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記憶の中の人集めの冒険 ④ 吸血鬼編

「はぁ…なんであたしたちがこんなことを」


 それは私も言いたいんですけど…


 アレグロさんの呟きに他2人もため息をする。


「それより、ファラルさんも大変ですよ~、あの後すぐに…」



 数十分前…



「ファラル!三人の試験について行ってこい、あとこれ、俺の村までの地図な、じゃ!」


「へ?」


 ポカーンとしていると、サトウさんは馬車を走らせたちまち過ぎ去ってしまった…



 現在


 アンダンテさん…ありがとう…


「あの人はそういう人ですよ…はぁ。私達もすぐ見つけてさっさと帰りますよ」


「ああ、そうだな、あいつの実力本物だ。弟子にしても前にいた人がばっと振り向く

 空を見上げながらやる気満々のシドレさんがそう言った。


「でもなぁ、そんな簡単にうまくいくかなぁ」


「弱音を吐くなアレグロ!」


 この三人を見ていると達成できる気がします。大会は惨敗でしたけど…


「でもどうしますか?私、吸血鬼の居場所なんて知りませんよ」


「それは大丈夫だ、長年の犬猿の仲だから奴らの住処はわかる」


 先頭を歩くシドレさんの言葉にうんうんと頷く二人。


「そういえば、一つ当てがある気がします」


 私の目の前にいたアンダンテさんのことをさらに前にいた人が驚いた顔で振り向く。


「あ、あれですよ、あちらは私達の町とは違う資源があったので交易をよくしていた。という話です」


 反応に少しビビりながら答える彼女に疑問を唱えるアレグロ


「そんなの今まで聞いたことがなかったけど…」


 息を整えてから、フフッ、と優しく笑うアンダンテさん。


「それはですね、私も昔働いてたからですよ」


 そういいながら、列の先頭に来る。


「ここからは私が案内します。隠れ市場を知っていますので」


 歩くスピードが上がった気がする。もしかして、シドレさんに合わしていた…?


