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ヴァイキングは小さな船でニューファンドランド島に行く凄いやつなんです。だから僕に満員電車の正しい乗り方を教えてください。

 ちゃんとしたきっかけはある。僕の唯一の恋愛事情が消えたのだ。だが、こんな勢いで続けるのも怖い。

 しかし、やらねばならぬ時はもある。けど、別にそんな力を入れるべきものではないと分かっている。多分長続きしないだろう。だって今から考えてすぐに投稿するのだものーーー思い立ったが吉日だっけ?

チンッ


 オーブンから食パンの焼ける音がした。昔は一家でトースターを使ってたのだが、オーブンだと焼き芋が電子レンジの数十倍美味しく焼けると聞いて導入したのだ。未だにオーブンで焼き芋を焼いた事はないが…。

 だがしかーし!オーブンで焼いた食パンは、冷蔵庫でキンキンに冷やしたブルーベリージャムと最高にマッチする!焦げ目が付くか付かないかのギリギリを攻めるこの焼き具合が、焼いた食パンのパリッとした食感の中にフワモチの優しさを保管している!それをコーヒー牛乳で流し込む!


 食パンの二重の食感と暖かさ、心地良さをそのままに冷たい新鮮さを与えてくれるブルーベリージャム!(砂糖たっぷりのマーマレードも可)

 パンの香ばしさとジャムの甘さが咀嚼の中で調和され、口内全体的で味わったところで、インスタントコーヒーで作ったコーヒーの、純粋な苦さと相互に高め合うオリゴ糖の甘さと冷たくてたくさん飲める牛乳が全てを押し流すのだ。


 こうするとものすごい速度でパン(6枚切り)を1枚食べ終える事ができる。

 パンをオーブンにセットして4分を待つ間に電気ケトルでお湯を沸かす。ジャムをつける用意をしてお湯が沸いたところでコーヒー牛乳を作って、ヨーグルトを用意してたらパンが焼ける。という完璧なサイクルだ。


 ちなみにヨーグルトには、中学校の修学旅行で持っていけるお土産金10,000円を全て注ぎ込んで買ったオーガニック蜂蜜を使っている。正直後悔しかない。高校卒業するまで多分この蜂蜜ヨーグルトから逃げられないだろう。なぜなら350mlの瓶を14個買ったのだから。


 学校の準備といっても、今日は初日なので特に持っていくものはない。宿題と筆記用具が必須であり、それ以外は当人の自由だろう。

 なので僕は防弾チョッキの代わりとして去年の防衛白書を持っていく。防衛白書は厚さが17mmで総ページ数600を超える超大型の本なのだ!学校で困った時も、防衛白書持って来てやったぜwwと、できるので優秀だ。


 今から始まる訳ではないが、ようやく動き出す僕の一人暮らしの新生活。待ってろ夢の青春ライフー!!



〜〜〜〜〜



 僕の名前は河出・フリードリヒ・秋連、ピカピカの高校一年生さ!


 嘘、僕の名前は純正日本人の河出秋連。苗字の意味は知らないが、アキツレというのは二つの意味がある。一つは秋を連れてくるような、そういう人間になって欲しかったらしい。意味が分からん!確かに、秋は文化、読書、音楽鑑賞の秋だ!だけどそれらのシーーズンを連れてくるってどう言う意味だよこんちくしょう!」


「おっといけない。独り言を発してしまった。・・・う"う"ん"!」


 危なかった、僕が頭のおかしい変な独り言をする人間だと周りの人に思われてしまうところだった…。

 そうそう、この秋連の名前のもう一つの理由は秋津を連想できるような名前にしているのだ。諸君に訂正するが、別に東村山市にある最大の駅である秋津駅の秋津じゃない!秋津駅の方は、昔のその地域の気候を「あくつ」と呼んでいて、それが伝わって秋津になったそうだ!しかし、僕の秋連は大倭豊秋津島という古事記に出てくる日本列島本州の美称からとったものだ。ちなみにこの豆知識は親仕込みである。

 ずっと覚えていたらしく、小学一年生の時に教えてもらった。両親はウィキでこれらの情報を調べたらしい。ふざけんな!!


『2番線、東京行きの電車がまもなく到着します。黄色い線の内側に立ってお待ちください』


 おっと。僕の秘密が一つバレてしまったようだ。僕の秘密…、それは関東で電車通学をしているという事だ!!恥ずかしながら、僕は電車に乗った事があんまりない。なぜなら中学の頃は四国にいたからだ。四国には何もない。政令指定都市が一つもないのだ!!そんな田舎者がいきなり世界最大級の人口を誇る東京首都圏の朝の通勤ラッシュに揉まれてみろよ?!インフルエンザ予防接種で先生に消毒されて腕をがっちり掴まれてる時並みに怖いんだぞ!!


