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カリギュラ効果

通勤通学中の駅のホームで電車を待っている時。

ふと、目の前にいる人間の背中を思いっきり押して、線路へと転落されたらいったいどうなるんだろうと思ったことはないだろうか。

思ったことはあっても、倫理的、道徳的、人間的にしないのが当たり前である。

しかしやるなと言われるとやってみたくなってしまう現象のことを、カリギュラ効果と言うらしい。

そうだ。テレビでよく見る熱湯風呂の前で押すなよ押すなよと連呼して、押してみたくなるあれだ。

それと全く同じ要領で俺は、この学校で一番の美少女から貰ったラブレターを目の前で引き裂いた。

「え...」

短い髪をして、前髪をヘアピンで止めた彼女の名前は桃山安土さん。


彼女はこの学校の生徒会長であり、この学校の美少女であり、有名企業の女であった。

そんな彼女に告白をされて断る理由などないだろう。

彼女と付き合って結婚まで行きつけば、将来は安泰。何不自由のない生活が送れることは間違いなし。

そんで持って、何もないこの俺に、冴えない俺に告白してくるなんてありえない。

陰謀だ。これは何かの陰謀だ。誰かが裏で意図を引いて手ぐすねを引いているに違いない。

彼女が俺に告白してくるなんてありえないのだから。

きっと彼女は罰ゲームに引っかかってやっているなんて考えも浮かんでくる。

けれど彼女は本気だった。嘘だったら目の前で泣くわけがない。

俺は、将来の安寧を約束され、美少女と付き合う夢のような人生が始まるスタートラインに立たされて、ふと思ったのだ。

目の前で学校一の美少女に告白されて、目の前でラブレターを引き裂いたらどうなるのだろうか?

こんな一世一代のチャンスを棒に振る理由なんてない。

それでもなお棒に振ったらどうなる?


答えはこれだ。


彼女は愕然と立ち尽くし、涙をこぼした。

彼女の頬に一縷の涙が溢れ落ち、そして決壊したダムのように涙を流し始めたのだ。

彼女の声は震え上がり、そしてその場で泣き崩れる。

俺はそんなのはお構いなしにビリビリに破いたラブレターを念入りに蹴りまくったのだ。

興奮した。目の前にあるチャンスを不意にして思わず興奮せずにはいられない。

それと同時に焦燥感が後ろで鎌を持って追いかけてくる。


「なにも...そんな断り方ってないじゃない」

彼女はそう泣きながらいった。ぽたぽたと地面に涙が出てこぼれ落ちて、滲んでいく。





やべえ、俺、とんでもねえことしちゃった。

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