 たまに休憩をはさみながらその隠れ市場にはすぐ着いた。


「あれですよ」


「長い川があって……っ⁉」


 そこには、文献でしか見たことがないツタが張っている古びた大きな城が建っていた。目を凝らすとその奥にも何個かあるようだった。


「ここがアンダンテの言う隠れ市場か…」


 シドレさんが驚きと関心の目をそれに向けている。


「早速行きますよ、仲がいい吸血鬼がいますので」


「仲がいい?」


 アレグロさんが反応したが誰も何も言わない。


 市場は天使族以外にも、獣人や人間などがいる。ここでは種族間の妬み恨みがないようだ。


「ここです!」


 案内された先は市場の中で一番大きい店。


「おお、アレンか。何年ぶりだ?」


 中から出てきた人間の老人がアンダンテさんに話しかける。


「久しぶりです。グラドルさん!」


「おいっ」


 他2人がアンダンテさんの肩を引っ張り誰にも聞こえなさそうな声で話始める。


「あの野郎、アンダンテのことをアレンと呼んだが、なぜだ」


 シドレさんが少し威圧をかけながらそう聞く。


「ここでは、本名は禁止です。暗黙のルールですよ」


 優しく冷静に受け流すアンダンテさんは、いつもどおりだった。


「皆さんも何か考えといてください」


 グラドルという人がこちらをのぞき込んでいる。


「ここからは、あの人とは客と店員じゃなくて、スパイとターゲットになりますよ。吸血鬼たちはあまり表に出てきません」


「探し出すってことですね」


 アンダンテ…アレンがターゲットに方を向きなおして話しかける。


「あの人にまた会いたくてね。入れてくれますか?」


「その後ろの奴は?」


 怪しがっている。


「ただの仕事仲間ですよ。ね」


 こっちを向いてきた。頷いておこう。


「ほら、いいでしょう?」


「ん~、わかった。入れ」


 暗い空間に四人で入っていく。


「ッ⁉」


 鼻の奥を悪臭が刺激してくる。


「おい、後ろの三人は仕事仲間だろ?なぜ鼻を抑えてつらそうにしているんだ」


 やっぱり警戒している。


「皆さんは、運び屋しかやってこなかったので、こういうところには慣れてないんですよ」


 アレンの柔軟な対応によって難を逃れました。


 何個も実験室らしき場所が見える通路を一直線に通っていく。


「うっ」


「我慢しろレグロ、あともう少しの辛抱だ」


 レグロというのは、アレグロの名前の最初を取っただけのものだ。シドレはシラソ、私はラルと名乗った。


「ここだ。俺は別のところに行ってるからな、変なことはするなよ」


 ドアの前でグラドルと別れると、素早く部屋に入る。


 そこには、残酷な光景が広がっていた。


「おえっ」


 レグロが、ゴミ箱に吐いている。無理もない。


「誰かしら、ああ!アレン、久しぶりね」


 レンガでできた壁、青い光を放つランプ、そんな部屋の真ん中には、金属でできた台に置いてある何かと返り血が少し服についていてこちらを見て笑っている少女…


「もう、また大きな植物を?勘違いする人が多いからやめてください」


 何事もないように話し続けるアレン。


「べつに、入ってくる人が少ないからいいでしょ!そうそう、今日は森で収穫したトマトをさばいているの、食べていく?」


 返り血だと思ったものはただの野菜の汁だったらしい。


「紹介するわ、この吸血鬼の名前はミルファ、品種改良をしている凄腕研究者ですよ」


「もう、凄腕なんて言い過ぎよ」


 照れてる、物凄く照れていますね。


「で、でも、ここに来るまでの実験室らしき場所は?」


 レグロが気になって仕方がないように質問している。


「あそこは他の担当だからよく分からないけど、生き物の解剖じゃない?」


 やっぱり危ない場所だった。気を緩ませないでよかった。


「それより、私達はある人を見つけにここに来たんです」


「ある人って?」


 スパイをやりに来たはずなのにこんなすぐにばらしていいのだろうか。


「別の村に移住してくれる吸血鬼を探していて、何か心当たりはありますか?」


 ミルファさんは、うーん、と深く考え込み、頭に電球でも浮かんだのかパッと顔を明るくして提案を始めた。


「私なんかどう?」


 アレンが、えぇ、という感じで驚く


「いいの?あなた、何十年もここで実験していたのに」


「全然いいよ!なんなら、もう二人ぐらい連れてこれるかも」


 話がうまくいきすぎて嫌な予感がする。


「その、二人って連れてきて大丈夫なの?」


「多分大丈夫と思います。ここ数年濡れ衣で檻に入れられてるので」


 アレンさんと話すときの態度が少し違う気が…じゃなくて、檻にいるですって!


「その濡れ衣って…」


「確か…禁術魔法の研究をしていたとかなんとか、でも、普通の吸血鬼があんな興味深…じゃなくて危ないものをするはずないもの」


 禁術魔法…文献でしか聞いたことなくてやり方もいまだによく分かってないもの、今人類で使えるのは三つだけらしい。


「まぁ、とりあえずこっちに来なよ」


 そういって料理研究室の壁付近まで来ると、ミルファさんは1つのレンガを押し隠し扉を出現させた。


「これは見なかったことに」


 うふふ、と優しく笑いかけてくる。


 石でできた螺旋階段を暗い視界で下りていると物音が聞こえてきた。


「シッ、何か聞こえる」  


 シラソが手を上げハンドサインをしたらしく、みんなも止まった。私は見えないから周りに合わせる。


「大丈夫ですよ、これはその吸血鬼の毎日の日課です。モールス信号ですよ」


『ジ ッ ケ ン』


「と言っています。私達は実験をやりたくて禁断症状が出る時があるんですよ」


 何でもないように言うが十分やばい気がする。


 檻の目の前に来ると、腐ったように倒れている二人がいる。


「死んでるっ!」


「違うよ、やる気がなくて倒れているだけ」


 吸血鬼って、想像と違う気がする。さっきから天使族とも普通に話しているし…


「おーい、君たち実験したくないかーい」


「「したい!」」


 すごい食いつきで、一瞬で目の前に来た。


「天使族と仲良くするけど大丈夫か?」


「全然大丈夫だから、実験、研究させて!」


 まるで飢えた獣のようになっている。


「そういえばあなた達、捕まった原因って禁術魔法以外にもあるでしょう?」


 アレンが質問している。


「それが大部分ですけど、目をつけられた理由は、長老たちが異能力を持っていない私達を檻に入れるためですかね」


 天使組が共感したように頷いてる。


「じゃあさじゃあさ、ここ、爆破していこうよ」


 子供のような無邪気な顔をしたミルファが意味通り爆弾発言をした。


「えっ、いいの?」


 こっちはこっちで、目を輝かせている。


「よし、そうと決まったら早速準備だ。ちょっと待って」


 そういいながら、設置型魔方陣を作り始めた。


 私達は、檻を開けてから少し待つ。



 15分後



「やっと完成した!いくよ、あと五分で発動しちゃう」


 そう言って、ミルファは背中から紫色の魔方陣と一緒に黒い翼を出した。天使組もそれに連なって天使の白い翼をだす。


「天使族は力が強いから他の人たちを持ってね」


 そう言って、ミルファは隠し通路に逃げるように飛び去った。


「私達も行くよ、シドレ、アレグロ」


 いつの間にか名前が戻っていたなぁ、と思っていたら、体を掴まれなすすべなく連れてかれる。


 今まで通った道を高速で戻って、隠れ市場にはるか上空にきた。怖い…


 先にいたミルファが、見ててと言わんばかりに指をさす。


「そろそろだね、3…2…1…」


 最後のカウントが終わった瞬間、大きな音と莫大な黒い煙が上がり、風圧で吹っ飛びそうになる。


「あそこにいた人たちは」


「え、あいつら極悪人のやばい奴らだよ?」


 他のみんなは特に気にしてないようだ。


「なんならこのまま行きますか、フロンティアに」


 アレグロさんの言葉にみんな頷き、進み始めた。



「ちょっと待ってください、あの煙動いてません?」


「やっべ」


 ミルファさん⁉

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