狂ったコンパス
とある夏祭りの帰り道、
隣にいたはずの彼女がいない——。
そんな“よくある日常”のなかで、
静かに揺れた、ひとつの心を描きました。
夏祭りの帰り道、彼女はいなくなった。
彼女にはGPSが付いている。
道を間違うはずは、、、ない。
来た道や通り道を、必死に探す僕。
やっと見つけた彼女は、少し疲れた顔をしていた。
「人混みで……GPSが繋がりにくくて……」
「大丈夫。僕が、君のコンパスになるから」
「見つけてくれるって………信じてた……」
彼女の手は、少しだけ、震えていた。
帰り道、僕は彼女の手をそっと繋いで引き寄せた。
その時、花火が静かに咲いた。
私もよく迷子になります。
電波が届かなくても、
誰かが見つけてくれるって信じられる日は、
きっと、ちょっとだけ特別です。
-今日は通勤電車で座れました-