(*四国地方の方々を不快にさせる意図はございません。作者は熱い麺が嫌いな人間だけど、讃岐うどん大好きです。レンチンしてすぐに月見うどんにして食べます。卵白は捨てるけど。)


 ムム…?今一瞬、時が跳躍したような…、貧血だろうか。いや、別にぎゅうぎゅうの電車に乗り込むのに怖気付いてるわけではない。もしかして僕の亜空間仮説は正しいのか…?量子論を考える上で問題になる空間のエネルギーの揺らぎはどこからくるんだ?とずっと考えていた。仮想粒子とカシミール理論から原因不明のエネルギーが真空に出現するのは、この三次元空間プラス不可逆的時間軸の空間の裏側に、複素数平面のように対応した亜空間が裏側に張り付いているのでは?!であれば加速膨張する宇宙のーー


ガタンッ!


「は?」


 待ってくれチューブトレイン!いや地下鉄じゃなかったわ。

 僕が悪かったっ。ミドルネームに調子乗ってフリードリヒをつけたのは謝るから拒絶しないでくれ。ほら、フリードリヒってさ、カッコいいじゃん?フリードリヒ・エンゲルスとか、フリードリヒ・ニーチェとか、フリードリヒ・ヴィルヘルム選帝侯とかの有名な偉人の名前だよ!カッコいいじゃん!(2回目)だからお願い待って、僕は厨二病じゃないから乗車拒否しないで…、クロード・ドビュッシーとかみたいでカッコいいじゃん?!(3回目)



カタン…カタンカタン………


「まあいいや、次の電車は8分後だし」



〜〜〜〜〜8分後



『電車がまもなく到着します。ーーー』


 フッフッフ。僕は賢い人間だから時間に大きな余裕を持って学校に行くんだ。さっきは7時15分の電車、今回は7時23分の電車だ!かかって来い、大都会の収容所め!僕は列の一番先頭にいるぞぉ!!


ウィーン

「はっ?」


 え、いやちょっと待とうよ。扉が開いたら人しかいないんだが?どうやって入ればいいんだ…?ここは後ろの人に譲って後から正解の道を進むか?それともまだ時間に余裕があるから次の電車を見送るか…。いやダメだ!僕予想ではこれから8時まで乗客はどんどん増えていくだろう、たぶん。だから今乗らなきゃいけない。さあ、僕の選ぶ道はここだあ!力を貸してくれブランデンブルク選帝侯!!



〜〜〜〜〜



ガタンッ!


 僕はどうやら成功したらしい。一番ホームの動きを見て、電車が来たら並んでる列が両端に避けて、真ん中を降りた人が通るという事がわかっていた。僕は左側の最前列だから普通は自力で道を切り開かなければならない。そこで僕は、真ん中に入ると見せかけて右の列の人の列に割り込んで流れに任せて入ったのだ!


 ん…?なんだ、僕は幻覚を見ているのか…ッ!どの人間も、電車で立ちながらスマホを扱っている?!僕は吊り革を持ってようやく立てているというのに、走る電車の中で足で鞄を挟み、両手でスマホを持って立っているだと?!周囲を見渡せば、ほとんどの人がそうだ!こいつら、僕が田舎者だという事を分かって、都会人の格の違いを見せつけようとしているのかッ?!だが、ここでやられるようなら男が廃る!見せてやる、これが田舎の舗装されていない道のバスで立ち続けていた僕のバランス力だぁ!!


「あ、すいません…」


 すぐに隣の人と体がぶつかってしまった。これはもはや負けを認めざるを得ない。僕は定期券を買って、それをカードケースに入れた事で都会人になったつもりでいた…。しかし、それだけではまだ太刀打ちできない絶望は、マリアナ海溝並みに深い…。



〜〜〜〜〜降車駅



 よし、ここが降車予定の駅で間違いないから早速…、あれ?道が、ない…?

 すいません、ちょっと退いてもらってもいいですか?!あの、進めない。今降りなきゃ運賃が定期から払えなくなるから!


「すいません。あのっ…。通してください…」


 なぜだ?なぜ皆んなスマホをイジって僕に道を開けようとしない?こうなったら、深夜のコンビニ前で屯ってる不良を撃退する時に使った必殺技を使うしかない。


「漏らしますから早く退いてください」ボソ


 全員がキレイに道を開けてくれたぞ。これは僕の心がみんなに伝わったということだろう。


 大勢の人並みに揉まれて、エスカレーターで前の人のリュックを避けるために海老反りになりながら、ポケットからカードケースを取り出して改札のピッ、ってするところでピッてする。



〜〜〜〜〜



 駅を出た先は遊歩道があり、緩やかな坂道を降りながら通学路へと入っていく。僕と同じ真っ黒な学ランを着た男子生徒は電車を降りた時から多く見かけていて、その数はどんどん増えていった。


 学校に近づくにつれて学生が仲の良い人同士でグループを作って、喋りながら歩いていく。僕は田舎上がりのボッチだから悲しい限りだ。広い歩道のほとんどが学生で埋め尽くされるのを見るに、流石のマンモス校だと感心する。四国地方の人口は北海道よりも小さいし、人口が極端に集中する都市が少ないため、マンモス校なんかとは縁が無い。


 僕の通うことになる高校は駅から歩いて5分のところにある。高校の名前は公立縁館(ふちたち)高等学校。偏差値は60そこらである。


 大通りを歩いてちょうど5分くらい経ったところで道脇に大きな門が見えた。縁館高校ってこんなに大きかったっけ…。試験の時は緊張してて覚えてないや。

 いや、それにしてもおかしいでしょ。こんなデカイ門は日本で見たことないって。公立高校だったよな?


