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願いが叶うその時まで  作者: 緑樫
第二章 次の拠点へ
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次の拠点へ 中 その1

 出発から数時間が経過した。

 向かって右手、その枝にたくさんの緑を生やした木々とそびえ連なる山々が、俺たちの遠く前方へと向かい伸びていくように見える、短い丈の草が一面に広がる草原の真ん中に俺たちはいた。

 ここから更に先へ、山脈の麓にある森を外側を沿って進んで行くと、だんだんと俺たちの向かって左手側に、底の深い谷が見える予定だ。

 そしてその谷と山脈に挟まれた一本の道。こちら側からだと少し上り坂になっているその道中こそが、例の盗賊の目撃、遭遇情報が数多く寄せられていた場所でもあった。

「みんな!ここら辺で1回休憩にしようか!」

 俺は後ろについてきている仲間たちに大声で呼びかける。

 既に盗賊に出会ってしまった際の対策は全員に周知させてはいるが、ここいらで一度休憩を兼ねて確認をしておきたい。

 まばらに座り込んでいく仲間たち。牛車の御者として働いてもらっていた拓海が牛車を止めて降車し、牛を休ませながらその近くで座った。

 縦に列を為して進んできたために、俺の声がちゃんと届かなそうなところに腰を下ろす者たちや、集団から離れて行こうとする者たちもいる。

「出来るだけ俺の周りに集まってきてくれー。これからについて色々と確認しておきたい」

 そう呼びかけつつ簡単に移動できない牛車に少し近寄りながら、仲間たちを俺の周りに円形になるように集合させる。

「いいかー?俺の声ちゃんと聞こえてるー?」

 そうして俺の声が全員に届くよう仲間たちの位置の調節が終わったところで、俺は話を始める。

「みんな、休憩をしながらでいいから、俺の話を聞いてくれ」

 それから俺は、盗賊が現れる可能性の高い地帯内にて組む陣形の確認や、実際に遭遇した際の対応の仕方など事前に決定しておいた事項について、ちゃんと全員が理解できているか確認していく。

 特に私語を慎むよう指示をしたわけでもないのにも関わらず、仲間たちの口数は少なく、固さが見て取れる。

 やはりこれから起こるかもしれない出来事を想像し、緊張しているのだろう。

 緊張感を持つことは大事だが、それが過剰となってはいけない。

「みんな、1回立って陣形を組んでみようか」

 俺は座り込んでいた仲間たち全員にそう指示する。

 緩慢な動きの仲間たちを急かすようにして、牛車を中心にぐるりと取り囲むように円形に陣形を組ませる。

 1番外側に盾や剣、槍を構え、革の鎧で防備を固めた男中心の前衛の人間、その内側を前衛の人間よりも軽めの防具と武器を装備した女中心の後衛の人間が並ぶ。

「それじゃあ、1度実際に襲撃があったと想定してシミュレーションしてみようか!」

 陣形を組み終わった仲間たちに俺はそう呼び掛ける。

「拓海、玄治、涼真、弘一。俺のとこまで来てくれ!」

 俺の指示に従い、陣形の輪の中からこちらに寄ってくる4人。

「どうした?俺らなんかやんのか?」

「うん。4人には俺と一緒に盗賊役をやってほしい」

「ああなるほど、シミュレーションってそういうことか」

「うん。とはいっても実際に盗賊たちがどう襲撃してくるかなんて予想できないから、ただ単にみんなの緊張をほぐすのが主な目的なんだけどね」

 要は部活の試合前にチーム全体で行うアップ運動の真似事だ。

 軽強度の有酸素運動をすることで、全身に酸素を巡らせて身体を温め、腹から声を出すことで余計な緊張を集中力へと変え、仲間たちとの一体感を生み出して戦いに備える。

「それで、具体的に俺たちはどうすりゃあいい?」

「うーん、そうだなぁ。ひとまずどっかの方向から2人が近づいて行って、その後増援としてもう2人が近づいていくって感じでいいかな。それに対し、俺がみんなに指示を出しながら対処してもらうってことで」

「わかった」

「うん、頼んだ」

 俺の意図を理解してくれた4人は俺に頷き返してくれる。

 俺をそれを見てから他の仲間たちができる限り見渡せ、かつ俺の声が届く位置にまで移動する。

 牛車が輪の中心にあるためどうしても死角ができるが、それはなんとか俺が動き回るしかない。

 それに実際の状況で、俺が1人突出して全体を見渡すなんてことは十中八九できないだろう。

「よし、それじゃあ拓海たちお願い!」

 そうしてシミュレーションが開始された。

 頼んだ通り、4人のうち2人、拓海と涼真が一方から陣形を組んだ仲間たちに近寄ってくる。

「伝令役!敵影には気づき次第すぐに大声で全体に伝えて!」

 まごついていた伝令役に注意をする。

「は、はい!こちら敵襲!数は2!迎撃します!」

 その伝令役から慌てて声が上がった。

 それに続き、拓海たちに向かって1人ずつが応戦するべく近づきお互いに間合いに入る。シミュレーションであるため、さすがに剣を交えることはしない。

「残った人間は周囲の警戒を続けて!増援に備えるんだ!」

 拓海たちに意識を向けているようだった、応戦にあたっていない仲間たちに向かって注意を促す。

 俺のその言葉を合図と受け取ったのか、反対方向から玄治と弘一が円陣に向かって近寄っていく。

 今度は俺の注意がなくとも伝令役の人間がちゃんと自身仕事を行い、順調に事は運んだ。

「よし、シミュレーション終わり!」

 頃合いを見計らって俺は終了の合図を出す。

 その後も何度か同じようなことを繰り返した。




 そろそろ例の盗賊出没多発地帯に差し掛かる。

「それじゃあみんな、作戦通り陣形を組んで!」

 俺の指示に従い、仲間たちが陣形を組んでいく。

 その動きからは緩慢さが薄れ、いい緊張感と集中力が見て取れる。

 そのことに安堵しつつ、全体へ指示を出していく。

「周囲の警戒を怠らないように!気になることがあったらすぐに俺に言ってくれ!」

 陣形を組み終わった仲間たちが、周囲の環境に気を配りながら、前へ進んで行く。

 出だしは順調。後はこの緊張感と集中力がどれだけ続くか。

 そして、夜をちゃんと乗り切れるかどうかだ。

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