追放されるまであと1週間の準備期間 ② 少女との出会い
「すごいなぁ」
どんどん増えていく、頭脳の詳細ステータスにある観察力を眺めながら、祐希隼人は座って考えるのだった。
他のステータスも確認してみるか……
一通り全て見てみると、身体能力の詳細ステータスで、脚力が上がっていることに気付いた。
(さっきまで、脚力は7だったのに、今は11なってる。詳細ステータスの方は、最大値がないのか?)
ゆっくり上がる脚力の数値を見ていたら、いつの間にか、自分の分身である『経験複製体』が戻ってきていた。
その腕にあったものが渡され、解析鑑定すると、ローリカバリ草が必要以上、ハイリカバリ草というのもあった。
(ローとハイで3倍ぐらい回復力が違うな)
へぇ〜、と関心しつつ、『経験複製体』が自分の欲しいもの以上のものを持ってきたことに驚いた。
(つまり、『経験複製体』は、自分の代わりに動いてくれて、経験値を得てくれるのか)
さすがレア度ミシック、と驚愕しながら創造神へ感謝の気持ちが高まった。
早速冒険者ギルドに早く戻ろうとして走ると、いつもより何倍も速くなっていた。
脚力が上がったおかげだと思いながら、アスリート並の速さで平原を駆け抜けて、ギルドに向かっていった。
ギルドの前まで着いたものの、ものすごく疲れた。
確かに脚力は上がったはずだけど、とステータスを確認すると持久力の詳細ステータスで、基礎体力の部分が少ししか上がっていないことに気づいた。
(ステータスによって上がる速度が違うのかな?)
それと、理由はもう1つあった。
『経験複製体』の説明の最後に書いてあった唯一の弱点的な文章でこう書かれていた。
『経験複製体を使用している時は、本体に疲労が肩代わりされる。』
持久力の詳細ステータスの基礎体力があるから、それを上げれば解決すると考え、このことを後にした。
手に草がいっぱいなので肩で扉を開けると、カウンターにドサッと置いて、女性店員に鑑定をお願いした。
「1、2、3、4…これって……ハイリカバリ草じゃないですか!ローリカバリ草でさえ余り見つからないのに、これは初心者には絶対見つからないと言われているんですよ!」
また注目が集まる。早く終わらせなければ。
「解析鑑定があるのですぐ見つかりましたよ」
『経験複製体』のことは黙る。
「それはそうですけど、でも、良かったですね。ハイリカバリ草は、その希少さゆえにEランクが見つけたらすぐランクアップするんですよ。普通は1週間から1ヶ月かかるのに」
これまた幸運だな。
「へぇ〜そうなんですね、Dランクでは何が出来るんですか?」
「基本的には、弱い魔物の退治か討伐など、人探しなんてのもありますよ。報酬も、銀貨などが増えます。頑張ってください。」
店員は、会話をしながら鉄のカードを取り出した。
「こちらがDランクのカードになります。では、水晶に手を」
僕は、本日2回目の、登録を完了させて宿に戻った。
宿のベットに座った僕は、ステータスを広げて、『経験複製体』を使用してから、試しに腕立てをさせてみた。
ステータスの身体能力の腕力を見るが、8からなかなか上がらない。
待っている間にミッションを確認すると、しっかり横線が全て黄色になっていて獲得が完了していた。
新しく説明と黄色の四角いボタンがある。
「ギフト?」
説明欄にはこう書かれていた。
『ミッションを完了したものは、自分で持つか、誰かに譲渡ができます』
(つまり、チート級の能力をいろんな人に渡せるってことだよね。チートじゃない?)
