初めてのよる
付いていくと外に出た。
辺りは暗く、街灯が弱弱しく地面を照らしている。
住宅街の様だが荒廃していてひと気が無く、時々消える街頭が
どこか不安な気持ちになる。
「暗い..」
「お前の所は夜が無いからな。
珍しいだろうな。
さぁ、行くぞ。」
「どこへ?」
「助けてくれって言っただろ。」
自分の行動に少し後悔しながらも、初めての景色に冒険心をくすぐられ
ヒカリは幽霊についていった。
「ここは何処?
私は何をしたらいいの?
帰れるの?」
「いいからついてこい
その内分かるから。」
質問しても答えてくれない。
辺りは真っ暗で、時々うなり声なのか風の音なのか
分からない音が聞こえ、背筋が凍る思いがする。
「危ないから、俺から離れるなよ。」
そんなことを言われると、周りを意識してしまう。
暗闇からヒカリを見つめる無数の視線、
朽ち果てた家から時々ガラスが割れる音がする。
(...!)
小さな悲鳴のような声が聞こえた気がして、
おもわず声のほうを見ると大きな一軒家があった。
窓ガラスは所々割れ、庭は手入れがされず名前も分からない草が生い茂っている。
長い間誰も住んでいなかったような、ボロボロの二階建ての家だった。
「きゃあ!」
その家の二階から女の子の悲鳴がした。
「襲われてる、助けに行くぞ。」
「な、なんで?関係ないじゃない。
あなただけで行けば?」
「...
お前が居ないと助けられないんだよ。
いいから来てくれ。」
幽霊に無理やり引っ張られ、抵抗するがそのかいむなしく
ヒカリは家の中へ引きずられていった。
家の中は窓からさす薄い光でようやく見える明るさだった。
玄関には靴が散乱し、服や本、ゲーム機等が床に散らばっていて
まるで空き巣に入られたような様子だった。
動くたびに、埃が空気中に舞い
ヒカリは一刻も早く外に出たい気分になる。
「早く助けてここから早く出ようよ。」
「二階だったよな、行くぞ。」
壁の所々に包丁か何かで引き裂かれたような跡があり、
乾いた血の跡もこびり付いている。
全て投げ出して逃げたいが、隣にいる幽霊に腕をがっしりと掴まれている。
その力強さに逃げられない腹立たしさと少しの安心感を覚えながらヒカリは二階へ向かった。
二階の部屋の家具は壊れ倒されていて、何者かが暴れたように見える。
切り裂かれたカーテンが風で揺らめいている。
すべての部屋を見たが何処にも何も居なかった。
床に積もる埃にも歩いた形跡はない。
「気のせいだったんじゃない?」
「それは絶対にない。何処かにいるはずだ。」
「助けて!
まだ死にたくない!」
突然、下の階で叫び声が聞こえた。
すぐに幽霊は声の元へ向かい、ヒカリは幽霊に引っ張られていった。