あれは、リリィが欲しがっただけで、俺はただ…。」
クリスティーネは何も言わず、眉をひそめた。
――うわ、最低。自分の悪さは棚に上げて、全部浮気相手に押し付けるパターンね。
「それに、婚約破棄の件も、言い過ぎだった。…復縁してくれ、クリスティーネ!」
――最低。婚約者がそれでも好きでいてくれてるって思い込んで、全部許してもらえると信じ切ってるパターン。お花畑も大概にして欲しいわ。
私は扇をパチンと閉じ、冷たく笑う。
「ふふ、レオナルド様、冗談がお上手ですわ。私を裏切り、リリィにデレデレだったあなたが、今さら? 婚約破棄はそのまま有効よ。次の人狼裁判で、私を処刑したければどうぞ。」
彼の顔が青ざめる。現実を知った顔だ。
――聖女に操られた男の末路って、無様ね。
「クリスティーネ、俺は…!」
「失礼しますわ。聖女様に慰めてもらいなさい。」
私は席を立ち、彼を置き去りにする。レオナルドの後悔? 遅すぎるわ。だが、彼の動揺は利用できる。リリィとの絆に亀裂を入れるチャンスよ。
突然、リリィが飛び込んできた。レオナルドを図書館まで追いかけてきたのだろうか。彼女の目は赤く、疲れ果てた様子。
――いい感じに追い詰められてるわ。
「悪役令嬢!人を偽物扱いして、今度はレオナルド様を奪うつもり!?」
リリィがヒステリックに叫んだ。
「あら、人聞きの悪い。奪ったのはリリィ、あなたじゃなくて?髪飾りが証明しているわよ。」
リリィとは違って抑えた声で核心をついた。
「ダミアン…。助けてよ。みんな誤解してるの…。」
少し遅れてやってきたダミアンに、しなだれかかる。
彼女の声は震え、涙がこぼれる。…いつもの演技ね。平常運転。
「誤解? 何が誤解だと言うのです?」
ダミアンが冷たく突き放し、リリィをじっと見つめている。眼鏡をクイっと上げて、鋭さが増したようだった。
「だって、おかしいことだらけだし…。」
リリィの言葉に呆れ、ダミアンはため息を漏らした。
「そもそも、私はあなたに聞かねばならないことが多すぎるようです。」
「酷い!ダミアン様、私の味方でしょ…?」
うるんだ瞳で、可憐に見つめた。腐ってもヒロイン。これは騙されてもおかしくない。
「味方?人狼ゲームは全員敵の騙しあいですよ。」
狡猾なダミアンが戻ってきた。でも、あまりにも遅すぎた。
「ところで、そこのお3方。いきなりやってきて騒ぎ立て、迷惑ですわ。ここは図書館ですのよ。」
クリスティーネは司書に指示し、3人を摘まみ出させた。




