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僕の全ては誰かの記憶。  作者: 荒崎 皐月
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長く続く廊下。


僕は白衣の男たちに車椅子に乗せられ、とんでもなく長い廊下へと出た。


進み続けたら異世界へでも行ってしまうのでは無いかと思ってしまうほど、長い廊下だった。


そこには窓が一切無く、特に目につくような装飾も何一つなかった。

天井にくっついている蛍光灯が、不機嫌そうにずうっと奥まで照らしているだけであった。


空気すらどんよりと灰色に霞んでいるようで、僕は息が詰まってしまわないようにゆっくりと息を吐き出した。


ここに出るまでは、僕はどこかの病院にでもいるのかと思っていたが、どう見たってここは病院の廊下ではなかった。


白衣の男たちと施設を交互に見ていると、どこかの研究所か何かでは無いかと推測できた。

男たちが、医者にしてはあまりにも汚らしい風貌だったからだ。


髪の毛ー残っている者に限ってーはボサボサだし、なんだか酸っぱい臭いもする。


その事に気づいた途端、先程車椅子に乗せられる時に触られた箇所を念入りに洗いたくて仕方なくなった。


僕の嫌悪感が滲み出てしまったのだろうか。

急に車椅子を押していた男が、気分は悪く無いかと聞いてきた。


ガリガリで骨ばった頬と目の下に広がったクマが特徴的な男で、僕は彼の方がよっぽど気分が悪いのでは無いかと心配になったが、大人しく首を縦に動かしておくことにした。


僕が頷いたのを見て、男は半分も残っていないボロボロの歯を見せて満足げにニンマリと笑った。




半分ほど廊下を進んだあたりで、僕はふと疑問が湧いた。


当たり前のように車椅子に乗っているが、僕は歩くことすらままならないのだろうか、と。


普通に考えてみたら、うまく話すことも歩くこともできないなどまるで重病人ではないか。


僕はなぜここにいて、こんな状態に至っているんだろう。


先ほどの部屋での疑問も何一つ飲み込めていないのに、また厄介な謎が湧いて出てきた。

少しでも頭を回転させると、面倒な事柄がいくつもくっついてきて絡まっていくのだ。


僕の頭はついに諦めたのか、何も考えないことにしたようだった。

そのおかげで、僕が気付いた時にはもう長い廊下の出口へとたどり着いていた。

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