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王に勝手に召喚されて神から成長系チート能力を貰ったのに追放されたので辺境の村を発展させに行きます。  作者: アフリカン・サワープラム


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青年の夢にまで見たことが叶ったと思ったのに ① 変わる日常

 「ふぁぁ〜」

 眠そうに祐希隼人ゆうきはやとは目を開け、大きな欠伸を唸らせる。


 この地は、地球の日本

 西暦は、20XX年7月20日


「今日は、あそこの本屋さんに行ってみるかぁ」

 誰に言うでもなく、本しかない部屋で独り言をつぶやく。


 中学校でも、友達と呼べる人はおろか、知り合いと呼べる人さえ少ないので、夏休みに何か予定があるどころか、予定を作る気力も体力も無くなっているのです。


 家には祐希しかおらず、母は、自分が4歳の時に交通事故で亡くなってしまった、と聞いているが、自分の記憶では、葬式をした記憶が無いので、本当かわからない。


 父は単身赴任中で、ここ最近顔も見ていない。というか見たくもない。父に従っていた結果、僕はこんな誰とも知り合えない生活を送っている…いや、本当は分かっている。自分の努力不足のせいだと…


 7歳年上の姉がいるが、モブで陰キャの自分には構ってくれない。今もどこかで遊んでいて、僕のことを馬鹿にして、話を盛り上げているのだろう。


 家族は別に嫌いじゃない、でも、自分の中で何かを支えにしなければ、生きていけないと強く感じたからだ。

 僕の今の支えは、誰かを憎むことで得られる安堵と、夢のような世界観である本を、ライトノベルを見ることで生きている。


 大袈裟に聞こえるが、実際僕もそう思う。



 僕は、そそくさとパジャマから、ダサい私服に着替えると、皿が溜まっていたり、掃除が行き届いていないけど、まだ新しいキッチンで、昔、母が作ってくれたであろうオムライスを、思い出せる限りを尽くして再現しようとしたが…卵が粉々に砕けてしまった。


 気を取り直して、元オムライスのケチャップライスと卵しか入っていないぐちゃぐちゃのチャーハンを口いっぱいに頬張る。


「美味しいけどなぁ」

 料理というか、材料が美味しいと、自分の料理センスのなさを悔しいがりながら、片手間で気になっていた本屋さんの情報を早速調べる


「へぇ、あのライトノベルの新刊売ってるんだ、前から欲しかったんだよなぁ」

 気になっていた小説が発売していてとっても嬉しいが、1つ懸念があるとすれば…


「読むだけならいいんだけど、誰にも感想が言えないのはなぁ。」

 言う相手が、顔も見えないSNS上にいる人だけだと、どうも気が滅入る。僕は、陰キャだが、SNSは苦手なのだ。煽ってくるし。


 身支度を簡単に終わらせる前に大事な財布を確認をする。


「買える最低額しか入ってないな、よし」

 カツアゲされてもも問題にならないようにお金は少なめに持ち歩く、別に今まで、カツアゲされたことは無いけど、念には念を。


 鏡でいつも通り冴えない顔をしている自分を嫌になりながら見て、髪を濡らし、ねぐせをクシで治す、ドライヤーで髪を乾かして準備万端にする。


「今日も誰にも会わないといいなぁ〜」

 ある意味おまじないみたいなことを自分に言い聞かせ、誰にも合わない最適解な道を頭に浮かばせる。


 最後に、いつ買ってもらったか分からない、運動をしていないからきれいな靴を履いて玄関へ向かう。


 扉を開けて誰もいない家に向かって最後のさよならを高らかに宣言する。


「行ってきます!」

 僕は、この言葉がこの家や家族への最後の別れの言葉だとは気づかなかった。




 僕は、家からでて1歩目で転んだ……はずだった。

 やけに、地面に叩きつけられるまで、というか倒れるスピードが遅い。


(家からでて1歩目でこれか)

 少し悲しみながら考えるが、やっぱりおかしい、目の前で風でなびいている草が、おかしな動きをしている


(雑草も揺れるのが遅い?)


