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4 エリカル誕生

4

それから、2日後に、コスメは、また雑誌出版社にやってきた。

「ねえ、こないだの子、会えそうかしら。」

「ああっ、聞いてみたら、やっぱり、ごめんなさいって、断られたわ。」

「そうなのね。なるほどなるほど。じゃあ、その友達に会うのは大丈夫?」

「どうしたの?なんだか、やけにこの子たちに気になってるじゃない。なんか、ひらめいた?」

「そうね。そんなところかしらね。とにかく、会いたいのよ。いつでも、都合をつけるから、約束を取り付けてね、お願いよ。」

「わかったわ。」


そして、リカにわけを話すと、

「私に会いたいって言うの?だって、私は、市役所勤めで、他には別におしゃれでもなんでもないし、こないだの友達みたいにメディアに出るつもりもないしね。どうして、私なんかに、会いたいのかしら。」

「たぶん、あなたに言って、こないだの知り合いの子を、紹介してほしいんじゃない。そう言ってたわよ。」

「そっか、じゃあ、直接会って、断らないといけないのね。わかったわ。」


例によって、なぜかいつものカフェ。あさみもくるから、そうしたのだろう。

「あさみ、あの子、絶対にくるわよね。」

「ああっ、それなら大丈夫よ。」

少し遅れて、リカがやってきた。あさみもいるし、見た目は、当然、市役所と同じである。

「ごめんなさい。遅くなって、脚立理香といいます。宜しくお願いします。」

「今日は、忙しいのに、ごめんなさいね。私は、小染真希。モデル事務所モデルラボの社長です。」

「いえいえ、大丈夫です。ところで、記事に載った知り合いのことですね。あの子は、やっぱりもう雑誌に載るのはできないって、言ってました。」

「そうなのね。その子のことは、もういいの、あきらめるわ。ところで、今日は、本当に会いたいのは、あなたよ、脚立さん。もう、単刀直入に話すわね。あなた、モデルをやらない。」

ううっ、なんという直球な申し出!まさか、私のことがバレた?

「えっ、そんな。私は、見た通り、そんなタイプじゃないです。おしゃれとかもしないし。」

「そうね。それなら、言うけど、あなたの知り合いって、あなた本人でしょう。それから、あなたって、今の見た目は、どうして、そんなに変えているの?」


なんということ、この人には、すべてお見通しなのかしら。ちょっとだけ、ねばって様子を見ようかな。

「いえいえ、そんなことないです。これが、私の普通なんです。」

「私ね。今は、モデルラボっていう、モデル事務所の社長だけど、以前は、メイクアップアーティストとして、世界的に活躍していたの。だから、どんなにメイクをして、顔を変えても、元の顔は、すぐにわかるわ。今回は、モデル事務所の社長として、真剣にあなたにお願いにきたのよ。メイクをして顔を変えても、あなたのその逸材としての素質は決して隠せないのよ。誰もわからなくても、私の目はごまかせないわよ。」


驚いたあさみ、動揺が隠せない。

「コスメ、それって本当?リカは、こんなに地味な人なのに、とてもモデルだなんて。私には、信じられないわ。」

「無理もないわ、あさみ、ちょっと待っててね。脚立さん、もういいのよ、かくさなくても。私には、もうわかってるわ。さあ、トイレに行って、本当の姿になって戻ってきて、いつものあなたを見せてちょうだい。お願いよ。」

リカは、もう万事休すと思った。ゆっくりと、カフェのトイレに消えていくリカ。


そして、ウィッグをとり、髪を整え、今の地味メイクをとって、自分のメイクをやりなおして、10分後、素顔のリカが戻ってきた。すると、わかっていたとはいえ、思った以上の美しさに驚くコスメ。そして、当然、奇跡を見たかのように驚きを隠せないあさみ。


「あなた!脚立さん、あなた、ここまでとは、思わなかったわ。ええっ、私、あなたのことを軽くみていたのかも。これほどとは思わなかった。あなたのこと、少しは期待していたけど、その遥か上を行ってたわ。」


すると、あさみは、さらに驚きすぎた。

「ええっ!リカ、本当にあなたなの?こんなに美しいなんて、こんなに綺麗な人に会ったことないわ。昨日までの、とても私の知っているリカじゃない。」


コスメは、興奮を抑えながら、言葉を続ける。

「実は、今、モデル業界では、フェレナというモデルが大ブレイクしていて、その人気はずば抜けていて、どのモデルもとてもかなわない。どのモデル事務所も、対抗できるモデルを必死に探している最中なのよ。しかし、あなたなら、絶対にフェレナに勝てるわ。というか、今勝てるのは、あなたしかいないわ。ぜひ、うちに来てほしい。」

「実は、私は、プライベートを知れてしまうのがとても苦手で、芸能関係には出たくないのです。どうしてもそれはできないんです。」

「あなたが望むことはどんなことでもしてあげる。もちろん、プライベートは隠して、本名はもちろん、どんなことも非公開にして出したくない情報は一切出さないわ。それでもダメかしら。あなた、その美貌をみて、たくさんの人が幸せになれるのよ、モデルをやらないなんて、もったいなさすぎるわ。どうかお願いよ。」


すると、やっと冷静になったあさみが、

「リカ、私、モデルのことは、正直言ってよくわからないけど、あなたって、モデルになるために生まれてきたんじゃない。だって、今、あなたをちょっと見ただけで、あなたの美しさにこんなに感動しているんですもの。どうか、ぜひモデルをやってほしいわ。私からもお願いしたい。」


