【 番外編5 マルレーネとエードゥアルト 】
最後はやっぱりこの二人で。
マルレーネが無人島から生還したしばらくの後。離れていた間をうめるようにとたくさんの話をした。
最初は、私に凭れ掛かり、うっとりと頬を染めながら「まあ、そんなことが?」と、興味深く私の話を聞いていたのだが……。
マルレーネの兄であるルフレント殿の発言を述べた時、マルレーネの顔は固まった。
具体的にはルフレント殿の、
「無人島に飛ばされたご令嬢ならすぐに死ぬ? ウチのマルレーネはその辺の土や草を食べてでも生き延びるだろうよ。その程度の根性、軽く持ち合わせているからなっ!」
という、言葉を聞いて、マルレーネは堅く拳を握りしめた。
「……我が兄はわたくしを一体何だと思っているのかしら……。草? 土? そんなもの食べずとも、あの島にはちゃーんと食べられるものがたくさん自生していましたわよっ!」
兄妹のお話し合いが必要ですわねっ! と、力を籠めすぎて、ふるふると震える拳に、私は自分の手をそっと乗せる。
「……生きていてくれてよかった」
「エードゥアルト、様……」
「生きて、こうして、貴女を抱きしめることができる」
マルレーネが居なくなった時の、あの時の絶望や無力感。
そんなものを二度と味わいたくはない。
私は引き寄せたマルレーネを強く抱きしめる。
私の胸に頬を寄せながら、マルレーネは言う。
「大丈夫、ですわ。わたくし、エードゥアルト様のお傍にずっといます」
柔らかな、マルレーネの声。
「それに……もしも、また、何かあって、わたくしがエードゥアルト様のお傍から離れるようなことがあっても。何度でも、わたくし、貴方の元へと帰りますわ。ええ、絶対です」
マルレーネなら、きっと大丈夫だろう。
それを頭で理解できても、感情はそうはいかない。
たとえ普通では知りえない知識をマルレーネが持っていたとしても。絶対に無事などと言うことはこの世の中にはない。
多分、私は震えていたのかもしれない。マルレーネは私を抱きしめる手を強めた。
「エードゥアルト様だって、今回のようにわたくしを探し出してくださるでしょう?」
「ああ……もちろんだ」
「ですから、大丈夫なんです。わたしたちは離れ離れにはなりませんわ」
「だが……」
顔を顰める私に、マルレーネは「ご安心ください。わたくし、この世界をお作りになった神さまの秘密を知っていますから」と言って、少しだけ遠くを見て微笑んだ
「神様の……秘密?」
突然何を言いだしたんだろう。私は首を傾げた。
「そう。エードゥアルト様には特別に教えて差し上げますね」
悪戯っぽく笑ってからマルレーネは言った。
「この世界を作った神様はですね、基本的にハッピーエンドと言いますか、悪役令嬢が困難を乗り越えて幸せになるという物語が大好物なんですよ。その長いお話をしたいと思うのですけど……。その荒唐無稽なお話を、エードゥアルト様は……信じてくださいますか?」
私は「もちろん」と答えて、今度は私がマルレーネの長い、長い話を聞いた。
長々と番外編にお付き合いいただきましてありがとうございましたm(__)m
応援してくださった皆様のおかげで、もともと2万文字程度の短いお話で、一度完結したこの『ひゃっほーい』が、一迅社様より書籍化となり、勢い余って、番外編だのなんだのとたくさん書き続けることができました。
ありがとうございます。
多忙のため、感想欄は閉じておりますが、拍手やいいね、ブクマや評価に支えられています。
本当にありがとう。書き続けられるのは皆様のおかげです。
まだまだマルレーネたちのお話を書きたいなーとは思ってはいるのですが……。
けれど、このお話以外にも、まだまだ書きたい話が山のようにあったりします。時間が欲しい……。
当面は、とあるコンテストに参加したいので、なろう様ではなく、カクヨム様のほうにて『「醜い嫉妬はするな」と婚約者が言ったから』という話の連載版を優先して書いていくつもりです。締切が7月……おおう、締め切り日までに完結できるかな……ああう。
それから、『ひゃっほーい』ではない別のお話ですが、来年、コミカライズさせていただくことになりました!
夢のコミカライズ!
どのお話が、どこでコミカライズされるなどの情報は後日。
ということで、『ひゃっほーい』はこのお話を持ちまして、完結とさせていただきます。
ここまでお付き合いいただきまして、ありがとうございました。
皆様の毎日が『ひゃっほーい』でありますように、願いと感謝を込めて。
またどこかでお会いできれば嬉しいです。