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服。

 お店に連行された後、私は寄ってたかって皆に着せ替え人形にされた。その間、延べ2時間以上である。

 しかも店員さんまで意気揚々と加わる始末。ナンテコッタ。

 次から次へと色々な服を持ち寄りコーディネートされ、写真まで取られた。

 コスプレと言ってもよいファンタジー姿の自分の写真をである。


 本当、元の世界の知人に見られたら私は失踪すること請け合いである。幸い見られることは絶対にないし、見られても姿形が元の私の欠片も無いので気づかないだろうが。


「穢されました……」


 お店を後にし、昼食をとるために近くのカフェに入ったが、流石に疲れた私はカフェのテーブルにうつ伏せ、力なく抗議した。


「まぁまぁごめんごめん」

「とても素晴らしいお時間でした」

「その、楽しくて、つい……」

「うー」


 皆謝る気など微塵も無い様子に私は拗ねたそぶりを見せる。


「それに実際はノリノリだったじゃない」

「いや、それは……」


 ローザさんの指摘に私は言葉尻に言い淀む。

 

 いやだって楽しかったし。

 

 口に出して言えないが実際私は楽しんでいた。私だって女の子である。アラサーを過ぎたとはいえ、今は見た目10歳ほどの少女である。しかも女神様自ら「頑張りました」と豪語するほどの美少女なのである。


 そんな何を着ても似合うし可愛いとくれば、ぶっちゃけ楽しいしかないし、ポーズだってほいほいとる。

 今まで恥ずかしさで断っていたけどコスプレする友人の気持ちが今なら良くわかる。

 しかしなんで子供サイズのベビードールが置いてあるのか詳しくは知りたくない。

 流石にこれは拒否したが、持ってきたミランダさんは大変残念な顔をしていた。

 

「それにその服装とても似合ってます」


 横に座ったエルザさんに服装をまじまじと見られ、純真に褒められた私は照れた。

 

 私はアリスドレスからファンタジー仕様の服装に変わっている。

 大きいフリル襟の白のブラウスに青色のミニスカだ。こちらもフリルがあしらわれ可愛らしい。それに合わせられた黒のニーハイソックスは履き口がレース仕様とちょっぴり大人。

 スカートと同じく青い羽織るローブの袖口はフリルが二重に盛られ、キュッとしまった腰から足首まで裾が大きく広がり、足を見せるためかフィシュテールスカート仕様になっている。このローブにもやはりキメ細やかな装飾があしらわれ品良く纏められている。

 

 因みにこれらはお店からの頂き物だ。自分で買っていない。なにやら含みを持った笑みで写真のお礼にと他にも数着頂いたが、その写真何に使うんですかね? 肖像権とかどうなってるんですかね? 異世界にそんなもん無いですか? ……そうですよね。知ってました。

 それと是非着ていってくださいと言われ、着替えるのも億劫だったのでお言葉に甘えたが、お店を出てから視線を感じるのは気のせいじゃないだろう。これ絶対宣伝に使われてる感じがするし、写真も宣伝に使われる気しかしない。

 

「お待たせしましたー」


 そんな声と共に可愛いウェイトレスさんが注文の品を笑顔で並べ、テーブルが賑やかになっていく。

 私の前にはクリームとフルーツ増し増しパンケーキとデザートにケーキが10種類ほど。

 

 誰だこんなに注文した奴は!? ――私だ!!

 いやだって、疲れていたんですよ。疲れたら甘いものが食べたいんですよ? 食べていいんですよ?

 なぁに、女子4人もいればこんなの、ものの数に入らない。


 

 そうして難なく食べ終わると買い物が再開された。


 街を歩きながら色々なお店を冷やかす。道具屋に魔道具屋、薬屋etc.同じような道具だったり魔道具でも作り手の個性が出ていて多種多様と見ていてとても楽しかった。


 そして最後に武器屋にやって来た。お待ちかねのメインディッシュと言っても過言ではない。

 まぁ買わないけどね。なくても取りあえずワイバーンなら倒せるし。でもほら今後の参考のために見ておきたかったのだ。

 その店内で他とは違い、1つだけ立派なケースに入れられ一際異彩を放つ剣が飾られていた。


「え、なにこれ? 一、十、百、千、万……億?」


 他の武器が高くても数百万の中、これだけが桁違いに高い。


「あーそれこの街でも名物の伝説の剣ですね」

「え、聖剣とか魔剣の類ですか?」


 疑問に思っているとミランダさんが教えてくれた。


「そうですが伝説の意味が違いまして。此処の店主が昔、博打で旅の冒険者から巻き上げた逸品という意味で伝説です。品自体は鑑定で確かなものですが、この街の冒険者の稼ぎでは先ず買えませんし必要も無いので長年不良在庫としても伝説になっています」

「ほぇー」


 まぁ確かに数億あったら老後に備えたい。


「おいおい不良在庫じゃねぇよ。それとミランダさん。その言い方だと俺が巻き上げたみたいじゃねぇか。これは俺の曽爺さんが巻き上げた品で俺はギャンブルはやらねぇよ」

「それはすいません」


 店主のおじさんが間違いを指摘する。


「オークションとかに出さないんですか?」


 おじさんに質問をするとミランダさんが代わりに答えた。


「ギルドとしても打診はしてみましたが断られているんですよ」

「なんでまた?」

「一応ご先祖様からの品だしな。売る相手は自分で見極めたいってのと、ぶっちゃけ客寄せになってるしな」

 

 おじさんなりの矜持がある様だ。そんなおじさんは二カッと笑い付け足した。


「まぁそれに生活にも困ってねぇしよ」


 あ、これ多分困ったら普通に売りそうと皆が思った。




 買い物を終え、今日1日付き合ってもらったお礼に皆さんに夕食を御馳走した。場所は私が止まってる宿

だ。別に決して酔っても平気だからという理由じゃないよ? 本当だよ?


「今日はとても楽しかったです。宜しければまた誘ってください。こちらは楽しませてもらったお礼です」


 そして宿前でお見送り時にミランダさんから紙袋を渡された。

  

「いえいえ。今日は有難うございました。皆さんおやすみなさい」


 取りあえず受け取りアイテムボックスに仕舞うと別れを済ませる。

 そのまま先にお風呂に入り部屋に戻るとアイテムボックスから紙袋取り出し確かめた。よく見るとそれは一番最初の服屋の紙袋だった。中身を取り出し両手で広げると、


「……スケスケやん」


 なんとも扇情的なベビードールが数着入っていた。

 どれもこれも見覚えがある。試着時にミランダさんが持ってきたやつだ。

 これが人の執念か……。彼女も中々に業が深いと意味深に馬鹿なことを考える。


「着心地良いな……」


 試しに着てみるとなんとも着心地が良かった。

 










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