元々、リカは、その美貌からでるオーラも半端ではなかった。この時にも、オーラがすごく、ここで2人は、それを浴びてしまったのであろう。もはや、それは止められなかった。

その後、2人揃って、リカを説得する。まさかの、あさみからの説得は、一般人としての仕事目線ではない、エンタメからの目線による説得に、リカは考え方を変えた。多くの人たちを楽しませるという理由から、やる気が沸々と湧き上がってきた。とうとう、モデルラボへの登録を決めたのだった。


初めて、モデルラボにやってきたリカ。待ってましたと、迎える社長、コスメにスタッフたち。

「きたわね、リカ。」

「これから、宜しくお願い致します。」

「それじゃあ、事務所のスタッフを紹介するわ。受付担当の妻咲つまさき ひとみ、マネージャーの獅子童 灯 (ししどう あかり)、経理担当の、金堂こんどう とおる 、カメラマンの蓮津光 (はすづ ひかり)、よ。」

(4人揃って)「宜しくお願いします。」


「妻咲 瞳よ。よろしくね。ひとみさんでも、ひとみ、って呼んでもいいわ。」

「私、獅子童 ししどうあかりよ。脚立さん、よろしくね。呼ぶ時は、あかりさんでいいわよ、ししどう、って呼びにくいのよ。リカさんでいい?」

「はいっ、私は、リカ、でいいですよ。」

「リカさん。僕は、金堂。きんさん、って呼んでね。」

「リカさん。僕は、カメラマンめの蓮津 光、れんさん、って呼んでね。」

なぜか、みんな揃って難しい言いにくい名前ばかり。でも、簡単な呼び名があるから、かえって親近感があっていいのかも。

「さて、リカ、今日から、あなたのモデル名は、エリカルね。ちょっと難しいけど、本名じゃないし、ちゃんと意味がある名前だからね。これからは、スタッフも関係者も、エリカルと呼ぶわよ。気をつけてちょうだいね。みんなも、今日から、リカは、エリカルよ。よろしくね。それから、早速で悪いけど、今夜、モデル関係の会社やプロダクションのパーティーがあるから、私と一緒に出てね。あなたの顔を見てほしいからね。これは、業界へと、フェレナ・本名 来部くるぶ 玲奈れなへの宣戦布告よ。楽しみだわ。」


パーティーは、6時から行われ、コスメもエリカルも、予想以上に着飾って出席する。ある意味で、エリカルのお披露目なのだから、仕方ない。エリカルは、こんなパーティーは、初めてだったし、初めての派手目な衣装はちょっと恥ずかしかった。多くの関係者に、コスメはエリカルを事務所の新人ですと、次々に紹介していく。すると、まだまだ素人だというのに、やはりエリカルの美貌は、会う人毎に強い印象を与えてゆく。コスメも、その人たちの表情から、良い反応を読み取っていた。これが、コスメの第一の目的だった。だいたいの関係者への紹介が終わると、コスメはエリカルに言った。


「これから、紹介する人は、最も大事な人だから、しっかりと自信を持って自分の魅力を見せつけるつもりで名乗ってちょうだいね。よろしく頼むわね。」

「あっ、はい。大丈夫。頑張ります。」


すると、長身の女性へと後ろから近づいてゆくコスメ。ついてゆくエリカル。

「ごめんなさい。ちょっとよろしいかしら。」

声をかけると、全身、黒いスーツに身を包んだ女性がゆっくりと振り向いた。

「はいっ。まあ、モデルラボの社長さん、コスメ、と呼んでもいいかしら。ご無沙汰してます。」

エリカルは、ここまできて、生まれて初めて、プロのモデルの本物を目の前で、生で見たのだった。彼女こそ、今、モデル業界で最も頂点に立つモデル フェレナであった。目の前で見た彼女のその美しさに、エリカルは思わず、圧倒された。


「今日は、うちの事務所の新人のエリカルを紹介しますね。まだ、今は素人に近いようなものだけど、本当に、事務所としても自信があるし、これからだから、見ててちょうだいね。よろしく。」


すると、

「はじめまして。リカさん、じゃなかった。今は、エリカル、で、いいわね。実は、あなたのことは、聖美少女女学園のことから、知ってるわ。あそこは、全国で1番の美少女揃いの女子校だもの、調べさせてもらったわ。あそこの生徒会会長を相手に、美人評価値で奇跡の数値を出して、新たに生徒会長になりかわって大改革をしたそうね。あの学園で、トップの評価値を出すのは並大抵のことじゃないわ。もっとも、今のあなたの見た目からなら、ぜんぜん納得できますけど。あなたのことは、その頃の写真しか、見たことなかったけど、素晴らしかった。でも、あれから5年だった今のあなたは、成人して、あの頃よりも、さらに美しくなってるわ。同じ現場に立つ者として、とても嬉しいわ。今、他になかなかいいモデルがいないもの。しかし、正直言って、モデルデビューが意外に遅かったわね。でも、あの女子校の頃の写真を見て、あなたは、絶対にいつかモデルデビューすると思っていたわ。だって、絶対に周りがほっておかないもの。やはり、私のことを周りがほっておかなかったようにね。それをコスメが発掘したのね。良い人に出会ったわね、エリカル。次に会う時は、モデルの現場で会いましょう。」


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