金の髪飾り
6月9日、火曜日。
朝の食堂は、貴族子女たちのざわめきで賑わっていた。
「聖女様、今日も輝いていらっしゃいますわね。」
「でも、お友達を処刑させたとか。」
「まあ、怖い。」
「でも、人狼への切り札なんでしょ、聖女様。」
「真実が気になりますわ。」
人狼の新たな犠牲者が出て考察が入り乱れている中、聖女リリィは話題の中心だった。
リリィが聖女ぶった笑顔を振りまく中、彼女の金髪にキラリと光る髪飾りが目に入る。
――あの金の髪飾りね。本来、レオナルドが私、クリスティーネに贈るはずだったもの。リリィが横流ししてもらった、校則違反の証拠品ってヤツ。
婚約破棄された翌日に、見せつけるように証拠品。こんなチャンス、逃すはずがない。
私は優雅に立ち上がり、扇を広げて皆の視線を集める。
「リリィさん、素敵な髪飾りですわね。…でも、下級貴族のあなたには金は不釣り合いね。しかも、どこかで見た気がするわ。レオナルド様、覚えてらっしゃるかしら? 私に贈るはずだった金の髪飾り、そっくりですわ!」
私の声が食堂に響き、ざわめきがピタリと止まる。レオナルドがコーヒーカップをカチャリと置き、リリィの笑顔が一瞬凍る。今、動揺したわね、聖女様。
「クリスティーネ、それは…」
レオナルドが口ごもる中、リリィがハンカチを握りしめ、か細い声で答える。
「これは…レオナルド様が、私に…親睦の印として…」
「ふふ、親睦? 校則違反の品を、聖女が身に着けるなんて、意外ですわね。」
私は扇で口元を隠し、冷たく微笑む。生徒たちがざわつき始める。
「聖女様が校則違反?」
「レオナルド様、クリスティーネ様を裏切ったの?」
エリザベスが私の耳元で囁く。
「クリスティーネ様、完璧ですわ! リリィさん、完全に動揺してます!」
「ふふ、当然よ。この程度で終わりませんことよ。」
クリスティーネは笑いを隠せない。
「昨日婚約破棄を宣言したのって、そちらの不義を冤罪でごまかそうとしたのかしら?」
私は彼女に微笑み、次の手を考える。リリィの聖女イメージに傷をつけただけじゃ足りない。彼女の取り巻きたちの信頼を揺さぶり、孤立させるわ。




