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王に勝手に召喚されて神から成長系チート能力を貰ったのに追放されたので辺境の村を発展させに行きます。  作者: アフリカン・サワープラム


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安息の地へ冒険を ① 歩き始め

 正門の前の道に軌道修正して歩いていると、さっきまで夕日だったから、すぐに周りが暗くなった。


「暗いから、もう今日はあそこの大きな木で野宿をしよう」


 周りには足首ほどの草しかないのに不自然にあるその木を指さしてそう言った。


(『解析鑑定』しても、普通の木だったしな)


 ミラルも相当疲れたのか、ゆっくりと頷く。


 木のふもとまで着くと、いい感じに根っこが伸びており、僕達は向かい合いながら座った。


「この2日間、色々なことがあったな。」


「そうですね…」


 ミラルはウトウトとふらつき始めたので、僕は、その横に来て白銀の頭を肩に倒す。


 少しの間、見たことない星座がいっぱいある星空を見ていると、僕もだんだん眠くなり、いつの間にか眠ってしまった。




 目を覚ますと、まだミラルは寝ていた。


「寝顔も可愛いなんて、羨ましいな」


 微笑みながら見ていると、ミラルも起き始めたようで、目を腕でゴシゴシしながらゆっくり起き上がった。

 そして、自分の方を見るとなにやら驚いた顔で聞いてきた。


「もしかして、ユウキさんの隣で寝ていましたか?」


「ああ、そうだけど、それがどうした?」


 僕の返しを聞くと、パッと顔を赤くししゃがみこむ。そんなに嫌だったのかな?


 ミラルは、落ち着くとこちらを向き、にっこりと太陽のように明るい顔をして口を開く


「昨日はすぐ寝ましたが、今日から本格的に私達の村を目指すんですね!」


 鼻息を荒くしている女の子を落ち着かせ、疑問を口にする。


「だいたい何日ぐらいで着くんだ?」


 ミラルは、手を顎につけながら、うーんと考える。


「歩きで1週間弱ってところですね」


「じゃあ、早速向かうか」


「望むところです!」


 僕達は、ゆっくりと歩き始める。



 1日目



 平原がずっと続き、涼しい風がずっと吹き続ける日だった。


 僕は、『ギフトガチャ』をして、ウルトラレアの異能力、『料理人シェフの極意』をゲットした。


 能力の説明には、『材料と作りたいという思いがあれば、自分の思い通りの料理が作られる』と書かれていた。しかも追加で、『作った料理には、ランダムのステータスを一定時間上げる』と書かれている。


