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マルレーネと侍女イルゼの話②


「気合いがから回っておりますよお嬢様。さあ、モーナ、カレン。そこに並べているドレスもアクセサリーも全部衣裳部屋に戻して頂戴」


モーナとカレンが、「どういたしますか?」とわたしの方を見ます。


あ、ちなみにこの二人、元々うちの侯爵家のヒラの侍女だったんだけど、わたしが『呪い』を受けている時に、わたしの専属となり、そのまま今も専属継続してもらっているのです。だから立場的に、イルゼがわたしの筆頭専属侍女、モーナとカレンはイルゼの部下……という感じになっています。


「ちょっと待ってイルゼ。せっかく並べたのを片付けてどうするのよっ!」

「片付けないと他のドレスが並べられないんです」

「へ?他のドレス?」


だって今ここに並べているのって、わたしのお気に入りの、自慢のドレスたちよ?他のドレスって……?


「いいですか、マルレーネお嬢様。明後日は初めてのデートです。しかも『ロイヤル・ゲープハルト』にご招待されているんですよ」


『ロイヤル・ゲープハルト』が何かというと、簡単に言えば王家主催の競馬レースです。国王陛下や王妃様も参加される公式行事。


わたしがギード第二王子の婚約者だった時にはご招待されなかった……というより、ギードが勝手に欠席にしていたようだけど。


エードゥアルト様も王位継承権を放棄して、学園長として、一応臣下降下した感じだったから、不参加を貫いていたのだけれど。今回はユストゥス・ダヴィート・ゲープハルト王国現国王陛下から直々に招待状を頂いてしまったのです。


つまりは、第二王子に婚約破棄されたわたしの瑕疵にならないように、陛下の後見がありますよ。エードゥアルト様も、公式的には王族ではなく、貴族学園の学園長且つ領地を持たない名前だけのアトキンソン伯爵なんだけど、現国王っていう最強のパトロン?が付いているんだよ。つまりは侮るなよっ!って威嚇するためのもの……という側面もあるのですよこの初デート。


「うん、そうよ。だから気合いでドレス選びを……」

「本当にわかっていないですねお嬢様。初デートで婚約者を威嚇するような、そんなド派手な色のドレスを選んでどうするんですっ!」


いや、エードゥアルト様を威嚇するんじゃなくて、エードゥアルト様を見下すようなそんな不遜な貴族たちが、もしも居たら、それに対抗しようかなーって考えていたんだけど。


だって、わたし、まだ、このゲープハルト王国でもなかなかの権力を持つエイラウス侯爵の娘ですからねっ!権力バリバリよっ!


「しかもクリノリン・スタイルのドレスって……」

「えー?どこが悪いのよクリノリン」


クリノリンって何かっていうと、弾力のあるクジラのヒゲとか針金とかをね、丸いカゴのようにつなぎ合わせたアンダー・スカートなのよね。簡単にスカートのボリュームを生み出すことができるって、隣国で流行っていたのが、最近我がゲープハルト王国にも入ってきたの。だから流行最先端よ。


それにこれ、画期的な大発明だと思うのよね。


ペチコートやシュミーズを幾重にも重ねてドレスのスカート部分ふくらませるのってね、重いし暑いのよ。冬ならともかく夏は地獄よ。ファッションは我慢なんていう人もいるけど、それにも限界ってものがある。クリノリンならスタイルを保持しつつお軽やかに見えるのに。


「ドレスコードに反しています。それにデートの最中ずっと立ちっぱなしでいるつもりですか?馬車ではどうするおつもりですか?クリノリンは座った時に骨組みが足に食い込みますよっ!」

「えっ!」


そ、そうなの?えええええっ!


「ドレスコードについては後程申し上げますが。それが無くてもクリノリンは無理です。いいですか、先ほど外出した時に、実際に見てしまったのですけどね。馬車の御者が、クリノリン・ドレスをお召しのご令嬢に言っていたんですよ。『すみませんが、クリノリン外して貰えないと馬車に載せられません。馬車の入口よりもスカートの方が大きいです』って」


いやーっ!マジかっ!


「で、大通りでクリノリンを外して、その外したクリノリン、馬車の外にロープで括りつけてから、そのご令嬢、馬車に乗っていましたよ」


み、みっともなーーーーーーーいっ!


「マルレーネお嬢様。エードゥアルト学園長との初デートで、そんな不格好な姿を見せたいんですか?このお屋敷から『ロイヤル・ゲープハルト』の会場まで馬車で約一刻ほど。その間ずっと馬車の外に、ぶらんぶらんとクリノリンぶら下げます?」

「いいいいいいいいいやああああああああああああああああっ!」




続きます

金曜日更新予定。

どうぞよろしく!

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