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◆エッセイ◆

◆夢の種◆

作者: ナユタ
掲載日:2020/11/09


 いつとれるか分からない気まぐれな休日。

 突然貴方はプランターと種を買ってきた。


 “何の種を埋めるの?”


 そう貴方に尋ねたら、貴方は笑って“願いが叶う夢の種だよ”と言ったわね。


 夢見がちな貴方と、現実的な私。

 凸凹(でこぼこ)だけどしっくりくるの。


 “芽吹く前に枯れるかもね”と笑ったら、貴方は“信じれば良いさ”と軽く流した。


 太陽の熱を纏った柔らかい土の上に乗った貴方の体温の低い手に。

 そう、たとえば幾何(いくばく)かの熱が移りますようにと祈りを込めて。


 情熱的とは程遠い、穏やかな時間が過ごせる貴方が、私は好きで。

 貴方は私の負けん気の強さを情熱的だと好んでくれた。


 種を埋めようか。

 種を埋めても良いわ。


 芽吹くときは二人で見たい。

 芽吹くときも一緒が良いわ。


 大それた夢を語る貴方に、イラつくことも多いけど。

 背伸びして叶えた夢に押し潰されそうな私を、支えてくれるのも貴方だから。


 貴方が夢を叶えるときは、きっときっと隣にいるわ。

 それでも諦めたくなったときは、この胸を貸してあげるわね?


 “僕が借りること前提?”と貴方は言うけど、私よりも情けないから当然よ。

 その代わりに可愛気がないと言われる私を、これからも可愛いと言ってね。 


 種を埋めようか。

 種を埋めても良いわ。


 芽吹くときは二人で見たい。

 芽吹くときも一緒が良いわ。


 取り留めのない夢をいくつも、いくつも、思い付くまま。

 朝は珈琲、夜はお疲れ様のビールで流し込む日々はこれもまた夢。


 楽しい日々と、苦しい日々はいつでもすぐ隣り合わせ。

 だけど貴方といる日々は、いつでも穏やかな夢の一欠片みたいね。

 

 明日はいつでも不定形で、朝はいつも困難な船出。

 船頭は貴方だと怖いから、私がしっかり舵をとるわね。


 種を埋めようか。

 種を埋めても良いわ。


 芽吹くときは二人で見たい。

 芽吹くときも一緒が良いわ。


 誕生日にダイヤの指輪も高級な靴も買ってくれない貴方だけど。

 何でもない日に突然“夢の種”とプランターを買ってくれる貴方が好きよ。


 飾らない貴方と、飾りすぎる私と、きっとこれくらいがちょうど良い。

 だけど夢を乗り換えるときは、教えてくれると助かるわ。


 そうしたら次はもっと上手く、貴方の船を導いてあげるから。

 夢の川は一本じゃないし、少しも穏やかではないけれど。 

 濁流に飲まれたら二人でいた方が安心でしょう?


 夢は芽吹くだろうか。

 夢は芽吹きたがるものよ。


 芽吹くときは二人で見たい。

 芽吹くときも一緒が良いわ。


 しばらくして夢の種から出来たのは、赤くて艶々なミニラディッシュ。

 売ってるものみたいに綺麗な丸でないそれは、発展途上の夢の形。


 “普通は花の種を埋めるでしょう?”と呆れたら、貴方が笑って“夢を二人で食べられるよ”と笑うから。


 可愛気のない私が“夢で食べていきたいわ”と返したら、貴方は“夢はきっと苦いよ”だなんて知った風。


 夢が芽吹いて実をつけたら。

 万に一でも夢の実がついたら。


 二人で夢を食べようよ。

 貴方と一緒に食べたいわ。


 面と向かっては絶対に言えないけど、それが私の夢よ。

 それにその方が叶わなくても、ずっと一緒にいられるでしょう?

 

 夢は夢でも良いわ。

 明日も貴方が隣にいれば。

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― 新着の感想 ―
[良い点] ナユタ節のオンパレードですねぇ。 夢は芽吹きたがる、確かに。 [一言] 夢は枯れない素敵な花だよね
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