 ミラルが『瞬間加速・神』で、昼食の具材になる白色と黄色の毛を持つスタンラビットを狩ってきた。


 僕は、近くの草や枝で火を起こし、木の板と小さな棒をミラルの水魔法で軽く洗い流す。


 実際に初めて魔法を見るが、意外と簡単に見えた。


「水よ、求める我の元に来い…」


 ミラルがそう言うと、てのひらから水色の半径10cmぐらいの魔法陣が出てきて、その中心に水の玉が現れ、発射されるという仕組みだ。ふむふむ、勉強になった。


 でも、ミラルが言うには、全身で魔力を感じないといけないらしく、魔力総量がない僕には、やっぱり無理そうだった。


 木の板に、スタンラビットを置き、異能力、『料理人の極意』を発動させると、手が勝手に動き、ナイフもなしにみるみるうちに下処理がされる。


 材料がないから、ここからは自分達だけでやる。


 綺麗な肉だけになった兎肉を、木の串に刺して、直火で焼く。近くにあった安全そうなキノコも『解析鑑定』で調べてから串で刺して直火でやく。


「調味料をどうするかだな…、なぁミラル、塩持ってない?」


「え?、塩なんて、持っていなくてもそこら辺で手に入りますよ」


 そう言うと、ミラルは近くの木のふもとの土を掘ると、1つの雫のような透き通った掌サイズのものを持ってきた。


「これは、1つの木に少ししかなくて、あまり好まれていないのですが、今はちょうどいいじゃないですか」


『解析鑑定』をすると『木の涙』と書かれている。少し木が可哀想に見えた瞬間だった。


 木の涙を近くの石で削り、その粉を肉とキノコにかけた。


「もうできたんじゃないですか?」


 口からヨダレが垂れてきそうなミラルを制する。


「まだ肉は生だ。先にできたキノコを食べよう」


 僕は、そう言って2本あるうち1本をミラルに渡した。


「塩の味が効いてて美味いです!」


「確かにそうだな、そこら辺で取ったのに風味もしっかりしている」


 串には3種類キノコが刺さっていた。虹色と茶色と赤色だった。


 その見た目から毒キノコを感じさせる虹色のキノコが、1番美味しかった。普通の意味でね。


 何かを思い出すかのようにステータスを開くと、説明の通り、魔力回復の詳細ステータスの回復量が4から7になっていた。


 試しに、目の前の女の子のことも初めて『解析鑑定』すると、あることに気づいた。


「ミラルは、僕があげた『瞬間加速・神』以外に異能力を持っていないのか?」


 そう言うと、しゅんと猫耳をたらし、悲しそうに女の子は言った。


「亜人は、全員が必ず異能力待ってる訳じゃなくて、持つ者と持たざる者で別れて、持たざる者は人間から忌み嫌われるんです……」


 僕は、話を聞くと直ぐに謝った。


「ごめん、失礼なことを聞いた」


「いいんです。もう慣れましたから…」


 気まずく静かになり、焚き火の音だけが聞こえる。


「ほ、ほら、肉が焼けたぞ」


「ありがとうございます…これも、肉の汁が出ていてとても美味しいですね!」


 元気を取り戻してきたのか、だんだん声が明るくなっていく。


「ああ、良かった。」


 ひとまず一安心して、僕達は無言で食べ続ける。



 食べ終わったら、焚き火の火を消して、早速歩き出す。


「もう満腹ですね。」


「そうだな、また食べられるといいな、スタンラビット」


 道中は、キラーベアとクリカボアが襲ってきたが、傷一つをおわずに簡単に倒せた。


「こいつら、名前と体の大きさの割には弱くないか?頭を1回で殴ったら倒れたぞ」


「でも、美味しいお肉が手軽に手に入るから好きな人は多いんですよ、特にクリカボアは」


 僕は、へぇ〜と言いながら、晩御飯の分だけクリカボアを『料理人の極意』で綺麗な肉にして、カバンに入れた。


 さらに、ゲザーデイルという鹿の家族が道を横切って走るところを見て、2人でほっこりもした。


「家族っていいね、僕はあまり仲良くなかったけど」


「私も、家族は幼い時に姉以外死んでしまいました」


 本当に、呑気に走れるゲザーデイルが羨ましいよ。


 そんなこんなで1日目も晩御飯の時間になった。


「早速クリカボアの肉を使うから、木の枝とか、持ってきてくれるか」


「分かりました。じゃあ『瞬間加速・神』を発動させますね」


 ミラルは、もう異能力になれたようで、軽々と発動させる。


「ありがたいよ。ミラルみたいに動けないけど。僕もこの世界に対応出来るからね、利用させてもらう」


 僕はそう言うと、近くの薄い石と四角い石で鉄板の形を作り、持ってきてくれた枝で火を起こす準備をする。


「今回は、猪肉でステーキをやるぞ」


「わーい、早速焼きましょう」


 火を起こし、石に熱が伝わるのを待ち、先にうえにクリカボアの油の塊を置いておく、肉が石にこべりつかないためだ。


 油が溶け切ると、肉を焼き始める。


 ジュワ〜


 焼き始めた瞬間、肉の香ばしさが周りに溢れ出し、僕たちの鼻を刺激してくる。


「美味しそうな匂いですねぇ」


 僕も無言で頷く。


 近くにあった山菜もついでに焼いてみる。


 肉の厚さは2cmぐらい、長さは15cmだから、本当に贅沢に見える。これが、異世界特有のいい所ってやつだ。食材が大きい!


 片面が焼き終え、ひっくり返す。


「表面が秋の木の葉のような色をしていて綺麗で美味しそうです。」


 冒険途中の食べ物が毎回こうだとモチベーションが爆上がりする。


 やき終えた肉を異能力『料理人の極意』で食べやすい大きさに切ってから、木の串で刺す。


「「いただきます!」」


 2人同時に熱々の肉を頬張ると、ほくほくとしながら奥歯で噛む。


 噛みごたえのある肉から、結構な量の肉汁が出てきてとても美味しかった。


 僕たちは、お互いの目を見て笑いあった。


 白米が食べたい…


 そういえば、『料理人の極意』のミッションが、いつの間にか終わっていて、獲得していた。


 食べ終わり、あと片付けが終了すると 、寝る準備を始めた。


「木の葉を集めて、その上で背中合わせで寝るでいいか?」


「わかりました。周りを警戒しながら寝ますね」


「あんまり集中しすぎると、疲れが取れないから、僕の異能力『経験複製体』を発動させとくからゆっくり休んで」


「え、ユウキさんって異能力は『瞬間加速・神』だけじゃないんですか?」


「説明してなかったか、明日ゆっくり話すよ、だから、今はゆっくり寝て」


「わかりました。おやすみなさい」


「おやすみ」


 この子には話していい気がするから、明日、冒険2日目にゆっくり話そう。

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