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記憶の中の人集めの冒険 ③ 天使族編

「後はここをまっすぐ行けば天使族の町につきます!」


 エルフリーダーのルーラが道案内をしている。


 空気が少し乾燥していて暖かい、足首程度の高さの草や幹が丸見えの木がそこら中にある。見渡すとあちこちに魔獣(草食動物)がいる。そう…サバンナだ。


 森を抜けてからは、特に危なっかしいこともなく落ち着いて進むことができた。


 私は、用意してあったお皿に初級魔法『聖なる水(ホーリーウォーター)』という、とっても簡単に飲める水を出せる魔法を使いみんなに配る。


 食料も問題なく、エルフは危険なので何もせず、村長が狩り私が料理するという感じでやっていました。


 特にレイジバードの丸焼きがおいしかったなぁ…よだれが!


「ファラル、よだれ…じゃなくてあれ見えるか」


 恥ずかしがりながら服で口を拭いて指で指された方を見る。


「大きい…」


 とっても大きい闘技場が町の門越しに立っていた。 


「あれは、『天使闘技場(エンジェリーナ)』と言った気がします。確か、昔死魔の森に立ち寄った珍しく優しい天使族が言っていました」


 珍しく優しい…天使族ってそういうものかしら


 顎に手を付けながら考えていると、ふと、体の揺れに気づく。


「体?…いや!馬車が揺れているのか」


 そう結論が出ると、町の方から歓声が聞こえてくる。


「今は試合の時間だったか」


 闘技場の上に風で舞う色紙を見ながらそう言う。



「とうちゃーく!」


 すやすや寝ていたミラルと他数人が腰に手を当てて伸びをする。何もしてないはずなのにかわいい…


 町は賑やか…とは言えなかった。


 町を歩く白い翼を付けた人たちが、私達を…というかサトウさんを白い目で見ている気がする。


「まずは馬車が止めれる宿に行くか!」


 全然気にしてないみたい。


 馬車を引き連れながら街中を歩くと一つの宿を見つけた。


「俺は馬車を止めてるから、先に行っててくれ」


 言われた通り中に入る。


「くらいですね…」


 エルフの呟きに静かに頷く。


 受付らしきところに行くと、人間ではなく私達と同じ獣人が立っていた。


「いらっしゃいませ!」


 元気良すぎて少し後ずさりしそうになる。


「一日のお泊りでいいでしょうか、では、人数を教えてください」


 指で数えながら告げる


「獣人が7人でエルフが5人…あと、人間が一人です」


 人間と言った瞬間分かりやすく顔を歪ませた。


「はぁ…あなた達知っていますか?この町『戦う誇り高き天使の町(エリファイド)』では、過去にあったずる賢い人との戦争で勝ってから、人間のことをゴミ以下と思うのが流行っているんですよ」


 さっきまでとは違い明らかに態度が変わり貶すように笑っている、私は静かに怒りを燃やした。


「そんなのどうでもいいから、早く案内してください」


 ルーラさんが、何かを感じさせるような無感情な顔で店員を急かす。


 店員は、舌打ちをしてから階段を上り案内してくれた。


「一つ一つの部屋は狭いので、全部使ってどうぞ」


 とてもイラつく態度です。同じ獣人なのに…


 一応お礼を言い、一つの部屋に子供二人大人一人という感じで過ごしてもらう。


 エルフのリーダーのルーラさんと私とミラル、あとサトウさんもこの部屋に来てもらいます。


「ここかな…入るぞ」


 ドアをゆっくり開けて入ってきた村長は特に何も変わってなかった。


「サトウさん、大丈夫でしたか?」


「何がだ?」


 きょとんとした顔をして何が何だかわからないと呟いている。


「何でもありません。それで、ここからどうするんですか」


「まぁ、とりあえず明日の試合に出てみるか」


「えっ?」


 今度はこっちがきょとんとした顔をした。


「本当だ」


 確認の言葉がとれ、私は手で口を塞ぎ、ミラルとルーラは目をキラキラさせている。


「一応聞きますが、理由は…」


「ここの宿代が払えないからだな」


 それ初耳なんですけど…


「お金…全然余ってましたよね?」


 サトウさんに聞いたつもりが、ルーラさんが、ああ!、と手のひらに手をポンと置いて納得したという顔をして手を動かす。


「ここの町特有のお金ですね!確か確か…」


 腰についている革製のカバンをごそごそ漁ると一つの銀貨をつまんで見せてくれた。


「これが、昔に優しい天使から貰った銀貨ですね」


 銀貨には翼のマークが真ん中に彫ってある簡素なものだった。逆に王国が細かすぎるのかもしれない。


「そうそれそれ、俺持ってないから明日試合で優勝してくるわ」


 サトウさんって一応引き締まっただけの中年男性のはずなんですが…


「強気ですね、作戦とか勝てる見込みとかありますか?」


「ない!」


 この人なら無条件で信じられそう。


「わかりました。他のみんなもいいって言ってくれると思いますから、頑張ってください!」


 部屋には大きなベットが2つ…片方にサトウさん一人、もう片方に私とミラルがルーラさんに抱かれる感じでベットに横になる。ルーラさんの提案です。



 次の日、宿はもう一日延長してもらってから、闘技場に向かう。店員は悪態でしたのでエルフさん達にお手柔らかにしめてもらいました。生きてますよ!


「『本大会は5人以上のパーティーで挑むことができます』か…どうしようか」


「エルフ達は子供の世話をしてくれるから不参加なので、私しかいませんね」


 周りを見渡して他に困っている人を探してみる。


「なぁ、君たちも参加できなくて困っているのか?」


 村長が先に見つけたのね…って天使族に!


