マルレーネと侍女イルゼの話①
第二回アイリス異世界ファンタジー大賞、銀賞受賞しました!ひゃっほーいです☆
初デート。
なんて美しい響き……。うっとり……。
前世と今世、併せても初めてのっ!ええ、正真正銘初めてのデートっ!ですよっ!ひゃっほーい!!
前世はねえ……大学にどうしても行きたくて、勉強して合格して。
で、入学した後はアルバイトと奨学金で生活費と学費を自分で賄っていて。
ひたすらに勉強・バイト、勉強・バイトの繰り返し。たまーに一人暮らし先から実家に帰って祖父母たちの介護のお手伝い……でしたからねえ……。カレシ?何それ?どこの世界の外国語?って感じの生活を送っておりました。
前世の親が生活費や学費を出してくれなかったのかって?
あー、それね。
高校までは出してやるけど、その後は自分のことは自分でやりなさい、お金は出さないよーっていう感じでしたわ。その代り、祖父母たちの介護は気にしなくていいから自分で自由に生きなさいって。
……まあ、親もビンボーだったしね。仕方ないの。
だって、祖父母たち合計四人、全員要介護だったんだもの……。
余裕なんて全くなかっただろうしねぇ。うん、わたしにジジババの介護、押し付けずに自由にしてくれた、それだけでも、わたしの前世の両親はすごい、ありがたいと思うんだけど。公的補助受けていてもお金なんて無かったし、それ以上に時間もなかったのよ、前世の両親。
……でもね、そんな状況だったから、カレシとか作るなんてこと、考える暇も無かったのよね……。
就職してからも、奨学金の返済でひーひー言っていたしでね。
デートなんて、何それドコの外国語?ですよ。まったくご縁がありませんでした。
うん、まあ、仮にカレシができたとしても、あの状況ではデート代なんて出せないだろうしね。いや、カレシという存在が、仮にデート費用を全部出してくれたとしても、そのデートに着ていく服も買えなかったからねえ。
お金がないって辛いわ……。
侯爵令嬢に転生して、前世の記憶を取り戻した当初は、ホント豪華な食事や自分のドレスに眩暈がしたものです。自分の部屋の調度品、触って壊したら弁償金支払えんっ!って戦々恐々としていた頃もあったわね。
今はもうすっかり慣れたけどね!
というか、前世でビンボーだった分、今はドレス選びとか、本当に楽しいのよう!わーい、神様ありがとう!!
というわけで、わたし、ただいまデートの準備に余念がありません!
わたしの部屋にずらりと並べられたトルソーには赤黒金銀、様々なドレスが並べられています!
「初デート……。エードゥアルト様と初めてのデート……。大人のエードゥアルト様に似合うように、わたしも大人っぽいドレスで……ふっふっふ」
何せね、これでも乙女ゲームの悪役令嬢だったわけですよ。
美人っ!
妖艶っ!
年齢よりも大人の女性に見えるっ!
まあ、乙女ゲームの悪役令嬢に、平凡日本人のわたしが入っちゃったものだから、その……なんと言いますか、一見妖艶、だけど気を抜くと妖艶の「よ」の字はどこ行った?みたいな雰囲気になるけど。まあ、気にしなーい。
大事なのは、わたしは年相応よりも、ちょっと大人に見える外見の持ち主ってトコロよ。
年の差があるエードゥアルト様と並んでも「大人と子供」みたいには思われないで、ちゃーんと婚約者に見えると思うのよねっ!
だけどやっぱり、「兄が妹に付き添っているだけ」とか「年の差があるから婚約者には見えない」とか、ちらとでも思われると悲しいし。
それにね、なによりね。エードゥアルト様から「綺麗だ」って言って欲しいじゃないですかっ!
ああ……あの麗しの唇から、わたしへの愛の賛辞が……と思うとそれだけでウキウキワクワクのどきどきなのですよっ!
わたしの専属侍女になったモーナとカレンに、あれこれとドレスを並べてもらって、あーでもないこーでもないと言いまくってます。
そんなところに、侍女のイルゼが戻ってきました。
「あら、イルゼ、お帰りなさい」
「ただいま戻りましたマルレーネ様……って、あああ、やっぱりそんなド派手なドレスばっかり広げられてっ!」
「えー?だって初めてのデートなのよ。気合入れるに決まっているじゃないっ!」
イルゼは分かっていないなと言いたげにため息を吐きました。
続きます
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