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安息の地へ冒険を ④ 目的地、フロンティアの村長は誰に?

 目を覚ますと、そこには、下半分は雲ひとつない青空で、上半分はなにか分からないけど、2つの月じゃない丸がある…触ってみよう。


 ポヨン


「キャッ!」


 ミラルの声?…は!まさか


「すまんミラル…って危な」


 バランスを崩して危うく空から落ちるところだった。


「大丈夫ですか?そんなに触りたかったら言ってくださいよぉ、えへへ」


「いや、本当にごめんなさい、許してください」


 僕、ユウキは今、空を高速で飛ぶドラゴンの上で謝っています。



 3日目 昼過ぎ



 ほっぺたに手を置いて顔を赤くしているミラルに、僕はどのくらい寝ていたか聞く。


「えへへ、えーと、私の膝枕でだいたい…」


「それ以上はやっぱり結構です」


 これ以上聞くと、創造神に絶賛された精神力が削り取られる。


「あと、どのくらいで着くんだ?」


 膝枕モードから、普通に座り直している彼女に質問する。


「はい、えーと、この速度だと、あと2時間程で着くはずです」


「分かった。クロノもありがとうな!」


 僕は、鱗を意識して弱〜く叩きながら、お礼を言う。


 このように意識している理由は、僕のステータスと関係している。


「上がりすぎだな…まだ体が慣れてない」


 ステータスは、クロノとの最後の戦いで『経験複製体』を限界突破で使ったから、数字が爆上がりしている。


「腕力が67、脚力が72…基礎体力も増えて24あるから、もうちょい今までより自由に動けるな」


 未だに上がらない魔力関係のステータスを見て考える。


「ミラル、村に空き家はあるか?鍛錬したいんだが…」


「沢山ありますから使ってください!村には人数が少ないから……」


 ミラルの何かに触れてしまったようだが、大丈夫だろう。


「そういえば、なぁクロノ、君が僕の頭に直接話したり映像を見せたりするのは、基本能力か?」


(勇者様、これのことでしょうか)


(これ、僕も会話できるんだ)


(これは、特定条件で獲得できる基本能力のスーパーレア『通信』と言います)


(その条件とは?)


(……数十年間誰とも話さなければ貴方様でも)


 あっ、これはダメなやつだ。


(すいませんでした)


 僕は、クロノの見えていないところで土下座した。


 ついでに下を覗くと、山脈が見える。


「村の周りはどうなってる?」


「高低差のない平原ですよ、すぐそばに湖と川もあります」


 へぇ〜、と頷く。


「それで、起きた時から気になっていたけど、後ろで隠し持っている袋はなんだ?」


 彼女は、はっ、と驚いた顔をして、モジモジしながら言う。


「これは…その…起きたユウキさんのためにさっきご飯を作ったんですけど」


「本当なのか!ミラルの手料理か…楽しみだな」


「それなんですけど…ちょっと失敗しちゃって」


 なんだちょっとか、かわいい女性の手料理ならいける。


「……食べ物はどこなんだ?灰色の塊しかないよ」


 僕は考えたくないもない最悪な事態にならないように願う。


「……これがユウキさんのために作った肉料理です…」


「ハハハ、まだ炭にならなかっただけましさ」


 僕は、苦笑いをしながら変に慰める。


(我は、休憩しながら料理を見ていたので、勇者様に見せますな)


 クロノの『通信』で記憶を見ると、あたふたしながら、絶対肉が硬そうなキラーベアの肉をあり得ないほど大きい炎に直接置くというある意味凄技をしながら、こっちの方が早いと思いまして…と言っている。


「ミラル、今まで誰に飯を作ってもらってた?」


「え〜と、村の人かな」


「自分で作ったことは」


「最近はあまり作って…」


 僕は、目を泳がせるミラルをよーく見つめる。


「すいません、作ったことありませんでした」


 正直でよろしい。


 僕は、分かった、と頷くと、肩を掴んではっきり伝える。


「今後の料理当番はやるな」


 彼女はガーンと落ち込み、少し不貞腐れる。


「安心しろって、僕達ができる限り教えてあげるから」


 そういうと、ミラルはすぐ元気を取り戻し、やったーと喜んでいる。



 そんな会話をしていると、村の近くの平原らしきところに出た。


「ミラルの村は、山脈に囲まれているの?」


「そうですよ、辺境の村なので誰も来ないんですよ、盗賊は来ましたが……」


(勇者様達が言う村というのはあれか?)


 クロノの視線の先には、家が数十軒あって、畑がある小さな村があった。


「はい!あれです!」


(なら、早くつけるようスピードをあげますぞ)


 ドラゴンは風を切り裂くように飛ぶ



 ドスン


 地面にやっと着地した。


「ユウキ様〜!ようこそいらっしゃいました」


 遠くからファラルが急いで走ってくる。


「よく、ドラゴンに僕が乗っているとわかったね」


 肩で息を吸うファラルはにっこりしながら言う。


「こんな辺境の村に、かの有名なドラゴンが向かってくるなんて、理由はひとつですよ」


 ふむふむ、と頷いていると、自分の後ろから…


「ファラル姉様!」


 ミラルが出てくる。


「ミラル!よく連れて帰ったね!」


 あって数秒でハグする2人。


 ほかの村人たちも、なになに、と家から出てきている。


 人間と獣人だけかと思っていたが、意外と種族が多い。


 人間に、獣人に、耳の長いエルフらしき人や、傘を差す吸血鬼ヴァンパイアらしき人や、翼と豪華な防具を着る天使族エンジェルらしき人もいる。


(てか、全員本当に女性だし、めちゃくちゃ綺麗な人ばっかだし!)


