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願いが叶うその時まで  作者: 緑樫
第二章 次の拠点へ
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次の拠点へ 中 その2

 その日の夜。

 日中は盗賊たちの襲撃もなく、順調に次の拠点へと近づくことができた。

 しかし夜も気を抜くことはできない。

 盗賊たちの傾向から推測するに、俺たちが寝静まった夜こそが狙い目と、考えているのではないか。

 しかしだからといって睡眠をとらないわけにはいかない。

 俺たちの旅路はまだまだこれから。その間一睡もしないなんて不可能だろうし、睡眠をとらず朦朧とした意識の中では、日中の警戒態勢すら敷けなくなる。

 従って、俺たちは交代で見張りを行うことに決めた。

 39人を4つの班に分け、それぞれの班が2から3時間程度見張りを務める。

 また、その班内でもそれぞれ2,3人で組んでもらい、各区域を分担して見張ってもらう手筈となっている。

 そして就寝時間。

 事前に決定していた通りに見張りをそれぞれたて、見張りの人間は絶対に1人にならないよう注意をしながら周囲の警戒を行い、休みの人間はそれぞれ眠りに就く。

 今夜最初に見張りをする班は、俺の所属する班。

 戦闘面におけるパワーバランスと連携の取りやすさを重視した人員の分け方をしたため、俺、拓海、玄治、涼真はそれぞれ別の班となった。

 その結果、俺の班にはカケルとその友人たちがいる。

 集団から浮いてしまっている彼らを俺が引き受けた形だ。

 彼らについて、出来ることならもっと仲間として俺だけでなく他の人たちとも友好を深めてもらいたいと思う。

 正論を言ってしまえば、せめてこの世界にいる間は多少無理をしてでも仲間として協力し合うことが、結果的に彼ら自身の生存率を高めることにつながるだろうから、それを押し付けることも最終手段として考えてはいる。

 だが押し付けようとした結果、逆に離脱されてしまっては目も当てられない。

 しかし有効な手段が思いつかないのも事実。

 こちらの世界に来てから、特に俺がリーダーとしての自覚を持ち始めたあたりからは彼らに何度か接触を図りに行ったことがあるが、そのどれもが軽く受け流されるように接されて終わりだった。

 彼らがどうしてああいう選択をして、それを今も続けているのか。それを知ることができれば彼らに近づく糸口となりそうだが、彼らの過去、この世界に来る前の彼らを知るための対話もままならないのでは、この方法は使えない。

 一度彼らと似たところのある玄治にでも頼んでみるのがいいだろうか。まず間違いなく断られるだろうが。

 早い所手を打たなければならない。

 今現在、他の仲間たちにとって彼らは、振れなければ害はない存在との認識のようだが、それがいつ変化するか分からないのだ。

「春風」

 考え事をしていたところに横から声がかかる。

「…咲か。どうかした?」

「どうかしたじゃないでしょ?私たち、ペアなんだから」

「…そうだった」

「はぁ…。春風さ、この世界来てからボーっとしてること多くなったよね。人に話した方がいいこともあるかもしれないよ?」

「…ああ、そうだな。俺が抱えきれなくなったら、その時は頼むよ」

「またそんなこと言って…。いつにになることやらって感じだよ、ほんと」

 痛い所を突かれた。確か前にも同じようなことを言って煙に巻いたことがあったか。

「まぁとりあえずさ、俺たちも持ち場に着こうよ。みんな動き始めているし」

「…わかった」

 とても不満に満ちた顔ながら頷いてついて来てくれる咲。

 申し訳ないとは思いつつ、今回の件に関しては彼女向きの案件ではないような気がして話す必要はないと判断した。

 それから俺たちは自分たちの持ち場に着き、周囲の警戒を行いつつ、時折何でもないような話をしながら担当分の時間を過ごした。

 結局、今夜は何もなかった。

 出発から2日目。今日も昨日と同じように陣形を組んで周囲の警戒を続けながら進んで行く。

 右側には森、そしてその奥には連面と続く山脈。

 左側は断崖絶壁と、その向こうには右側にも見られるような森が広がっている。

 もしこの道を通る人間を、一方的に察知できるとしたらどんな方法が考えられるだろうか。

 そんなことをひたすた考えながら先頭を歩いているが、この世界の人間たちがどんな道具を発明しているのか、そしてどんな魔術を扱うのかなど、理解の及んでいないことが多すぎて、絞り込んで想定することができない。

 そのためひとまず人間の力、俺たちの元いた世界における人間がその身体能力のみで行えるであろう範囲に絞って対策を講じた結果がこの陣形の維持。

 そもそも現時点での俺たちでは、その範囲以上のものを対策しようと思っても能力的な問題で不可能ではあるのだが。

 考えていることは他の仲間たちも同じようで昼頃を越えたあたりから、仲間たちの疲労は既に相当なものになっていた。

 それはひとえに正体不明の存在への恐怖による、精神的疲労。常に幽霊の類が自分たちの周りに張り付いているかのような感覚が続いている。

 仲間たちの口数は減り、心なしか進行速度も低下しているように感じる。

 定期的に休憩を挟んでいはいるが、変化はなく。むしろ休んでいる間の方が、より疲労が蓄積されている気すらする。

 今は耐えるしかないのか…!

 森の中から鳥が飛び立つ音や、風で揺れる木々の枝葉が擦れる音などにいちいち視線が引っ張られる。

 こんな時こそリーダーである俺は落ち着かなければならない。

 しかしそれが分かってはいても、心臓の鼓動は落ち着くことはなかった。

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