「サトウさん!絶対やってくれませんよ!」


 天使族の三人は、こちらに気づいたと思ったらすぐ怪しい顔をしてきた。また馬鹿にされる…


「なんだおっさんも困っているのか、でも強くないとパーティーになってやらないぞ」


 三人の中で比較的ノリが軽そうな天使が悪口を…じゃなくて普通に話してる?


「まぁ、一般人より強い自信はあるぞ」


 リーダーらしき人が前に出てきてかすかにいら立ちをにじませた声で言う


「ならば、私の拳を受けて見よ」


 そう言った瞬間、リーダーらしき人は握りこぶしを作り鋭い一発を放つ


「ッ?!なぜ防御しない!」


 その拳は胸にあたり鈍い音がしたが、サトウさんは特に痛くなさそうに腰に手を置いている。


「一応聞くが、手加減してないよな?」


 相手は驚きを隠せてなく口を開けたまま閉じない。


「わ、わかった。いいだろう」


 落ち着いたのか少し残念そうに告げる。


 会場に入り、試合時間になるまで少し時間があったが、合う人全員に悪態を向けられるので気を悪くしそうで端に座る。


「シドレさんに、アレグロさんに、アンダンテさんですね」


 この三人は、話し方に多少とげがあるけど、わざと嫌悪感をあらわにしていると買わなく普通に話せている。


「あなた達は、なんで、人間のサトウさんをパーティーに入れたり普通に話してくれるんですか?」


 アンダンテさんが優しい声で言う。


「私達もね、同族から嫌われているのよ」


 そこにアレグロさんが付け足す。


「そうだよ、あたしたちは、同族を見返すために『天使闘技場(エンジェリーナ)』で戦っているだけで、別にあんたらを貶すつもりなんてないさ」


 シドレさんは、そうだ、と言わんばかりに頷いてる。


 サトウさんは、ここに来てから初めての作ってない笑顔をした。


「ありがとな」


「私からもありがとうございます」


 アンダンテさんが、大丈夫ですよ、とニコニコしている。この人のやさしさに溶けてしまう。


 試合時間はすぐ来て、アナウンスと歓声が聞こえてくる。


「一試合目は、雑魚雑魚チーム対天使族で安定を貫く『シンプリーチェ』です。


 どちらが自分かわからないが、多分前者でしょう…イライラします。


「今のうちに『ブルーストロベリー』を食べときましょう」


 私達が日の光を浴びながら入場すると…無音かと思ったらブーイングが始まりました。かすかに仲間の応援も。ミラル見てて


 横を見ると、他の四人は何も思ってないような表情をして歩いてる。


「来たな」


 前からも相手選手が来た。


「あたしたちで片付けるから見てな」


「わかった。お手並み拝見といこう」


 私もお言葉に甘えて


 試合の合図の笛はすぐになった。


「行くぞ!」


 始まった瞬間、シドレさんの一瞥により、作戦が始まった()()()


 アレグロさんとアンダンテさんは地面付近からスピード重視で特攻する。そこに、空中から高速で降りるシドレさんのキックがさくれ…跳ね返された…


 三人の天使族ならではの戦法が、相手の異能力で簡単に防がれてしまう。パワー型と援助型で構成されているらしい。


「あっけないな。よし、俺が終わらせてやる」


 私はたまたま覚えたスピードのバフ魔法をかける。


「中級魔法『俊足の音色(スピリウド)』をかけました!」


「ありがとう、行ってくるわ」


 早速、『身体強化』とバフが相乗効果で見えないほど足が速くなり、先頭の天使に腹パンを食らわせたみたい。よく見えませんでした。


 ついでに、みたいなノリで一人、また一人と闘技場の壁にぶつけていく。


「さよなら…よし終わった」


 最後の1人は、物凄く怯えていたようにも見える、さっきまで嘲笑っていたのに…


 跳ね返された三人もこの光景をみて驚愕している。


「ほら三人組行くぞ」


 サトウさんにつられて裏に戻る天使組、下を向いて俯いてるように見える。


 私達が見えなくなるまで、会場は、外でなく魔獣の声が聞こえるほど静かでした。


「こんなので、金がもらえるなんて驚きだな」


 わっはっは、と笑いながら、受付に向かう村長。


 あまりにも一瞬過ぎて、まだ感情の整理ができていない。でも、とにかく感じるのが喜びだった。


 天使三人組が、後ろでこそこそ話している。


 そこからはスムーズで、明らかに納得いっていない受付嬢から町特有の金貨10枚をもらい、闘技場を後にする。


 出て少ししたら、エルフ達と合流して試合の感想を言い合っている。


 宿に金を渡し、馬車に乗る。


「ところで、君たちはいつまでついてくるんだ?」


 闘技場から、ずっと後ろにいたから何かなと思っていた。


「え、えーと、実はお願いがありまして」


 嫌な予感が頭をよぎる。


「なんだ?」


「「「私達を弟子にしてください!」」」


 予感は的中した。


「ごめんな、むりだ」


 天使だけじゃなくて私もそれ以外も驚く。


 やさしいサトウさんが断るなんて。


「ただし、俺の願いを達成したらいいだろう」


「な、なんですか」



「吸血鬼を連れてきてくれないか、三人」


 天使三人組はわかりやすく嫌な顔をする。とくにシドレさん。


「天使族と吸血鬼の中が悪いことはご存じですよね?」


「ああ、知っている。これは試練だ」


 鬼畜なサトウさんを知れました。

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