(我もいるぞ)


 この人、勝手に受信もできるのかよ


 ファラルは悲しそうな顔をしながら話し始めた。


「お気づきだと思いますが、この村には、若い女性しかいません」


「もともとは、種族から迫害された私達を迎えてくれた老人たちがいたのですが、獣人の私達が集中的に狙われた時に、盗賊にやられてしまいました」


「エルフなどの長命な種族は、自分の身を自分で守れますが」


「人間と獣人は、そこまで強くないから。金になる私達獣人だけをさらって行ったのです」


 暗い話をしていると思ったら、急に笑顔になり村人の方をむく。


「私達獣人は2日前に戻りました。そこから、みんなで話し、あることを多数決で決めました」


 もう1回こちらに振り向いて大きな声で言った。


「ユウキ様!私達の村『フロンティア』の村長になってください!」


 僕は、驚いて後ずさりする


「で、でもどうして僕なんだ?」


「ユウキ様は、ものの数秒で盗賊を倒し、私達を救ったのも理由の1つですが」


「そこのクロノさんから聞いた情報によると、ユウキ様は勇者だったんですね」


 他の村人もびっくりしている。


(なんで、情報を渡したんだ?)


(我は何も知らん)


 あっ、今そっぽ向いた。確信犯だな。


「村長になるのはいいけど、役に立てるかなぁ?」


「そんなことないです。たまに襲ってくるだろう盗賊を追っ払ってくれればいいんです」


「それならいいけど…でも、僕が必ず強いわけじゃないよ?」


 世界一強いわけじゃないし。


「そうです。私は納得できません!」


 ファラルの後ろの方から声が聞こえた。


 スタスタと僕の目の前に来たのは、綺麗で気の強そうな天使族の1人だった。


「紹介しますね、彼女は天使族のシドレといいます。そして、気が強く、最後まで貴方を村長にしたくなかった人の1人です」


「わたしの力で試してやる!こっちに来い」


 やる気がたっぷりで、今にでも殴りに来そうな雰囲気だ。


 彼女の後ろで歩きながら、町の外まで来た。村のみんなもついてきている。


「では、我が審判をやろう」


 いつの間にか人の姿になっているクロノが、服を着ながらそう言う。


「ではいくぞ、はじめ!」


 始まるとほぼ同時にシドレは消え、俺の不意を突き、顔面を殴った()()()()()()


 だが、実際は違う、俺も自分の実力を試したくて、生身で受けたのだ。


「痛くないな…」


「お前!なぜ防御しない!」


 意外と痛くなく、本当は手加減してくれたのではと思ってしまった。


「一応聞くが、手加減してないよな?」


「そんなのことをする私ではない、だから、お前もかかって来い!」


 彼女は頭に血が上って少し顔が赤くなっている。


「わかった、ではこちらかも手加減なしで行こう」


 僕はそういうと、早速手を『硬質化・超』で硬くして、相手が見えないであろう速さで背後に回り、背中に一発入れる。


 拳の威力は、予想では『経験複製体』の限界突破なしで、クロノの鱗を割れるほど強くなっている。


 メキッ


「グハァ!」


 骨にひびが入った音がしたシドレは何もできないまま、10mくらい吹っ飛んだ。


「起きないなぁ」


 彼女は、数秒間待つがなかなか起き上がらない。


「シドレ選手がノックダウン、勝者、勇者様」


 クロノが試合の終わりを告げる。


 試合時間は約15秒ほど、僕の少し強い異能力ありの一発で倒れる。


 意識のないシドレは村人に介護されながら家に戻る。


「これで大丈夫だったか?ファラル」


「はい、彼女達には、言葉の会話より拳の会話の方が伝わります」


 この世界の天使族、武闘派すぎる。


「ほかの否定派の皆さん、これを見てまだ何か言いますか?」


 ファラルは、ほかの否定派らしき2人の天使族エンジェルに圧力をかける。


「私達のなかで一番強いシドレが一発でやられたなら文句ありませ~ん」


 もう一人は、一生懸命に首を振っている。


 後で知ったが、彼女たちの名前は、アレグロとアンダンテというらしい。


「これで、全員賛成ということでいいですか?」


 みんな同時に頷く。


 僕の方を見てファラルが言う。


「まだ非公式ですが、これからよろしくお願いしますユウキ村長」


「公式的なものは、明日やりましょう」


 僕とクロノは、1代前の村長の家を案内してもらった。


 ミラルは自分の家に戻ったようだ。


「ユウキ村長、明日は、任命式と村の住人の種族を説明いたします。ではまた明日。」


「ああ、ありがとう、じゃあまた明日」


 正直不安だが明日が本当に楽しみだ。


 そう思いながら、僕は、ふかふかのウールのベットで目を瞑る。


「久しぶりのベット……明日が楽しみだ……」

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