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【WEB版本編】第七話 急展開にわたくし少々ぼんやりとしてしまったようです。【本編 最終回】

本編 最終回です。


急展開にわたくし少々ぼんやりとしてしまったようです。


ですが、えっと。いうことはつまり。

わたし、もう断罪されたり、縛り首にされたりする……ことはない、のですわよね?

死ぬことも無くなり、平穏な人生を送れるのよね……?

何をやっても運命は変えられないとさえ考えたこともあったのに……。


じわじわと安心感と歓喜……に、虚脱感のようなものが加わって、わたしは多分、呆然としていました。


すると、真顔になったエードゥアルト学園長がわたしの方に向き直り、すっと頭を下げられました。


「……あれの父は国王であるので、頭を下げるわけにはいきません。ですから代わりに私が謝罪をします。マルレーネ・ベネディクタ・エイラウス侯爵令嬢。甥が多大なる迷惑をおかけしたこと、ここにお詫び申し上げます」


頭を下げたまま、微動だにしないエードゥアルト学園長。

わたしははくはくと口を動かすことしか出来ません。婚約が破棄されたので、自動的に解呪はされているのですが、半年以上も声を出さなかったものですから、声帯が弱っているのでしょう。腕も、同様です。リハビリをしなければ。


……と考えたところで、頭を下げたままのエードゥアルト学園長が「それから、」と言葉を重ね、顔を上げた。


「マルレーネ嬢が受けられた何らかの呪いの発信源は……ギードかウィプケ嬢なのかとも思い、調べさせておりましたが、そのような証拠もなく、」


うん、まあ、わたしが自分で自分に掛けた呪いですからね。ギード殿下たちのせいではないのです。


「呪いの原因を探るよりも、解呪のほうを先に考えた方が良いのでは、とも思い、色々と調べさせたのですが……。大神官の戯言のように『真実の愛のくちづけ』以上のものは出ては来ず、」


それはそうでしょうね。この世界にある呪と、わたしの前世の知識をミックスして作り上げたわたし独自の魔道ですもの。


「ですが、一つ試させてほしいのです。この方法でもしかしたら貴女へかけられた呪いが……解けはしないかと」


え?何らかの解呪方法を見つけたのでしょうか?さすが学園長先生。魔道の研究にも余念がない方ですものね。


ですが、わたしの呪いはもう解けているのですよ。ただ半年も動かさなかったものがいきなり滑らかに動かせるというのは無理というだけで。


あからさまに必要ないですよ、もう呪いはありませんよ、という態度を取るわけにはいかないので。わたしはあいまいな笑みをエードゥアルト学園長に向けました。


うん、解呪されたという何らかのパフォーマンスが必要かもしれませんね……。エードゥアルト学園長ならおかしなことはなさらないでしょうし……、学園長が試されることによって、呪いが解けた、というふうに持っていくのもなかなか良いかもしれません。


よし、期待しますわよ!学園長!


エードゥアルト学園長はすっとわたしの前で片膝をついて、動かないわたしの右手を恭しく取りました。


えっと?わたしの手を取って何をなさるおつもりなのでしょうか?


あー、たとえばわたしの手から、光なんかがキラキラ~と輝くようにしていただいたりするのかしら?その手の魔道はきっと学園長でしたらお手のものですわよね!そうしたら「まあ、呪いが解けたわ!」的な演技をすればいいのよね!うんうん。オッケーです。


「マルレーネ・ベネディクタ・エイラウス侯爵令嬢。言葉を発することもできずに、また腕を動かすことも叶わなくなったというのに、それを嘆くことなく学業に邁進する姿。そして何より、穏やかな笑みを忘れないその高貴な心。私は貴女のその姿に心打たれました。正直な話、私はあのギードの叔父であるからして、貴女にこのような申し出は厚かましいと思っています。その上、貴女は今日、この学園を卒業するとはいえ、今はまだこの学園の生徒です。学園長の私が生徒である貴女に告げるべき言葉ではない。ですが、言わせてください」


あれ?言葉?

光がキラキラーとかいう効果じゃないんですか?

何かを言うということは……あー、呪文ですか?「呪いよ解けっ!」とか「堕落した世界を混沌より救済すべく光の守護神よ、今ここに顕現したまえっ!」とかとかちょっと恥ずかしい詠唱とかを唱えてくださるのかしら?それも良いわよね、学園長、声も素敵だし……。



と、思っていたのになんとっ!エードゥアルト学園長はわたしの手に、恭しく唇を落としたのですっ!きゃああああああああっ!


ふわっとした微かな感触。ただそれだけなのに、火傷しそうなほどの熱を感じてしまい、わたしはびくりと身体を震わせてしまいました。震えは手だけに止まらず、腕を伝い、心の臓に達し……、身体の一部に止まらず、全身を巡ります。


熱くて、もどかしくて。どうにかなってしまいそう。


戸惑うわたしの手を離さないまま、エードゥアルト学園長がわたしを見上げてきます。その真摯な視線にどきり……っと大きく、わたしの心臓が跳ねました。


「愛しておりますマルレーネ嬢。どうか私のこの想いが、貴女の呪いを解きますように……」


あ、愛いいいいいっ!神に祈るように真摯な声が、わたしの鼓膜までをも甘く震わせます。


「えっ、あの……、」


わたしは思わず声を出してしまいました。


半年以上ぶりに出した声。掠れて、小さな吐息のような声を、エードゥアルト学園長は聞き漏らしませんでした。


「マルレーネ嬢、い、今……声が……」


驚きに目を見開きながら、エードゥアルト学園長が立ち上がります。


「マ、マルレーネ様のお声が……っ!」

「ええっ!確かに今、聞こえましたわっ!」

「もしや呪いが解けたのかっ!?」

「そうよっ!そうに違いないわっ!学園長先生の愛が呪いに勝ったのよっ!」


エードゥアルト学園長だけでなく、わたしのクラスメイトの皆様方が、次々と感極まったようにお声を発していきます。


あ、あああ、どうしましょう!?


