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王に勝手に召喚されて神から成長系チート能力を貰ったのに追放されたので辺境の村を発展させに行きます。  作者: アフリカン・サワープラム


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村の成長に天井なし ② 今後の方針

「すごいです!」


 驚くミルファさん。それもそうか、この世界にない植物を生成しているから。


 何も植えてなかった畑の端に地面から支柱に沿って伸びているつるで大きく切り込みのある葉っぱ、光沢のある緑で細長い円筒形の実がぶら下がっている。その隣にはひざ下ぐらいの高さの草のように見えるバラ科の植物がある。ギザギザの小葉が三枚セットになっていて、その先には食欲をそそられる赤く可愛らしい小さな実がある。


 そしてそのさらに隣を見上げてみると、


「やってみたが全体はこんなに大きかったんだな」


 濃い緑で楕円形の光沢のある葉が生い茂った3ⅿぐらいの高さの木がある。茎や枝にはとげがあり、太陽のような橙色の果皮をしている丸い果実がある。


「どれも美味しそうですね」


 どれから食べようか迷っているミラル。


 もうお分かりだと思うが、植物は順にきゅうり、イチゴ、オレンジという似ても似つかないものを選んだ。


「どれからでもいいがここで食べるより、収穫して家で食べよう」


 ファラルさんに持ってきてもらった籠に果実を一つ、また一つと痛まないように丁寧に入れていく。


 自分でとっさに思い付いたものを作ったが、なかなかにセンスが悪いと思っている。確かにどれも美味しいが、一緒に食べるとしたら合わない気がする。


 まぁ、いいかと思いつつ収穫する手を動かす。


「こんなものでいいか、まだあるみたいだけど。ミラル達も手伝ってくれてありがとう!」


「こんなのお安い御用ですぞ」


 そういえば、とクロノ。何か思いついた顔で向かってくる。


「勇者様よ。この摩訶不思議な食べ物を商人どもに売るのはどうじゃ?」


 ほうほう、そんなこともできるのか。


「いい案だが、つてがなくないか?」


 そう疑問を口にしたが余裕な様子。


「これから見つければいいじゃろ」


 ほんとにお気楽だな、この伝説さんは。


 僕は、ははっ、と苦笑いをしてからみんなを連れて食堂に向かう。家から変更した理由は特にない。


 食堂のドアを開けると犬耳のメイド服……獣人のドラフさんが出迎えてくれた。超美味しい料理を作ってくれる人だ。


「ああ、ドラフさんちょうどよかった。能力で新しい食べ物を作ってみたんだが、料理人のあなたが一番に食べてもらえませんか?感想が聞きたい」


 最初は疑問そうな顔をしていたドラフさんでしたが、ものを見せると今度は驚きの表情をしていた。


「いいんですか?そんなおいしそうなもの」


 この世界とはまた少し違った小さめな植物を手渡すとすぐに厨房に入って行った。


 そのすきに僕たちは席に座る。


「なあ、あの子ってこの間の任命式に僕に質問してきた子だよな」


 気付かれないように小さな声でミラルに聞いてみる。


「そうですね。あっていると思います」


 わかった。といい立ち上がりその子の方へ向かう。


「村長さんですか、どんな御用ですか」


 なんかやっぱりこの子落ち着きすぎじゃない、返答も大人っぽいし。


「あ、あのさ、唯一知っている人間の君に聞きたいんだけど、商人にはどうやって会えばいいかい」


 ファラルさんに聞いてもよかったけど、この子に聞いた方が手っ取り早い気がする。


「……つまり、売りたいものがあるってことですね。先に見させてください」


 この子のペースに飲み込まれそう。見た目はどこにもいそうな村人Aみたいな女の子なのに……


「わかった。こっちに来て」


 売れるかわかるならやるべきかな、減るもんじゃないし。


 机に一つ少し高めの椅子を追加しておく。


「じゃあ、少し待っていてくれ、多分そろそろ来るから」


 僕は、彼女の向かい側に座る感じでいる。


「おっと、名前を聞いてなかったね。君の名は?」


「忘れていましたね。私の名前は、グラムドル・アリス。人間の上級貴族を追い出されたこの村の人間のリーダーです」


 ええ!いろいろ驚愕なんだけど。貴族?リーダー?この子が?確かに立ち振る舞いは上品だけど……


「あれ、伝えてませんでしたっけ」