 よし。ここから僕はドキドキワクワク、激動の新生活に臨むことになる。高い塀を超えて見える、あの巨大な講堂で式が執り行われるのだろう。僕もあの場所で校長のつまらない話を無視して、隣の人に話しかけて会話を盛り上げて友達の足がかりにするんだ!



〜〜〜〜〜



 意気込んでいたのも束の間。僕は今、カウンセリングなどを行うであろう相談室に一人で座っていた。公立高校に見合わないような巨大な門を持つだけあって、この部屋にある家具はなかなかに高級感を醸し出している。

 今ごろ、あの教会みたいな講堂で国歌斉唱でもしている頃だろうか。羨ましくなってきたから歌おうか。


「君が代をはー。千代に八千代にー。さざれ石の」


ガラガラガラ


「・・・。」

「・・・そろそろ出る準備してもらっていいかな。ここまで講堂の音が聞こえたの…?」

「いえ、このタイミングかなー?と思って歌っただけです」

「そ、そう…」


 ノックの音とともに、僕が学校に入ってからこの部屋まで案内してくれた若い女性の先生が扉を開ける。

 僕の読みは外れていて、どうやら全クラスが講堂から帰ってクラス移動を終わらせていたらしい。え、早くない?


 先生の後に着いて教室まで向かっているが、本当に公立高校なのか不安になるレベルの内装をしている。京都にある有名な博物館をごった煮したみたいな建物で、アニメに出てくるお嬢様学校みたいな感じで廊下は広くて長いし、これの建設費を想像するのも怖い。

 何かの拍子で壁とか床に傷をつけたら請求額は6桁を下らないだろう。いやホントに、SM-6何百本も買えるくらいの資産価値がある土地に、SM-6が何百本も買えるほどの巨大な学舎が建っているのが恐怖でしかない。むしろLRLAPをたくさん買ってほしい。いや、国産対艦ミサイルの射程増長に使うべきかもしれない。というか、LRLAPじゃなくてAGSと陸軍の榴弾砲の長射程誘導弾の共通化を図った方がよかったと思う。


「はい、ここが君の1年間を過ごす教室の2-Bクラス。それと、これが組章ね。実は私が担任を務める教室でね、これからよろしく」

「はい。よろしくお願いします」


 筆記体でBと書かれた真鍮メッキの組章を渡された。ベースには桜みたいな花の意匠が施されており、500円くらいのものだろうに恐ろしく感じてくる。


 若い先生は握手を求めてきて、僕は恋愛未経験者のように一瞬躊躇して手を握る。やはりこの感覚は慣れない。


「君の歌声はとても良かったからね。是非とも行事の司会進行を務めてほしいと思ったよ。放送部の顧問とは伝手があるしそういう活動に興味があったら教えてくれ。それじゃあ私は先に入るから、呼んだら入ってきてね」

「わかりました」


 僕の秘密がまた2つ漏れてしまったな。そう、僕はイケボなのだ。声変わりが終わった頃から演劇をしていた先輩などに良い声だと褒められているので自信がある。これは恋愛をする上で良い印象を与える、有用な武器だと思っている。

 そして僕が2年生であるという事。電車に乗る前も嘘って言ったもんね。僕は高校一年まで四国にいて、新年度に変わるタイミングで転校したのだ。しかも親元を離れて一人暮らし。高校生にとって最高のシチュエーションだね。


「よし。転校生、入ってきてくれ!」

「はい。失礼します」


 重厚感あふれる教室の扉は意外に滑らかにスライドした。音を立てないように開閉をして、教室中の注目を一手に集めながら中央まで歩く。


 僕が持つ学術的見解、地政学。これは日本ではほとんどタブー視されている学問であり、公共の学術機関では声を大にして教えられないものである。地理的観点より国際政治を分析して、国家の潜在的な能力からその興亡までもを知ることができる、言わば国が生き残るために必須の知識。これを論じるためには地理学を知り、歴史、文化、民族、政治、経済、軍事、哲学、宗教、人間の心理にまで精通しなければならない。

 意中の相手を攻略し恋愛をするのは戦争で、その相手を見極めてクラスに浸透していくのは外交だと思っていい。


 これから始めるのは戦争よりも難しい外交だ。

短めの文章で、気が向いたらチマチマ出すつもりです。パソコン壊れて意気消沈してるから、失踪するかも。ptを頂けたらやる気に直結しますので、何かしらお願いします。

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