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悶々としたまま俺は、重たい足を無理やり動かして、例の体育館裏に足を運んだ。
手に持ったのは、おそらく彼女からもらったであろう、ラブレター。これがもし彼女本人からの物でなければ、待ち受けているのは、頭のおかしい悪戯をしてきた野郎。もしそうだとしたら前歯をへし折ってやる。
ヤンキーだったらなあなあとへつらい「面白い冗談だなあ」と震えながら笑ってやる。
ヤンキーこわい。
そんな俺が薄暗い体育館裏にたどり着くと、待ち受けていたのはヤンキー....。
でもなければ輩でもない。では一体誰がいたのか。
俺はその事実に困惑した。
体育館裏、その木陰から覗くと、桃山安土本人がそこにはいた。
俺は堂々と言って、告白されてはいと言えばいいものを、あろうことか木陰から動けずにいた。
まさか桃山さん本人がいるとは思いもしなかったし、その後のことを俺は何も考えてなかったのである。
俺は何をすればいいんだ?
そもそももしかしたら桃山さんが、実は性格の悪い女で、告白をしたふりをして、信じてしまった輩を嘲笑う趣味の持ち主かもれない。
俺はそんなことなんて認めたくはなかったが、俺にラブレターを送りつける時点で何かがあると思った。
俺は訳がわからないまま、警戒をして、じっと桃山安土を監視した。
薄暗い体育館裏にじっと、立ち尽くして俯く彼女。その顔をずっと眺めていると、暗くてよくわからないが、彼女の頬が薄く赤色に染まっているのに気がついた。
彼女の大きな瞳は、微かな光でも、浴びてうるうると潤んでいる。
右手を胸元に添えて、まるで自分を落ち着かせているような、そんな仕草にも見える。
そして彼女が何かしらぶつくさと呟くと、突然顔を上げて、自ら頬を2回叩いた。
その瞬間、彼女の、恥ずかしそうな赤面した顔が一瞬だけど垣間見れる。その顔は言ってしまえば、恋する少女の顔であり、これから告白をしようと、緊張している乙女の顔だった。
俺の知っている桃山安土とは全く違う、表情と仕草を取る。
俺の中の桃山安土とは、凛とした、品の高い高嶺のお嬢様でありクールビューティーを体現した存在だ。しかし今の彼女にはクールビューティーのクの字もない。
これはいったいどう言うことだ。考える。
俺は自分が持っているラブレターを一瞥した。
一瞥して俺は
本当なのか!?
本当に本当に、桃山安土は俺のことが好きなのか!?
そして俺は好きな人から告白をされるのか!?
どうして、なんで!?