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【WEB版本編】第五話 着飾った令嬢や令息たちが集まる貴族学園の卒業パーティ。

着飾った令嬢や令息たちが集まる貴族学園の卒業パーティ。


その前日の夜、侍女のイルゼとは筆談で念入りに打ち合わせを行いました。


多分『断罪の場』で、のたのたと文字をノートに書いている時間はないですからね。

だけど、どんな言葉を第二王子から言われるかくらい想定はできるのです。

だからノートに、わたしが言うべき回答を、事前にいくつもノートに書いておきました。

そして……イルゼとはこう言われたらこれのページを示してくれと伝えてあります。


準備は万端。

さあ、いざ婚約破棄の戦場へっ!!





わたしは婚約者である第二王子にエスコートされることもなく、侍女のイルゼだけを伴ってパーティ会場に足を踏み入れました。


会場の中央付近にいた第二王子ギード・ヴォルデマール・ゲープハルトが、待ってましたとばかりにわたしを睨みつけ、そうして会場に響き渡るほどの大声を出してきます。


「悪役令嬢マルレーネ・ベネディクタ・エイラウスっ!俺は貴様との婚約を破棄し、この可憐なウィプケを妻に迎えるっ!」


勝ち誇ったように嗤うギード殿下と、その殿下の背中にしがみ付いているウィプケ嬢。この場にいる誰もか彼ら二人に視線を注ぎました。


わたしも、表情一つ動かすことなく、二人を見ます。もちろんまだ何も言いません。


「ははははははっ!いきなり婚約破棄を告げられれば、流石のおまえも驚きのあまり声も出せないかっ!よかろう、ならばそのまま黙っていろ。今、お前が俺の愛するウィプケをどんなふうに虐げたのか、皆に伝えてやるっ!」


ウィプケを口汚く罵った。制服のスカートをナイフで切った。教科書やノートを破り、それを池に放り投げた……云々。


聞いて差し上げるのも馬鹿々々しいテンプレート的な冤罪が、ギード殿下の口から語気荒く次々と述べられるました。


「本当にひどいんですマルレーネ様は……。き、昨日だって、あたしにむかって『男爵令嬢風情が第二王子殿下のお傍に侍るなんて身の程知らず』と言って、あ、あたしの頬を叩いてきて……」


くすんくすんと涙を流すウィプケの肩を、痛ましげに第二王子が抱き寄せています。定番のピンクブロンドのふわふわな髪の美少女を、これまた定番な金髪青目の王子様が慰めている図は実に絵になりますね。


お二人をアップで映せばそのままゲームでのスチルそのものです。ですが、そのアップの画面には周囲の様子は描かれてはいませんでしたね。


呆れたように、二人を見る淑女や令息たち。冷ややかな目線。


わたしがイルゼに目配せをして反論を書いたページを示させる前に、わたしのクラスメイト達がざっと一群となって、わたしの前に出てくれました。

先頭に立っているのは先日、わたしがわざと転んだときに、声をかけてくれたミアーナ様です。


「せ、僭越ながら、も、申し上げますっ!マルレーネ様が、そ、そちらの令嬢に向かい、『平民風情が第二王子殿下のお傍に侍るなんて身の程知らず』と仰ることも、そちらのご令嬢の頬を叩くことも不可能ですっ!」


少しどもりながらも、それでも大きな声を上げてくれました。


他のクラスメイト達も、次々とです。


「殿下が今、口汚く罵った。制服のスカートをナイフで切った。教科書やノートを破り、それを池に放り投げた……などということを、いかにもマルレーネ様が行ったように仰いましたが、マルレーネ様はそんなことは致しませんっ!」

「そうです。不可能です。出来ませんっ!」

「そのウィプケとかいうご令嬢が嘘を言っているんですっ!」

「冤罪ですっ!」


皆、第二王子に口答えをするという恐ろしさに震えながら、それでも声を上げてくださったのです!ああ、なんてありがたい。


「貴様らっ!この可憐なウィプケが嘘つきだとっ!?罰してやるっ!名を名乗れっ!」


せっかくわたしを庇ってくださった皆様を、第二王子に罰せさせるわけにはいけません。

わたしは、みなさまと殿下たちの間にすっと身を滑り込ませました。


そして、皆様に向かってすっと頭を下げます。


【庇っていただいてありがとう】


その意が通じるように、ゆっくりと頭を上げてから、にっこりと微笑みます。


そして、第二王子とヒロイン・ウィプケに向き直り、侍女のイルゼにノートを示すようにと、指示を出そうとした時です。


「卒業生を祝う会だというのに、何をしているのかな?第二王子ギード・ヴォルデマール・ゲープハルト」


学園長であるエードゥアルト殿下が会場の入り口より、よく響くお声で重々しく仰いました。

コツコツと、靴音をわざと響かせて、会場の中央のほうへとやってきます。きゃあっ!今日は正装ですのね素敵っ!は、いけないわっ!顔を引き締めなければっ!


「エードゥアルト叔父上……っ」

「ギード、何をしているのか、と私は問いましたが?」


子どもをしかりつけるようにゆっくりとした口調で、エードゥアルト学園長は、ギード殿下に再度問いかけました。


「……婚約を破棄したところですよ。マルレーネはウィプケに対して虐めをしていたんだ」

「ほう……、聞こえてはいたが、再度具体的に言ってもらえるかい?マルレーネ嬢はいつ、どこで、どんな虐めをしたというのか、はっきりとね」

「聞こえていたなら改めて言う必要はないじゃないですか」

「そうか?そのウィプケ嬢やお前が正しいというのなら、何度でも言えるのでは?」

「じゃあ言いますよっ!これまでずっと何度もですよっ!昨日だってそうだ。『男爵令嬢風情が第二王子殿下のお傍に侍るなんて身の程知らず』と言って、この可憐なウィプケの頬を叩いたんですよっ!」


エードゥアルト学園長はじろりとウィプケ嬢を睨みました。


「叩かれたわりに頬は腫れてもいないようだが……?」

「……あたしは治癒の魔道が使えます!すぐに治しましたっ!」

「そうですよ叔父上っ!ウィプケの治癒魔道はすごいのですっ!伝説の『聖女』と同じ治癒魔道使いですよっ!」


聖女……ねえ。治癒の魔道が使えるから聖女で、聖女であるからして嘘などつかない清らかな娘……とか、思っているのかしらねぇ。おバカかしら?本人の能力と性格は別物でしょうに。だいたい治癒程度の魔道なら、わたしの侍女だって使えますよ。


「ふーん、そう……。で、殴られたのが、昨日と。それは……確かなのかい?」

「もちろんです」

「すっごく痛かったんですよっ!あたし、未だにマルレーネ様が怖いです。今だって、そうやってあたしのことを睨んでくるし……」


わたしが喋れないから言いたい放題ですわね。

イルゼにノートを示させて、反論をさせようかと思った時、エードゥアルト学園長が大声でお笑いになられました。


「ウィプケ嬢にギード、お前たちは馬鹿なのかい?腕を動かすことができないマルレーネ嬢がどうやって頬を叩く?喋ることができないというのにどうやって罵り言葉を発するのかな?」


笑う……ではなく嗤うですわね。エードゥアルト学園長は意地の悪そうなお顔を作り、ギード殿下たちに向けました。





お読みいただきましてありがとうございます!

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