表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

16/28

書籍化! まもなくです記念! 『ユメアイ』登場人物紹介的ショートストーリー

本編第一話に登場する「職場の先輩」とその妹による乙女ゲーム『ユメアイ』の登場人物紹介です。


「うぉりゃああああああっ! 『ユメアイ』攻略ノートっ! 完っ成えええええっ! ひゃっほーいっ!」


……玄関を、開けた途端に響く雄叫び。

あたしは糸目になりながら、それでも脱いだ靴をきちんと揃えた。それから洗面所に向かう。手洗いうがいは大事だからね。……というよりも、テンションの高すぎるお姉ちゃんに帰宅の挨拶をするのは、できる限り後にしたい。

などと思いつつ、リビングに向かわざるを得ない。なぜならあたしの部屋はリビングのその先にあるからだ。


「……ただいまお姉ちゃん」

「おうっ! お帰り我が妹よっ! 早速だが見てくれたまえ、この素晴らしき『ユメアイ攻略ノート』をっ!」


……口調までもがどこかのアニメキャラのよう。あああ、まったくもう。ウチのオタ姉め。

げっそりとしながら、それでも差し出されたノートを開く。


お姉ちゃんの特徴的な丸っこい字で埋め尽くされているノート。それからデフォルメされたキャラクターたちの可愛い感じのイラスト化で書かれている。プロ並みに上手いそのイラストの横に、漫画の吹き出しみたいな丸い線が引かれていて、自己紹介的な文章が書かれていた。


「えっと? 『わたくしはマルレーネ・ベネディクタ・エイラウス。王立ゲープハルト貴族学園に入学した今は十四歳。断罪されてしまう卒業パーティ時は十六歳ね。ちょっと変わった身体操作系の魔道の持ち主で、第二王子ギードの婚約者。ヒロイン・ウィプケが攻略対象としてギード殿下を選ぶと、わたくしは断罪されて破滅するの。それからヒロインがすべての攻略対象者をモノにできる逆ハーレムエンドでも、他の悪役令嬢と共に破滅する運命……。ああ、悪役令嬢は辛いわ……』デスカ?」


淡々と、最初のページに書かれている文字を音読。

すると、お姉ちゃんの目は爛々と輝いた。


「そうなのよ~。これがね、アタシが今イチオシの『悪役令嬢』マルレーネっ! 美人でしょ?」

「……キラキラのイケメンたちよりお姉ちゃんは『悪役令嬢』が好きなのね……」


ため息をつきながらページをめくる。次のページに描かれていたのはよく似た顔立ちの、美中年と、美青年と、不機嫌顔の美少年の三人だった。みんな金髪青目で、一見すると王子様みたい。


「あ、この三人はね、親子なのよ。まずゲープハルト現国王ユストゥス・ダヴィート・ゲープハルト陛下でしょ、それから陛下の息子で王太子のエルネスト殿下。あ、エルネスト殿下は『ユメアイ』の攻略対象よっ! 王太子ルートの場合の『悪役令嬢』はマルレーネじゃなくて、こっちのページのエリーゼ嬢」


言いつつお姉ちゃんは別のページを指し示す。そこに描かれていたのは優しげな風貌の、焦げ茶色の髪の毛をしたお嬢様。


「だけど、エリーゼのお話は後でっ! まずはマルレーネよマルレーネっ! マルレーネの婚約者はこの不機嫌面した第二王子ギードっ!」

「ああ、そう……」

「このギード殿下がねえ。何ていうか、拗らせ野郎? 出来の良いエルネストとかマルレーネに嫉妬するんだわ」

「ということは、王太子殿下と悪役令嬢マルレーネはかなり優秀って設定?」

「イエーッス! もっちろんっ! で、こっちのページのがヒロインちゃんなんだけど……」


またもやペラリとページをめくる。するとそこに描かれていたのはピンク色の髪にピンク色の瞳をした女の子。


「うわっ! 可愛い……」

「ヒロインちゃんのウィプケだよ。我ながら可愛く描けたと思うんだけど。あ、ちゃんとした絵はこっちね」


ゲームのパッケージの絵を見ても、もんのすごい可愛かった。


「さすがヒロイン……。コレは一目ぼれするくらい可愛いな……」


思わずぼそりと呟いてしまった。それくらいパッケージのヒロインの絵は素晴らしく可憐だった。


「アタシは悪役令嬢派だけど、妹ちゃんはヒロイン・ウィプケ派かあ……」

「いや、別に。可愛いなって思っただけで、ナニ派とかいうわけじゃないけど……」

「ああ、いーのいーの。興味を持ってもらえただけでもお姉ちゃんは嬉しい」


へへへと笑うお姉ちゃん。……仕方ないなあ、お姉ちゃんがこのゲームキャラの話をしたいなら、聞いてあげよっかって気分になる。まあ、正直なところ、あたしは現実でカレシ作って幸せになりたいから、ゲームキャラになんてこれっぽっちも興味はないんだけど。