わたしがわたしにかけた呪いは、ギード殿下から婚約破棄を宣言されれば自動的に解呪されるものなのですが……。こんなタイミングで声など出してしまえばまるで……。本当にエードゥアルト学園長の愛が呪いに打ち勝ったようではないですか!


こんな展開は想定しておりませんでしたわ……。ええと、ええっと……。ど、どうしたら。


戸惑うわたしに、エードゥアルト学園長が、いきなりわたしに抱きついてきたのですっ!は、はわわわわっ!


「ああ……っ!奇跡だっ!い、今、貴女の声が……っ!」


エードゥアルト学園長はぎゅうぎゅうにわたしを抱き締めてきます。


「ちょ……っ、おま……くださ……ま……が、く、えんちょう……」


苦しくて。ギギギと軋みそうになる両の腕をなんとか動かして、学園長の体をほんの軽く押し返しました。


「あ、ああっ!腕も動くのだなっ!」


エードゥアルト学園長の瞳が、溢れんばかりの歓喜でキラッキラに輝いています。ま、眩しいっ!まさにイケメンビームっ!


ミアーナ様も、他のわたしのクラスメイトの皆様も、飛び上がって喜びを表しております。それだけでなくこのパーティ会場全体が、今起こった『真実の愛の奇跡』に沸き上がってしまいました!!


「素晴らしい奇跡だっ!」

「真実の愛は本当にあったのですね……っ!」

「学園長の愛が、マルレーネ侯爵令嬢にかけられた呪いを解いたっ!」

「おめでとうございますマルレーネ様っ!」

「マルレーネ様っ!」


四方八方から祝いの言葉を叫ばれて、わたしは目を白黒とさせてしまいました。

いえ、真実の愛なんて、そんな毒りんごを食べて死んだくせに、王子様からのキスで生き返った童話の主人公のようじゃないですがっ!あわわわわ……っ!


いえ、わたしの呪いは婚約破棄されれば自動解呪されるものなんですけど……なんて、言える雰囲気じゃありません!


卒業の祝いはどこかへ行って、会場内が『真実の愛』おめでとう素晴らしいという感じに沸き返っていますっ!


ど、どうしよう……。ホントどうしよう……。


戸惑うだけのわたしに、エードゥアルト学園長がウインクをしてから、わたしの耳元で、小声で囁きかけてきました。


「……真実の愛で呪いが解けた、というほうがロマンチックでしょう?」


え、えええええっと、学園長、わたしが呪いを自分に掛けたってこと、バレてますっ!?

思わずさああああああっと、顔から血が引きそうになりました。


ええと、ちゃんと学園長には白状した方がよろしいのでしょうね。えっと、でも今、周りの皆様が『真実の愛のくちづけが呪いを解いた』と盛り上がってらっしゃるし、わたしも暴露されるのは困ります。


ええと、後日、学園長と二人きりで、そのあたりをお話し合いする必要が……、と考えていると、学園長がくすり、といたずらっぽく微笑まれました。


「大丈夫です。余計なことは言いませんよ。貴女との二人きりの秘密です。……まあ、私が貴女を愛しているというのは掛け値なしの本当ですけれどね」


その言葉にわたしはこのまま昇天するかと思いました。


せっかく縛り首を回避したのに、エードゥアルト学園長が余りにも素敵すぎて死んだなんて……、そんなことになったら……ううう、天国に行くのはまだ早いわ。


望み通り、素敵な男性にプロポーズされたのですよっ!

幸せな花嫁になるまで死ねませんっ!

らぶらぶはっぴー且つひゃほーいな人生が、今、この、わたしの目の前にっ!


今、ここで、この幸せを掴まなければ女が廃るってもんですっ!



だから、さようなら『悪役令嬢だったわたし』


これからは、優しい旦那様に愛される妻としての人生を生きていきます!ひゃっほーい!




このお話にお付き合いいただきましてありがとうございましたm(__)m


一度完結表示したこのお話ですが、長年の友人から「面白かったけどちょっと短いのでもう少し読みたかった」とご意見もらいました。


なので、もう少し、お話を続けようかなーと思います。


とりあえず、6月になりましたら、マルレーネと侍女イルゼのお話を投稿したいと思います。


お待ちいただけると嬉しいですm(__)m


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


誤字報告くださった方、ありがとうございます。感謝です!


日間異世界〔恋愛〕ランキング 2023年3月5日 77位。

                    3月6日 48位→26位。

                    3月7日 8位! 

                    3月8日 6位!!

週間異世界〔恋愛〕ランキング 2023年3月9日 20位。 

                    3月10日 15位!

                    3月11日 12位!

月間異世界〔恋愛〕ランキング 2023年3月10日 85位。

                     3月11日 76位。

                     3月14日 69位


2023年4月2日、ブックマークしてくださった方が1500名様超えました!!

いいねも1200超えです!(((o(*゜▽゜*)o)))

ありがとうございますm(__)m感謝です!

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