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悪役令嬢は人狼かしら?  作者: 塩麴とまと
ループ3:悪役令嬢の反撃
14/34

噂の聖女様

6月2日、火曜日。

廊下を歩く私に、貴族子女たちの視線が刺さる。悪役令嬢と恋愛脳の御一行、レオナルド、ヴィクター、ダミアンとすれ違った。その瞬間、ダミアンの鋭い視線が突き刺さる。

やっぱり私を警戒してるのね。


「ごきげんよう、リリィさん。」


クリスティーネはにこやかに振る舞うが、当然のようにリリィは無視。レオナルドも私を無視。前回ループのレオナルドの気さくな態度はどこへ行ったのかしら。まあ、いいわ。


「クリスティーネの平和解決作戦と、俺の戦闘モード、どっちが勝つか勝負だぜ!」


緊張感を全く感じないのか、ヴィクターが無邪気に絡んできた。裏表のないバカ正直さは嫌いじゃないけど、前回殺された恨みは忘れていない。


そこに居た、名前もない女子生徒の一人が、クリスティーネに囁いた。


「聖女リリィ様は人狼を浄化できるんですって! モーリス様の死で噂になってますわ!」


――浄化? そんな能力、ゲームに存在しないわ。せいぜい好感度で攻略キャラに守られるだけの存在でしょ。リリィの祈りパフォーマンスが、勝手に期待を膨らませてるだけ。


「ふふ、リリィさんが浄化してくれるなら、もう惨劇は起きないわね!」

私はリリィに微笑みかけ、彼女が動揺するのを眺める。



――ふふ…もっと困ればいい。

私は、その動揺を煽って大きくすればいいだけ。


けれど、リリィはニコニコと笑顔で取り繕った。


「どこまで出来るか分からないけど…リリィ、浄化を頑張っちゃいまぁーす!」


アイドル張りの笑顔でそう宣言するリリィに、クリスティーネの方が怯える番だった。

――本物の悪女って、ああいうのを言うのね。



昼休みも終わるころ、リリィが悲鳴を上げて教室に駆け込んできた。


「誰か…! 脅迫状が…!」


手紙には、こう書かれていた。


「人狼が次に殺すのは、リリィ、お前だ。」


生徒たちがざわつき、リリィは泣き崩れる。レオナルドが彼女を支えていた。


「怖いわ!犯人はきっとクリスティーネ様よ!」

リリィが泣きながら掲げた脅迫状は、筆跡も、便箋もリリィのもの。ゲーム内でも見覚えのあるものだった。


――自作自演ね。くだらない。


「あら、この便箋、見覚えがありますわ。リリィさん、あなたのものではなくて?それに、ノートを見れば筆跡も分かるでしょう?」

クリスティーネは自分のノートを差し出した。

「ほら、この文字。私の身は潔白ですわ。リリィさんこそ、ノートを見せてくださらない?」

クラスメートたちが、クリスティーネのノートを覗き込む。

あまりにも稚拙な自作自演に、クリスティーネが勝利を確信した、その時。


「ふん!こんなもの!」

レオナルドが、クリスティーネのノートを怒り任せにゴミ箱に捨てた。

「聖女リリィが無実の罪を着せたというのか!そんな言い訳は通用しない!」

リリィはレオナルドの影に隠れて、せせら笑っていた。


「なんて恐ろしい!見るのも不快だ!」

ダミアンは証拠の脅迫状を破り捨ててしまった。紙片が床に散らばり、証拠は儚く消えた。これで証拠はなくなり、クリスティーネの潔白が証明できなくなった。ダミアンは勝利を確信したのか、眼鏡をクイっと上げた。


ヴィクターが叫ぶ。

「お前はリリィを泣かせた! 絶対に許さない!」

獣のような怒鳴り声が、クリスティーネが悪だという雰囲気を教室に広げる。


「クリスティーネ様、犯人はあなただ!」

頭脳派のダミアンが言うと、それだけで説得力がある。教室がどよめいた。


私は扇を握りしめ、胸が締め付けられる。完全に窮地に陥った。レオナルド、ヴィクター、ダミアン。あの3人がリリィの自作自演に加担している。リリィの策略は、クラスメイトを扇動し、私を孤立させる一手だ。生徒たちの目は敵意に変わる。エリザベスでさえ、怯えた視線を私に向けていた。


「なあ、公女様。ノートですよ。」

放課後の廊下。振り返ると、同じクラスのモブキャラ、ボブが立っていた。

彼も誰かの差し金だろうか。

「ありがとう。」

ノートを手渡され、クリスティーネはお礼を言った。

「俺は信じましたよ。だって、このノート。字が違い過ぎるでしょ。」


「俺、ヴィクターが嫌いなんです。いつも偉そうで。微力でも力になりますよ。」

どうやら、味方らしい。

「ねえ、私に関する噂があったら、教えてくれない?」

悪役令嬢らしく、クリスティーネは邪悪に微笑んだ。

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