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願いが叶うその時まで  作者: 緑樫
第一章 始まり
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事の始まり1

【モンスター紹介】

『森狼』

元の世界の狼と似通った見た目をしている。毛の色は白など薄めの個体がほとんど

ほとんどの個体は中型犬程度の体格だが、稀に大きな個体も存在する。

基本的に群れを成して行動をしており、その連携と脚力を活かして獲物を追い詰める。

『牛人』

頭部は牛、胴体は人(肥満体形の成人男性のような見た目)でできた怪物。多少個体差はあるが、体長も成人男性のものとほぼ同じ。

知能が発達しており、自ら道具を作り出し、扱うことができる。

住み着いた地域によって、武装が変化したり、従えるモンスターが違ったりする。

森林地帯ではほとんどの個体が木でできた棍棒と獣の皮を繋ぎ合わせた服を身に着けていた。

『かんぱーい!』


 この場にいる仲間全員が思い思いの高さまで、飲み物を注いだ木のコップを掲げる。その後それぞれのテーブルを囲む者同士でグラスを突き合わせた。 


 今夜は、今回の拠点移動を38人誰1人かけることなく成功させられたことを祝うためのパーティが開かれていた。


 それぞれのテーブルの上に並ぶ豪勢な食事と達成感に満ちたたくさんの笑顔。この場にいる誰もが安堵と喜びに満ちており、みなそれぞれ同じテーブルについたパーティメンバーと談笑していた。


「…にしても今回もほんっと危なかったよなー」


 隣の席に座った男、遠藤拓海(えんどうたくみ)がグラス片手に話かけてくる。彼とは高校からの付き合いであり、共にバスケ部で汗を流した仲でもある。


「いやーもうほんとそれ。森狼があんな硬いとは思わなかったわ」


「そろそろ武器強化習得しないといけないか」


 武器強化。自身の武装に何らかの属性を持った魔力を帯びさせることで、属性に応じた様々な効果を付与する魔術のことだ。


 今日、森狼との戦闘時に武器強化、特に火魔術での強化を使える人間がパーティに1人でもいればあそこまで窮地に陥ることもなかっただろう。


「それで足はもう大丈夫なのか?」


「ん?あぁ大丈夫大丈夫。千尋の魔法で完治したよ」


「そっか。よかった」


 相馬千尋(そうまちひろ)。俺たち38人の中で治癒魔術が使える数少ないメンバーの1人だが、近接戦闘はかなり不得手で前に出て戦うことはまずない。


 今回の拠点移動。出だしはかなり順調であったが、途中、森林地帯の林道において多数の森狼を従えた牛人の集団の襲撃を受けた。


 ただ、森林地帯のどこかに牛人の集団が住み着いているという情報を事前に入手していたため、森林内では常に隊列を組み、周囲への警戒も怠らないようにした結果、敵の接近に早めに気づくことができたこと、過去にも何度か交戦経験のある敵であったことから、敵の数がこちらを上回っていたものの善戦することができていた。


 しかし、ここで想定外の事態が発生。敵集団の援軍として、魔力強化された森狼と弓矢を扱う牛人たちが参戦してきたことにより戦況が一気に苦しくなった。


 そこで講じた策が、俺の班ともう1班を加えた計10人で敵援軍の大部分を引き離して逃げ回っている間に残った敵を殲滅、その後、囮役である俺たちと残った28人が合流し、引き連れていた敵を共に倒していくというものであった。


「武器強化、みんなで玄治に教えてもらうか?」


 守倉玄治(もりくらげんじ)。俺たちの中で最も戦闘能力に長けており、特に単独での戦闘において真価を発揮する。


 現時点では武器強化を38人の内で唯一使え、今回の拠点移動でも1番に援護に駆け付け、1人で敵を一掃するなど、その力を存分に示してくれた。


「それが1番かもね。ただ、その当人が捕まるかどうか…」


「今確保すればいいんじゃないか?」


「いや、あいつ多分今頃部屋で寝てるよ」


「ああ、いつものやつか。…となると最速で明後日か」


 玄治は今回のように戦闘面において多大な貢献をした日の夜は決まって宿に到着して早々に自身の部屋で床に就く。このことに加えて、彼は普段から単独行動を好み、誰かに声をかけることもないまま気づけば姿を消していることが常である。

 起床時間もまちまちで、みんなが起きてくる頃には既に出発していたり、いつまで経っても部屋から出てこないこともあるくらいだ。


 従って彼に用がある場合、前日までには話をつけておく必要があった。


 ここでプツリと会話が途切れる。チラリと拓海の様子を伺うと、微笑みながらも少し悲壮感を帯びた顔が目に映った。


「…こっちの世界に来てもう半年か…」


「ああ、もうそんなに経つのか…」


 こっちの世界にきてからの半年間、激動の半年間といってもいいくらい濃密で、常に何かをしていたような気がする。気の遠くなるほど長く、しかしあっという間でもあったように感じられた。


 俺はこの半年間にあったことをゆっくりと思い返していった。

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