驚きながらステータス値を覗くと、腕力が1増えていた。
(10分から20分ぐらいで1つ上がるのか)
『経験複製体』には、そのまま筋トレさせて、僕は、1階へ料理を銀貨2枚を持って頼みに行った。
「お願いします!」
なにやら受付の方が騒がしい
「ダメだ帰りな、客の情報を伝える訳にはいかねぇよ」
カウンターの女店員と、ローブを被った少女らしき人がいた。
「そこをなんとか、私より少し大きいお兄さんを呼んでください」
(ここには僕以外は泊まっていないから、多分僕のことだよな)
そう考えると、僕は少女に話しかける
「もしかして、僕のことをお探しかい?」
少女は、僕の顔を見ると目をキラキラ輝かせ、大きく何度も頷く
「あなたのこと、市場の時から探してたの、それで……」
僕は、大事そうな話なので一旦止めて、部屋で話そうと提案する。
「大事な話だったら、部屋で話さない?」
少女は頷き、僕の後ろについて行った。
もちろん、料理も頼んだ。
部屋へ入ると、少女はボロボロのフードを外して、もうベットに座っている僕に向き合って、お辞儀をした。
「私の名前は、ミロル・リーリラルと言います。皆からは、ミラルと呼ばれています。あなたのお名前は?」
ローブを外した少女は、まさかの獣人だった。
ボロボロのメイド服にアザだらけの白い肌、ぼさぼさの髪は、月の如く白銀の色を放っていて、猫耳がものすごく目立つ、腰の辺りは少し膨らんでいて、多分しっぽがあるのだろう。
「僕の名前は……ユウキって言うんだ。とりあえず、こっちに来て座ってよ」
服で分かりずらいが、やせ細っているミラルという少女は小さく頷き、僕の横に座った。
(女性には、あまり耐性がないけどこの子なら大丈夫そうだ。)
「それで、僕になんのよう?」
「はい、実は、私はこの街に攫われた村の住人と、たったひとりの家族を探しに来ました。ですが、ある日私も攫われ、この足枷をはめられて、奴隷になり、メイドとして過酷な労働環境のなか働かされました」
僕は、静かに相槌をする
「一昨日逃げ出し、何も食べずに街をさまよっていたら、市場で金貨を使うあなたを見つけました。私は、奴隷商店の所に家族と村人がいると考え、お金を持っているあなたを追いかけました」
「そして、今、あなたにお願いしたいのです。」
僕は、目をつぶって聞いた。
「なんでもしますから、家族と村人を買ってください」
ミラルの目には、もう涙がこぼれそうだった。
ノックがなる。店員が料理を持ってきた。ウッドバード肉のサンドイッチだ。
僕は、静かに俯く少女にそれを差し出す。
「一昨日から何も食べてないんでしょ、良かったらこれを食べない?」
少女は何か言いたげな顔をして、それを受け取る。手に取って1口、また1口と食べていくと、目に溜まっていた涙がこぼれてきた。
僕はお人好しではない、でも、目の前で泣く少女を見捨てられない。
「それとさっきの話だけど、いいよ、僕にできるのなら」
そう言うと、少女…ミロル・リーリラルは、料理を傍におき、僕に抱きつき泣き出した。
僕は、一瞬戸惑ったが、落ち着き、綺麗な白銀の頭を撫でた。
そんな時にも、『経験複製体』は筋トレをしていた。
落ち着き、料理をがぶがふと食べているミラルと、今後の予定を立てる
「僕が持っている金貨は全部で9枚、あと、さっきのギルドで貰ったのを追加すると、銀貨が69枚と、銅貨が7枚ある。これで足りるか?」
無言で頷くのを見て、さらに聞く
「奴隷商店の場所は分かるか?」
食べる動きが止まる。分からなかったのか。
「じゃあまず明日、市場に行って、君の服と、情報屋に場所の情報を買いに行こう。」
ミラルは、君の服、に反応して猫耳を立てる。
「……いいんですか?」
愚問だな
「これから一緒に探すんだ。僕は君にボロボロじゃない服を着て欲しいんだ。」
ミラルは、とても嬉しそうにしていたが、何かを思い出したのか、僕に足首を見せる
「この足枷を外せますか?」
解析鑑定をしてみよう。
『解析結果 名称 魔を抑える足枷 説明 装着者の魔力を最低限まで抑える 解除しますか?Yes No』
「できるみたいだが、外すか?」
「少し待ってください」
ミラルはそう言うと、ローブを持ち、部屋の端でメイド服を脱ぎ始める。
「見ないでください…」
僕は焦って思いっきり後ろをむく
「ごめん!」
彼女は、すぐに着替え終わったようで、ローブを着てこちらに来る。
「あの、お願いします!」
僕は、急に言われてびっくりしたが、すぐに画面のYesを押した。
「じゃあいくよ」
カランッ
足枷が落ちたと思ったら、ミラルがどんどん大きくなる。僕と同い年かそれ以上に。
「あ、え?ミラル…さん?」
僕が戸惑っていると、ミラルさんは説明を始めた。
「私達獣人は、このような魔力を抑える道具を付けられると、子供のようになり、弱体化してしまうのです。」
美しさに磨きがかかり、ローブでよく分からないが先程の貧相な体つきから、毎日何を食べたらこうなるのか分からないほど、豊満な女性になっていた。
「ジロジロと見ないでください…」
恥ずかしがっているミラルさんを見ると、さっきのミラルと同じ雰囲気が漂ってきて、僕は安心した。
2日目の夜、僕は『経験複製体』を解除して、机の上でステータスを確認する。
(腕力が28になっている。そして、ものすっごい疲れた。)
今日も色々あったなと、ベットでもう寝ているフードを着たミラルを微笑みながら見る。そして、決意する。
(明日は必ず成し遂げてみせる。捕まっている村人のため、そして、この女の子のために!)
熱くなりまくった心を冷やさずに、僕は机で寝た。