 現実離れしていて、上手く理解できない。


 倒れる寸前、手が地面に着くはずだったが、地面スレスレで消えていく、いや、手の感覚はある。

 手が、地面に溶け込む…吸い込まれる感覚だった。それと同時に、地面が水面が波立つように揺れる。

 僕は、何も抵抗が出来ないまま、顔が地面にぶつかる……地面がなかったかのようにすり抜けた。

 このままだと、僕はまっすぐ地球の中心に落ちてしまうだろうと、ありもしない不安を抱き怖くなった。


(目の前が何も見えない、違う、何も無いんだ)

 一瞬にして、全身が地面に倒れ、下に落下していた。


 だが、現実離れしていたのはこれだけじゃない。


 次に目を開けると、僕は落ちていなかった。というか、下を向いていたはずなのに、いつの間にか上を向いている。

 目の前は真っ白、見える限り水平線まで、どこから光が放たれているのかさえわからない。


(喋れない、しかも、体が動かない!!)


 今起きていることを少しずつ理解しようとしたが、無理だった。どうしても、混乱が勝ってしまう。

 先程まであった体の感覚は消え失せて、頭だけ動かせる、ただ立っている屍のようになってしまった。


 恐怖で何も考えられない…


 ふと意識を目の前へ戻すと、そこには、上品な仙衣を着た老人…にも見えるが25歳の若い男性のようにも見える。顔は整っているように見えるが、よく見えない。

 もう一度、感情や状況を整理しようとすると、何故か恐怖感が無くなっていることに気付いた。落ち着く…


 彼は、ゆっくりと口を開いて、驚きの発言をし始めた。


「君は選ばれた。この我に」


 どうして!と、言いたかったが、声が出せない。口は開いた、目も動く、だが喉から何も出ない。

 そういえば、さっきから息を吸っていたっけ?と新たな疑問が浮かんできて戸惑ったが、僕は静かに彼の言葉に耳を向けた。


「我の名は創造神????、世界リノールを創った神だ」


 今名前を言ったのか?聞こえなかった。いや違う、理解出来ない言語だった。彼は、僕の気なんて知ってか知らずかさらに続ける。


「今、我の世界では、我が創った世界抑制機関『魔王バリス』が、ヒューマンの封印から解けそうらしい」


 おお、なろう系でありそうな展開!でも、それと僕がなんの関係が?


「ヒューマンの魔法で、創造神の私に願いが届けられた。『勇者を召喚せよ』と、だから我は君を選んだ」


 僕は目を点にして、創造神の話にのめり込んだ。


(僕が?!でも、どうして)


「理由は、簡単だ。君の精神力が気に入った」


 あれ、僕の考えが聞こえるのか?


「そうだとも、ここは、我の領域だからな」


 それはそうか、神ですもんね。と、勝手に納得し、話の続きを促す。


「君には、召喚される前に、基礎能力と、2つの異能力を渡そう」


 やった、お決まりの展開ってやつだよね、これって。


「ひとつ残念なことがあるとすれば、基礎能力値は、生まれた時に決まっている。君は、身体能力などではあちらで少し有利だが、魔力総量と魔力回復が一般以下だ。鍛えれば話は別だが」


 つまり、魔法はほとんど使えないってことか、俺の勇者ライフは神の言う異能力のみで行くしかないのか、剣は使えないし……


「それで、まずは基本能力だか、『言語理解』と『健康体』と『適応能力向上』と『簡単表示操作』を授ける」


 基本能力だけど、一気に4つ!とっても嬉しい!


 ピロンッ


 音がした瞬間、視界の左下の端で、なにやら横向きの三本線がでてきた。


「意識をそれに向けて集中してみろ」


 ピロンッ

 ピロロンッ


 意識を向けると、まずメニューと表示され、視界の目の前に青い半透明の画面が現れた。画面には、白文字で『New獲得 基本能力』と書かれていてその下に先程の前半3つの能力があった。


(これは?)


「分かると思うがメニューだ。君たち地球人には馴染みがあるのではと思ったのでな。私たちの世界では、選ばれし者しか持っていない『簡単表示操作』という」


 これは、ワクワクが止まらなくなる。まだ中学生だったけど、新たな第2のライフが送れるよ。


「次に、異能力を授けよう」


 ピロロンッ


 えっと、これは、『経験複製体』と『ギフトガチャ』?……レア度…ミシックとレジェンダリーじゃん!!


「では、またいつか会おう」


 神はそういうと、僕の方に手を向けた。

 そうしたら、体が自由になり、足からどんどん光になって消えていく。


「創造神様、ありがとうございました!」


 そう言った瞬間、僕の意識は飛んだ。

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