自作自演の噴水事件
6月7日、日曜日。
「聖女さま、頑張ってくださいー!」
日曜の昼、中庭で黄色い歓声が聞こえた。
台風、じゃなかった。聖女が近づいているサインだ。
疑惑はあるが、まだまだ聖女の力は信じられていて、ファンも多い。
ここは、学園の中庭。近くには噴水もある。ゲームをプレイしていた時、悪役令嬢のクリスティーネに何度突き落とされたか分からない因縁の場所だ。しかも、それが起こるのは決まって最初の日曜日、つまり今日。
クリスティーネは、急いで図書館に引っ込んで、司書立ち合いの下入館記録に記帳をした。
――ここからなら、噴水がよく見えるわ。
クリスティーネは、窓際の自習スペースに席を取った。授業の予習に見せかけるため、教科書とノートを広げる。
――とりあえず羽ペンも出しておくべきかしら。
「先日は助けていただき、ありがとうございました。」
机に色々と準備をしていたら、話しかけてきたのはジョセフィーヌ。彼女の中では、人狼裁判で殺されかけたのを助けた恩人になっているようだ。
「お互い、大変ですわね。」
ジョセフィーヌの隣で教科書を開いたその時、悲鳴が聞こえた。
「事件かしら?」
ジョセフィーヌが飛び出そうとするのを、クリスティーネは制す。
「下手に動くと疑われるわよ。窓から見ていなさい。」
クリスティーネもカーテンに隠れ、外の様子を伺っていた。外を見ると、噴水に、ずぶぬれになったリリィが見えた。
「まあ…可哀相に。どなたかに突き落とされたんでしょうか。」
ジョセフィーヌは驚きながらも、聖女に同情していた。
リリィは何かを叫びながら泣いていたが、外の声まではさすがに聞こえない。
――ああ、絶対に自作自演ね。だって、悪役令嬢の私がここにいるんだから。
入館記録も残っていて、証人には司書とジョセフィーヌ。鉄壁の守りだ。
「リリィさん、一体誰に突き落とされたんでしょう。ああ、怖い。」
ジョセフィーヌは怯えていた。人狼の襲撃があったばかりなのだから、きっとこれが普通の反応だろう。
「あなたが無事でよかったわ。」
クリスティーネは親切そうな言葉をかけた。
ほとぼりが冷めた頃、クリスティーネは図書館から退出した。
「クリスティーネ様、ありがとうございました。あのまま飛び出していったら、私が人狼だってことにされていたかもしれません。」
帰る時、ジョセフィーヌから何度も頭を下げられた。
夕方、エリザベスが新たな情報を。
「リリィ様、濡れた服を着替える前、誰かとこっそり話していたそうですわ。」
詳しく話を聞いても、相手が誰なのかははっきりとしなかったのが残念だったが、共謀するものが居ることだけはハッキリした。




