8話
コウメイが先走ってやらかしてくれたせいで、情報収集が出来なかったし能力がバレた。
何年も研鑽を積んだ国の魔法使いでも四属性、一流と呼ばれる人で三属性なのだそうだ。
全属性とかどんだけなのかがわかるだろう。
自分が剣士である事を示す為に《異空庫》からイカリの形をした大剣、アンカーバスターを取り出して、ひと通り振り回してからコウメイへと放り投げた。
「っわ、っと危なっ」
「それで《収納魔法》って何?」
「お嬢さんが使ってた空間系の魔法だよ、知らないで使ってたのか………天才よう………少女か」
コウメイの目の前に刺さったアンカーバスターをコウメイが持とうとして少ししか持ち上がらなかったのを見て少し気分をよくしつつ、ギルドマスターに《収納魔法》について説明を聞いた。
《異空庫》の劣化版みたいな魔法で、収納対象に直接触れないとダメ、生物は入れられない、内部では時間経過するというものだった。
ギルドマスターは幼女と言いかけて、少女と言いなおして納得していた。
「ふーん、ボクのは《収納魔法》とはちょっと違うけどね」
「わっ………っいてて」
「確かに違うようですね」
まだ苦戦してるコウメイの方へと手の平を向けて、アンカーバスターをしまう。
アンカーバスターを持つ為に力を入れていたコウメイが反動で尻もちをつき、ギルドマスターは離れたところの収納に目を輝かせていた。
「ユリィと別行動中に、いろいろと調べようとしたんだけどね………騒ぎになったから全然なんだ」
「立場上コウメイ君の事を怒らないといけないんですが、ヒカリさんが逸材なのも事実………お詫びに私が教えましょう、何を調べたかったんですか?」
「地図とか国を覚えたかったんだけど、危険な場所とか、後はお金の事とか………」
「わかりました」
ユリィってお金の事とかわからなそうだよね、王女って金貨しか知らないとかありそうだと思ってた。
「まずは国からですね、大きくわけると5つほどでしょう。このユミル大陸の北側一帯はユミル帝国ですね、北東一帯は主に属国として小国が多数あります。帝都はここです」
ギルドマスターは地図を広げるとさっそく説明してくれた。
亡国ルメリアも帝国の属国ってことだね、だから帝都に報告に行くのだろうし。
帝都レッドキャッスルは北西に位置していた
「南東部にあるのが、【東方教会】ですね。【東方教会】は原始の巨神様を信仰する宗教で、自然崇拝や先祖崇拝に近いですね」
話を聞く限りでは教義などなく信仰するのは神様なんだから神道と言うのではないだろうか?
「ユミル帝国の一部だったんですが、国と宗教がくっつくと酷いことになると勇者の発言で別れたみたいです………ユミル帝国の皇族は原始の巨神様の血を引いているので、神の力を用いて【勇者召喚】をできるとか」
ボクを召喚したやつだね、ユミル帝国の皇族が神の血を引いてるから神聖視して強く結びついていたってことか。
「帝国本土と東方教会で挟んだ形で南西部に位置するのが【軍国プラネタリア】。元々魔族の国があったのですが、いつのまにか魔王を倒して、土地を奪って興した国です」
いるんだ、魔族。
「【プラネタリア】には勇者と同等の力を持つと言われる【将星】と呼ばれる星の力を宿した者がいるそうですが、詳細はわかりません………近づかない方がいいでしょう」
「わかった」
「大陸中央に【神域】と呼ばれる山に囲まれて進入の仕方がわからない場所があって、【神域】から南側の森には追い出された魔族達がいるとの噂があります」
「噂?」
「魔族の土地を奪った【プラネタリア】が、帝国にも教会にも手を出して来ないからですね………魔族が土地を奪還しようとゲリラ戦を挑んだり、森に新たな国を作って帝国と教会の三国での【プラネタリア】包囲網を作ってると噂があるんですよ」
火のないところに煙はたたないっていうし、巻き込まれないよう南西方面には近寄らないことにしよう。
「後は大陸外になりますが【ホウド】と呼ばれる島国があるそうです。かなり閉鎖的な国で、交易してる港街が1つあるだけです」
「へぇー」
鎖国してるような状態の島国か、なんか面白そう。
「周辺国や周辺事情はこんなところです」
「ありがとう」
「次はお金ですね」
ギルドマスターが金貨、銀貨、銅貨を用意した。紙幣のお金はないみたいだ。
「まずは銅貨です、普通にご飯を食べるなら、5枚もあればいいでしょう」
だいたい100円くらいの価値かな
「次は銀貨です、銅貨100枚で銀貨1枚になります」
1万円くらいだね
「金貨です、銀貨100枚と金貨1枚が等価値です」
「穴が空いたのは?」
「穴が空いてるのは半分の価値になります。穴空き金貨は銀貨50枚分、穴空き銀貨は銅貨50枚分です。呼び方は小金貨、小銀貨になります」
金貨は100万円くらい、小金貨は50万円、小銀貨は5千円相当。
「めったに使わないですか、金貨10枚で白金貨、白金貨10枚で星金貨ってのがあります」
「ありがとうございます」
縁があっても白金貨くらいまでだろう、知りたいことはだいたい教えてもらったね。