「伝えてないよ!てか、案内の時に省いたでしょ!」


 あはは、そうでしたっけ?ととぼけるファラル。いや、本当に聞いてないからな。


 オホン、と場を正すアリス。


「私のことはアリスと呼び捨てで構いません。これからどうぞよろしくお願いします」


 普通の人間なのに所作が綺麗……こっちの伝説のドラゴンは食べ物が気になりすぎてよだれ垂らそうとしているぞ。親の顔が見てみたい。


 そんな他愛もない会話をしていたら、ドラフさんが三つの皿を持ちながら来た。右手と左手と頭だ。


「とりあえず切ってきました!これ本当に凄いですね、匂いとか色とか!」


 とってもな笑顔でこちらに向かってくる。皿は今にも落ちそうだけど……


「わかったから落ち着いて、頭のそれ持つから」


 皿には美しく盛られた食材たち、赤橙緑で色合いは完璧。


 皆で一斉に手に取り口に放り込む。


 その瞬間、風で少し揺れる窓の音以外は何も聞こえなくなった。


「「…………」」


 だんだんと噛む音が聞こえ始め、次第に歓声が聞こえてくる。


「……シャリッとしていて今まで食べたこともない触感……」


「……まるで小さい実に濃縮されたような濃い自然の甘味。とても興味深い……」


「……甘くて酸っぱいだと、こんなの我の人生で初めてじゃ……」


「……明るいオレンジ色の小さな果肉がいっぱいあるのが、少し弾力があって美味しい……」


 順にファラル、ミルファ、クロノ、ミラルという感じだ。ちなみに僕はもう食べたことがあるから懐かしいな程度だ。


 ドラフさんはもう食べたらしい、少し遅かった理由も感激していたからというよくわからん理由だった。


 皆泣いてる。泣くほどうまいのか……?


 そんな騒がしい中まだ無言な人が一人いた。そう、アリスさんだ。


「だ、大丈夫ですか?」


 イチゴを右手に下を向いている。髪で顔がよく分からない


「うわっ!」


 と思ったら、いきなりこちらを向いてきた。その勢いに変な声が出たし……


「これは売れます。絶対に売れます!いや売らなきゃ損です!」


 さっきのお嬢様の雰囲気が消し飛び、商売人の如く熱意が感じられる。


「合格でいいんだな。それで、当てはあるのか?」


 よし、今のところ順調かな。


「もちろんありませんよ」


 え?


「だからありませんって」


 もう一度言わなくてもわかるよ……


「でもそれならどうするのさ、このままじゃ、この食べ物の行き場は僕らの胃袋しかないよ」


 それなら、とミルファ。


「商人に無理にでも気づかせるようにしたらどうですか」


 どういうこと?


「この村を成長させて、無視できなくなるようにしたらということですよ」


 ほうほう、と頷いておく。


「わかった。なんだかんだで今後の方針が決まったな、ちなみに近くの国は何かあるか?」


 それなら、とミラル


「確か、私達が来たグラント王国以外だと、えーと……あ!ノウトーレ共和国ですね」


「どこそこ?」


 今一度この世界の情報の疎さが浮き彫りになる。


「自然と知識と剣を愛する国ですよ。他の国とも仲がいいし、種族の差別もないと聞きますよ」


 何その理想の国は……


「とりあえず、この村を知ってもらうために売りに行ってみないか?」


 みんなが考え始める。


「いい案だと思います。この地と技術でしか作れないと念を押して言っておけば安全だと思います」


 またもや売る気満々のアリス。


「よし、早速この村の成長と一緒に貿易の準備もするか!」


 やっと決まった……これで迷う心配はなくなったはず。


 そんなことを考えながら、食べ終わった皿をかたずけてもらって食堂から出る。


「うれしいな、なんか一致団結していたし」


 そうですね、とミラル。


 愉快な気持ちで畑に向かう。



 バーン!



 大きな音が町中に鳴り響く。


「な、なんだ!」


 音の方を見ると黒い煙が立ち上っている。


「あっちの方向は確か吸血鬼の研究室ではなかったか?」


 大変だ!向かわなきゃ。魔力暴走かもしれない。それならファラルの話通りあのやばいワイバーンが出てくるかもしれない……


 そう思っていたのもつかの間。


「ハハハ!わらわを呼んだのは貴様らか?」


 この町の誰のでもない声が聞こえてくる。

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