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記憶の中の人集めの冒険 ⑤ 黒煙ワイバーン編

「ちょっと待ってください、あの煙動いてません?」


「やっべ」


 ミルファさん⁉


「なんか形も変わってない?」


 アレグロさんの言う通り、黒い煙がどんどん変化していっている。翼ができて…頭ができて…ワイバーン?!


「ちょっと、魔法陣が煙によって魔力暴走しちゃったみたい、てへぺろ」


「可愛く言ってる場合じゃねぇぞ」


 さすがですシドレさん。


「どうしよう、結構魔力込めたからあと数時間は暴れると思う」


「それってつまり、無関係な人も襲われるってこと?」


 あはは、と苦笑いながら頷いている。


「じゃあここで倒すしかないのか」


 うーん、と唸りながら考える


「試しにミルファさんが何か仕掛けてみてくれませんか」


 暴走させた本人として…


「そうですね、実体がありますから物理的なものが有効的だと思います」


 そう言いながら、両手が荒れ狂う黒煙ワイバーンに向けられ唱えられる。


「上級魔法『伝わる衝撃(インパクト)』」


 手とワイバーンの間の空気が分かりやすく歪む


「グワァッ!」


 数メートルは後ろに吹っ飛ばされ、ワイバーンは明らかにこちらを意識して警戒し始めた。


「まぁまぁですね。やっぱり設置型でなければ…」


 上級魔法はすごすぎる気がしますが、ここでそんなことにツッコんでいたらきりがない気がします。


「エルフに劣ってないぐらい強いからいいんじゃないですか?」


 全くアンダンテさんの言う通りです!


「でもなんか、あっちあんまり効いてなさそうなんだけど」


 アレグロさんの指す先には今にも襲ってきそうなワイバーン。


 城の方を見ると、もうワイバーン以外は跡形もなくなくなっていた。


「私と飛べない吸血鬼さんを地面に下してから戦ったほうがいいんじゃないですか?」


 脇に手を入れられて持たれている吸血鬼さん達の方を見ると、きょとんという顔をしている。


「さっきは準備できなかったけど、私達も飛べるよ」


 あっさりと黒い羽根を出し天使族の支えから抜け出す2人…飛べないの私だけ⁈


「大丈夫ですよ、しっかり支えてますから」


 唖然としていたことがばれたのかアンダンテさんに慰められる。


「飛べないなら、これに乗っていてください。設置型中級魔法『簡・堅牢不可視物体(簡易バリア)』を起動…」


 指示されたところを触ると確かに何かある。この魔法ってた確か魔力消費が馬鹿げてると魔法書に書いてあった気がするけど……気にしない気にしない。


 私は、アンダンテさんに透明な床に乗せられそれ以降は指示役に徹することになった。


「とりあえず、吸血鬼さん達は強力な魔方陣の設置をお願いします。それを天使族の皆さんが援護したり、自分から攻撃しに行ったりしてください」


 作戦会議中にバフ魔法を…中級魔法『一時的特性強化(パワーアップ)』……連日魔力を結構使っているから疲れが…


「では、勝ちましょう!」


 各自の掛け声が聞こえ作戦が開始された。


 最初に始まったのが、シドレさんとアレグロさんが特攻して、その間にアンダンテさんの守りの中で吸血鬼さん達の詠唱が続いた。


 先の戦いのこともあったから、すぐにワイバーンに倒されると思った二人は意外と善戦をしていた。


「そこだアレグロ!」


 さっきかけた魔法の効果もあるだろけど、それ以上にお互いを信頼してるからこそできる一心同体な攻撃、魔力でしか構成されてないワイバーンはそれに翻弄されて強い攻撃が当てられていない。


