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悪役令嬢は人狼かしら?  作者: 塩麴とまと
ループ3:悪役令嬢の反撃
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人狼裁判と偽りの事件①

6月8日月曜日。

朝、学園の静寂を切り裂く悲鳴が響いた。近衛騎士ヴィクターの死体が、訓練場の片隅で発見されたのだ。

腹部を深く刺され、血に染まった彼の姿は、モーリスの死を彷彿とさせる。人狼の牙が、また一人を葬った。


――って、私が人狼なんだけどね。


クリスティーネは扇を開き、騒然とする生徒たちを遠巻きに観察する。

「どっちが勝つか勝負だぜ!」なんて挑発、乗ってあげただけ感謝してほしいくらいだ。


――さて、ヴィクターの死がどう波紋を広げるかしら?

クリスティーネは高みの見物をしていた。


「ヴィクター様が…! どうして…!」


エリザベスが震えながらクリスティーネのそばに寄った。今は動揺してるわね。


「落ち着きましょう、エリザベス様。気を抜けば処刑コースにされるわよ。」

クリスティーネは微笑み、彼女の肩を軽く叩いた。


「なんでヴィクター様が死んだんだ…?だって、聖女リリィの浄化で…。」

ジョンは危険なものでも見るかのように、震えながらリリィを眺めている。


「あらあら、人狼の浄化なんて嘘だったのね、偽聖女様。」

ジョンの言葉に追撃するように、クリスティーネはリリィを標的にしていく。


ヴィクターが死んで、リリィやレオナルドはどう動く? リリィの聖女イメージにどう影響する? クリスティーネにとっては楽しみでしかなかった。


礼拝堂に生徒たちが集められ、人狼裁判が始まった。議長役の教師が重々しく告げる。

「ヴィクター・ハンバートの死を確認。諸君、今日中に人狼を処刑しなければ、次の犠牲者が出る。」


生徒たちの視線が交錯し、疑心暗鬼の空気が礼拝堂を満たす。クリスティーネは扇で口元を隠し、静かに観察していた。

――最初に仕掛けてくるのは、誰?


「クリスティーネ! お前、昨日リリィを噴水に突き落としただろう!」

レオナルドが立ち上がり、私を指差す。彼の目は怒りに燃え、剣の柄に手がかかっている。婚約者のくせに、恥ずかしいくらい聖女にメロメロだ。


「私、怖かったの…。突き落とされて…。」


リリィがハンカチで目を押さえ、か細い声で訴える。

――相変わらずの演技派ね。

しかし、今回は一味違った。彼女の隣に立つ、リリィの親友枠のマチルダが、証言を始めたのだ。


「私、見たんです! 昨日、中庭の噴水で、クリスティーネ様がリリィ様を突き落としたのを! リリィ様が『助けて』って叫んでるのに、冷たく笑って去ったんです!」


マチルダの声は震え、涙まで浮かべている。生徒たちがざわつき、私に疑惑の視線が集中する。よくできた芝居だ。リリィの差し金に違いない。

――ただのモブキャラだと思っていたマチルダが、こんなことするなんてね。


「クリスティーネ、もう我慢の限界だ!俺はお前との婚約を破棄する!お前が人狼だろ!」


レオナルドが剣を抜き、宣言した。生徒たちが息を吞む。

婚約破棄は、このゲームでクリスティーネを処刑可能にする重大なフラグ。

――随分と性急ね、レオナルド。でも、詰めが甘い。


「ふふ、レオナルド様、随分なご挨拶ですわね。後悔しても知りませんわよ?」

クリスティーネは扇をパチンと閉じ、優雅に立ち上がる。


「私を人狼と決めつけるなら、証拠をお示しください。マチルダの証言? たったそれだけ?」


クリスティーネの冷ややかな声に、マチルダがビクリと震える。リリィはハンカチを握りしめ、うつむく。

クリスティーネの反撃が始まった。


「昨日、日曜の昼、私は中庭になどいなかったわ。図書館にいたのよ。証拠? 入館記録と、司書の証言。…それに、ジョセフィーヌも一緒だったわよね?」


私はジョセフィーヌに視線を向ける。彼女は少し緊張した様子で頷く。


「はい…クリスティーネ様と図書館で話してました。司書の方も見てましたし、入館記録もあります。」


生徒たちがざわつく。教師が司書を呼び、記録を確認。クリスティーネの入館記録が、確かに日曜の昼に残っていた。


「それに、クリスティーネ様は、叫び声を聞いて外に飛び出そうとする私を止めようとしてくださいました。疑われたら危ないからって。こんな優しい方を人狼扱いなんて、あまりにも酷いです!」


大人しいだけだと思っていたジョセフィーヌ。でも、案外熱いところもあったのね。


「ありがとう、ジョセフィーヌさん。」


クリスティーネは、思わず彼女の手を取った。


「マチルダさん、嘘をつくのは感心しないわ。リリィを突き落としたのが私だなんて、誰に吹き込まれたの?」


クリスティーネはマチルダに微笑みかける。彼女は目を逸らし、リリィをチラリと見る。動揺している。リリィの顔も、微かに強張っていた。


――バレバレよ、聖女様。


「それに、ヴィクター様の死についても、面白い事実があるわ。」


扇を開き、ゆっくりと続ける。


「ダミアン様が、私とエリザベス様を陥れるために、学園中に悪評を流してたのよ。エリザベス様の婚約破棄を企て、私を人狼に仕立て上げるためにね。…エリザベス、証言してくださる?」


エリザベスが立ち上がり、震える声で語る。

「ダミアン様が…私の悪評を広めて、婚約破棄を画策してました。クリスティーネ様も同じように標的に…!」


生徒たちがどよめく。ダミアンの暗躍が明るみに出た瞬間、疑惑の矛先が揺らぐ。


「ダミアン様は人狼を隠すために、私たちを犠牲にしようとしたのかもしれないわ。…でも、誰が彼を操ってたのかしら? 例えば、聖女ぶって皆を騙す誰か?」


私はリリィに視線を投げる。彼女はハンカチを握りしめ、うつむく。追い詰められてるわね。マチルダの顔は真っ青だ。


――あと、ひと押し。


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