とりあえず、パラパラとノートをめくる。

すると、優しげな風貌の銀縁眼鏡の男性が描かれているページがあった。


「これも攻略対象ってやつ?」

「ん? ああ、エードゥアルト・リュトヴィッツ・アトキンソン学園長ね。残念ながらモブだよ~」

「そーなの? けっこうイケメンなのに」

「えっとねえ、エードゥアルト学園長は国王陛下の異母弟で、エルネスト王太子とギード第二王子の叔父。双子の姉がジョセアラね。そのジョセアラには子供が二人。下の娘がリコリーナちゃんて言うんだけど、」

「待ってお姉ちゃん、誰がどういう関係……」


一気に言われてもちょっと混乱。


「ああ、親族関係だと思ってもらえればそれでいいよ。だってエードゥアルト学園長もリコリーナちゃんも『ユメアイ』では単なるモブだし」

「そーなの?」

「うん、だけどもしも『ユメアイ2』なんていうのが製作されるのなら、このリコリーナちゃんは『2』の『悪役令嬢』になるんじゃないのかなーっていうのがネットの噂」

「へー……」

「モブなのに、なんか設定詳しすぎるくらいに詳しいの。あ、このリコリーナちゃんだけでなく、マルレーネの兄のルフレントってのもいるんだけど」

「あー、悪役令嬢の兄?」

「そうそう。マルレーネの兄のルフレント。『ユメアイ』ではほとんど活躍しないってのに、設定が異様に詳しいのよ。『表向きは人好きのする性格を装っておきながら、陰で良からぬことを画策している』ような細目悪役顔とか。過去に婚約者がいたんだけど、婚約者の領地ごと、婚約者を消滅させたとか」

「消滅って……魔王なの?」

「だから、もしも『ユメアイ2』があるならね、『ユメアイ1』で破滅させられたマルレーネの復讐に立ち上がったルフレント! とかになったり、魔王はともかく復讐の鬼になったルフレントを『ユメアイ2』のヒロインが愛の力で調伏! とかだったり、『悪役令嬢リコリーナ』がルフレントと手を組んだり、対立したり……」

「待ってお姉ちゃん、それ、公式展開?」

「ううん。現状ではネットの噂」

「も、妄想激しいのね……皆さん……」

「いやー、でもそんな噂が回るくらいに設定詳しくてさ。まー、でもやっぱり妄想って言うのなら、悪魔化したルフレントお兄様が妹マルレーネを生き返らせてこの世を支配するっていうくらいの展開だと嬉しいわ」

「それ既にジャンルが違うんじゃあないの?」


乙女ゲームでしょう『ユメアイ』って。


「いいのよう、もーそーだから☆」


おねえちゃんは「あはは」と笑う。


「根拠の無いこーゆー妄想話、してる時が一番楽しいって」

「そ、そう……なの……ね……」

「まあでも、せっかく我が妹が『ユメアイ』に興味もってくれたんだから、アタシのイチオシ『悪役令嬢』マルレーネが登場する第二王子ギード殿下の攻略ルートについて説明しましょう!」


爛々と輝くお姉ちゃんの瞳。付き合っていられないや……と、あたしは自分の部屋にさっさと逃げた。




『ひゃっほーい』の登場人物ではなく、あくまで作中の乙女ゲーム『ユメアイ』の登場人物に対する「先輩」の妄想爆裂ですが。お楽しみいただけましたら嬉しいです。


書籍、本当にもうすぐ発売です! ああドキドキ。


タイトルは『悪役令嬢は素敵な旦那様を捕まえて「ひゃっほーい」と浮かれたい 断罪予定ですが、幸せな人生を歩みます!』と改題され、3月4日に発売となります(*´▽`*)


書籍のほうは、こちらのサイトに掲載している話を元に、内容量大幅アップ! 

十万文字くらい書き足しました! ラブいちゃ度も大幅アップ! 『ひゃっほーい』感もマシマシです!


イラストレーター様は中條由良先生です。


一迅社様のサイト https://www.ichijinsha.co.jp/iris/の「新刊情報」のページにて、素敵な表紙をご覧ください! 

エードゥアルト様、マジ素敵♡

「お知らせ」のページでは「アイリスNEO 3月4日発売作品★購入者特典購入者特典」についてもアップされております。


書籍のほうはひと段落つきましたが、WEBのほうではまだまだ書きますよ!

『ひゃっほーい』番外編を順次投稿!

今、準備していますので、もうちょっとお待ちくださいませ。


投稿予定は以下の通り ↓


【 書籍化記念・その1  マルレーネ、転生前の思い出 】

  3月8日投稿予定

  以下、だいたい金曜日に更新します。


【 書籍化記念・その2  マルレーネ、兄ルフレントの婚約予定者を知る 】

【 書籍化記念・その3  リコリーナ視点、予約じゃなくて、決定で 】

【 番外編1 ヒロイン・ウィプケの話 】

【 番外編2 元婚約者・ギードの話 】

【 番外編3 国王・ユストゥスの話 】

【 番外編4 王妃・アニエルカの話 】

【 番外編5 マルレーネとエードゥアルト 】


書籍版からの新キャラもいますが、お楽しみいただければ幸いです。


新装開店リニューアル、初心に戻って頑張ります的な気分で、今後ともどうぞよろしくおねがいいたします。 



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