「すごいでしょう、あの人たち」


「え?」


 急に微笑みを浮かばせているアンダンテさんに話しかけられた。


「彼女達は、私が来るもっと前から一緒にいて色んなことをやってきたの」


 昔を思い出すように目を細くして遠くを見ている。


「だから、ファラルさんが驚くのは必然なのよ」


 そういって、いつもの優しい笑顔をする。


「うらやましいですか?」


 ふと疑問に思ったことを口にしてみる。


「全然、むしろ誇りに思うわ」


 一瞬きょとんとしたがすぐ返答してくれた。


「こっちも準備できました」


 ちょうどいいところでミルファさんの合図を貰い特攻中の2人に指示する。


「シドレさん!アレグロさん!魔方陣準備できました。戻ってきてください!」


 最後の攻撃を終わらせ、巧みに翼を操り戻ってくる。


「すごいのができたんだよな!」


「ええ、安心してくださいアレグロさん」


 冷静?になったワイバーンが叫びながら高速で向かってくるところに、吸血鬼さん達が魔方陣を向けている。


「ここからは、もう何も言わなくても発動できますよ」


 指パッチンのポーズをするミルファさん。


「なるべく引き付けた方がいいですね」


 みんなが息をのむ…


 パチンッ


 バァァン!


 大きい魔方陣から想像できないほど細い指一本ほどの太さの黄色く物凄く明るい光線がワイバーンへの接触したと思ったら、大きな爆発をしてすぐに縮小して消えた。


 私達は、見えない壁によって無傷だった。


「やったか?」


 残っていた白い霧のようなものが晴れると腹に大きく穴が開いているワイバーンがいた。


「よかった。これで一件落着ですね」


「危ない」


 バゴォン!


 魔方陣発動のために一番前にいたミルファさんが、なぜかまだ動くワイバーンに重い一撃を当てられて吹っ飛ばされた。


 ギリギリで仲間にキャッチされ落ちずに済んだが気絶している。


「ガオォォ!」


 目の前で大きく咆哮するワイバーン


「お前ぇ!」


 さっき知り合ったばかりのミルファさんのためにまるで親が殺された時のような怒りを出すシドレさん。


 バリィン!


 ワイバーンがもう一度攻撃してきたが、ミルファさんが発動したバリアで跳ね返された。


「バリアは気絶したミルファから魔力供給がないから消えるはず……まさか!」


 みんなが一斉に気絶したはずの吸血鬼を見る。


「まだ倒れてませんよ。さっきの魔法を放ちましたからワイバーンはあと少しで倒せます。頑張ってください」


 頭から血を流したミルファさんが最後の力を絞って希望を見せてくれた。


「そうですね……皆さん!今こそさらに冷静にワイバーンを倒す方法を見つけましょう」


 私は、二度目の作戦会議を開始した。


「まとめると、吸血鬼の人たちはさっきの魔方陣で魔力を使い果たしたから、鍵は天使族です。私は、サトウさんにも掛けた中級魔法『俊足の音色(スピリウド)』を掛けます。あとは信じていますよ」


 作戦とはいいがたいけど、みんな納得してくれたらしい。


「じゃあ、やってくる」


 何を考えたのか、シドレさんについていく感じで天使族がワイバーンの右手側の物凄く遠くに行った。


 何も聞こえないが、なにか話しているらしい


「おーい!こっちに来やがれくそ野郎!」


 急に大きな声で挑発を始めたアレグロさん。


 シドレさんはさらに奥に行っている。


「ガオォォ!」


 声に気づき、まるで挑発に乗るように大きく咆哮を上げて高速で向かうワイバーン


「あの速さだったら、アレグロさん…いや、シドレさんにつくまで数十秒しか掛からない…」


 無意識につぶやくミルファさん。


 ワイバーンはすぐにアレグロさんとアンダンテさんのところについて、防御している二人を難なく吹っ飛ばす。


 二人は、防御の態勢をとったのにもかかわらず落下してしまう。シドレさんはさっきから立って何もしない


「シドレさんは何をしているんですか!」


「安心しなさい、そして見てなさい」


 さっきと違い落ち着きすぎともいえるミルファさんを見ると、私は何も言えなくなった。


 もう一度、シドレさんの方を見ると聞こえないはずの声が聞こえた。


「天使奥義『神速(ライトニング)』」


 そう言った気がしたら、いつの間にかシドレさんは、ワイバーンの背後数メートル先に浮いている。


 ワイバーンが止まったと思った次の瞬間破裂した。


「今度こそやったんですよね…?」


「そうですよ、完全消滅です…」


 嬉しさが溢れ出し、棒立ちのシドレさんに向かって祝福を言おうとしたら…


 ピカーン!


 明るい光がシドレさんを包み込み、消えたと思ったら羽が消えて落ちていった。



「シドレさん!」



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